電脳病毒 #40_230
それは、慢性呼吸器疾患による死亡率の高まりにも表れている。
九 帰省
休日、久しぶりに徐は故郷へ戻る。家に向かう公共汽車《バス》。汚れた車窓越しに、塵埃の山が目に入る。填埋場の周りには軍隊の輸送トラックが数台。軍人が警護を固めている。作業は行われていない。査察団が撤収すれば、作業は再開される。
家に戻る。年老いた母の姿はない。隣家に様子を尋ねる。中毒が原因で、母は入院したという。徐は病院へ駆けつける。徐へ仕送りを続けるため、填埋場で働き続けたのだ。
大部屋の小さな床。母は横たわっている。髪の毛は抜け落ち、顔は鉛色だ。周りの床をそれとなく見回す。患者は母と同じ状態だ。皆、処理場で働いているのだろう。床の横に座ると、徐は母の手を握る。力のない手で母は握り返す。