電脳病毒 #28_218
独立派は示威《デモ》を画策して以来、恐怖手段と反動的宣伝の犯罪活動を展開。幹部や民衆を殺害するなど、近隣各地で事件を発生させていた。
夜警隊が徐の前を通り過ぎる。徐の傍らには大きな網篭。足元には何本もの吸い殻が散乱している。徐は手を挙げ煙草に火を点ける。眠れない男を装うために。徐の吸った煙草の煙が、星空を曇らせるように立ちのぼっていく。
夜警隊の後ろ姿を見送り、しばし時間を置く。徐は吸い殻を足で退け、網篭を外し大耳朶《パラボラアンテナ》を足元に据え付ける。筆記本電脳《ノートパソコン》を網絡に接続。暗号数据《データ》の下載《ダウンロード》を始める。
いつもこの時間だ。徐は、人造衛星《人工衛星》に接続、衛星接収機《衛星放送受信機》経由で下載《ダウンロード》を行うのは。政府事業の公衆回線網は、盗聴が頻繁に行われている。人造衛星《人工衛星》経由の下載《ダウンロード》はすぐに完了。大耳朶《パラボラアンテナ》と筆記本電脳《ノートパソコン》を抱え、徐は家に入っていく。