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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #62_253

 革命終結後の地位保全措置により、劉の一家は社会的な身分を回復する。その間、祖父や父、そして母までがこの世を去っている。
 廊下の角を曲がり、魯の姿が見えなくなる。劉も足を早め、廊下を曲がる。突き当たりの部屋。扉が開いている。部屋に入る。電脳特有の機械臭が劉の鼻を突く。部屋の奥。超高速計算机《スーパーコンピューター》が、動作電灯を点滅させ微かな唸りをあげている。主机は無傷のようだ。作業卓には磁気円盤《ディスク》が何枚も散らばっている。地元の警官が訳もわからず取り出したのだろう。机の脇。警官が操作人員《オペレーター》に詰問している。
「確証は挙がったのか?それらしい」警官を手招きし魯は尋ねる。
「いえ、まだ尋問中でして」
「誰が指示した?辺り構わず破壊しろと」
「それは、その・・・」
「委員会の劉君。専門家だ」魯は警官の言葉を遮り劉に視線を移す。


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