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怒られても全然響かない娘と娘にそっくりだった私。

私にはいま2人の子供がいる。

1人めは5歳の男の子、2人めは2歳の女の子。

賢くよく動き回る息子と、2歳とは思えぬ程色々なことを喋りまくる娘。

娘は年齢に対して感情表現や意思疎通能力がとても高くて、同じ年齢の頃の息子を思い出すとしみじみ個体差を感じる。

どちらも元気でとても可愛い。

しかし、可愛いだけで済まないのが子育てで、日常生活をただ送るだけで大人だけの生活では考えられないほどやることが多く疲弊する。

人間初心者の子供たちは、想定できない動きをしてトラブルを起こすし、あらゆる手段でタイミング関係なく大小さまざまな要求を通そうとする。

「子供とはそういうものだ」と産前の無知な私の想定を遥かに上回る、育児の現場。

油断をした隙に予想や予定を裏切ってくるものだから感情も行動もすごく忙しく、気持ちの制御も難しい。

子供たちが何かいけないことをしているとき「それはやってはいけないことだ」と教えるのは親の重大な役割のひとつだ。

できればなるべく落ち着いたトーンで「それはいけない」と伝えるくらいにしておきたい。

けれど親といえど、こちらも未熟なものだから何度伝えても同じ悪さを繰り返されるとだんだん我慢がききにくくなってくる。

余裕がないタイミングで繰り出されたりすると感情が揺られ、怒りを込めたトーンで伝えることになる。

怒りを込めた…どころか、怒りに身を任せて通常大人同士ならなかなか発する機会のない酷い声で怒鳴ったりすることもままある。

子供の想定外の行動に対して、冷静に状況を把握する前に驚いて瞬間的に声を荒げることも少なくない。

(常に驚かず追い詰められず、声を荒げず最初から最後までずっと落ち着いて対処できるできた人間に私はなりたい)

その、怒ってしまったときの反応が息子と娘で大きく違う。

個性はもちろん、5歳と2歳という年齢による発達の違いも大きいとは思う。

息子は真顔で固まったり、スネたり、逆ギレして暴れたり、シュンとして申し訳なさそうにしたり、泣いたりする。

親の怒りの表明に対してそれなりに反応がある。

怒りながら子供がやらかしたことの片付けをしたり、着替えさせたりしながら自分の気持ちを必死でなんとか落ち着ける。

「怖い声を出してごめんね」と謝りながら、改めてゆっくりとしたトーンで「それはやってはいけないことだ」という理由などを説明する。

涙を拭いたり、目を逸らして憮然としたり、状況と理解が落ち着くと息子は頷き「もうしない、気を付ける」と約束したり謝ったりしてくれる。

息子の反応を見るたびに、いい大人が余裕を失い、声を荒げて幼い子を怒ってしまったことに申し訳ない気持ちになる。

目先の出来事に感情を振り回される未熟な自分が情けなく恥ずかしい。

それに対して娘は、私が怒っても全然気にしない。

まだ3歳にもなっていない年齢のせいにしてもすごい。物凄い。

ニコニコ楽しい母でいられる余裕を失った私が怒ってしまい声を荒げても

「娘チャンは〇〇ヤモン〜」

と全然動じない。

プップクプーと歌ったり、怒られる前と同じようにフォークを投げたりする。

息子は、娘が怒られていることに気づくと、それなりに様子を見て静かにしたり、状況を説明したりする。

娘は、息子が怒られていると横でヤイノヤイノ全然関係ないことを言いながらちょっと楽しそうに騒ぐ。

この反応の違いは年齢のせいだけではなさそうに見える。

怒られたときの娘の反応を見て感心すると同時に頭の中で声が響く。

『怒っても全然何も聞いてない。』

『他の兄弟が怒られてたら他の子は察してその場を離れたりする』

『あんたは横で一緒になって騒ぐから最終的にあんたも怒らなあかん』

これらは、私が母親から繰り返し繰り返し言われてきた言葉だ。

3人姉弟の真ん中だった私は、3人の中でひとり常に母親に怒られていた。

誰がどんな悪さをしても、気づくと私が怒られていた。

弟はよそのおうちで、

「僕が悪いことしても怒られるのは姉ちゃんやから、僕は何してもええねん。」

と豪語していたらしい。

それを聞いた母は、自覚がなかったのかとてもショックを受けていた。

そしてその話をしながら『あんたのせいで、弟が悪さしてもあんたまで怒らないとあかん』と私をまた怒鳴りつけた。

私にはいつも怒られている理由がわからなかったし、いつから母が怒っているのかもわからなかった。

気づくと、目の前に血走った目で私を睨み付けて説教を延々と続ける母がいた。

『全然反省してない』

『何で怒られてるんかわかってる?』

100万回聞かれたけれど、その状況になると私は“母がまた私を怒っている”以上のことはもう理解できなかった。

(説教の途中で眠くなってウトウトしたときに

『やっと反省した目になってきた』

と言われたので、それ以降は説教が始まっていることに気づくと眠い目をすることにした。

そんな工夫しか覚えていない。)

母が私に伝えたかった、当時の私がした何らかの悪さ自体は私の記憶には一切残っていない。

繰り返された『あんたのせいで怒らなあかん』という言葉と、私を睨み付ける赤い目だけはしっかりと覚えている。

怒られても全然響かない、しょげない娘を見るたびに、母が言っていたことはきっと事実だったんだなあと思い出す。

『怒っても全然何も聞いてない。』

『兄弟が怒られているときに横で騒ぐ』

本当に怒っても全然響かないし、兄が怒られている隣でヤイヤイ騒ぐ子供が存在している。

幼い頃の私もきっとこんな感じだったんだろう。

それに対しての私の感情は、母と随分違うことに気づく。

母は、『なんとしても怒りを子供にわからせないといけない』、もしくは『親をなめるな、畏怖しろ』と私に対して怒りを強化し、手も下した。

私は、こちらが声を荒げてしまっても全然動じない娘に対して、大人げない自分を省みて恥ずかしくなる。

つい怒りを露わにしてしまい、我に返り表情を確認してもテレビを見ながら歌い始めたりする娘。

息子が夫に叱られて泣いていても真横で絵本を朗読する娘。

全然気にしていない。

めっちゃ可愛い。

自分の情けなさ愚かさに気づいて脱力し、笑えてくる。

「娘ちゃん全然聞いてへんや〜〜ん!」と笑い出してしまう。

今のところ、この子には怒りのアプローチは全く効果がない。

感情のコントロールができない情けない親だと、ありのままを子供に受け入れてもらおうと甘えている自分の幼稚さだけが浮き彫りになる。

子供を簡単に怒りで言いなりにしようとする私は、なんと未熟な親なんだ。

私の元に生まれてきたのが息子のように、成長のおかげで、シュンとしたしぐさを見せてくれる子だけだったら、どうなっていただろう。

怒りは、快感に通じるという説も目にしたことがある。

自分に与えられた親の権力を誤解して、つけあがってエスカレートしていたかもしれない。

子供がどれだけ怒られても親から離れないのは、親への愛情ではなく、親から離れて生きていくすべを持たないからでしかないのに。

日常の疲れから思考停止して、常に怒りを表明することで子供をコントロールしようと安易に怒鳴り散らしてばかりだったかもしれない。

母が私に対してそうだったように。

怒りで支配しようとする親を見捨てないでいてくれるのは子供時代だけだ。

その反応の違い、とくに娘の全然動じていない様子を見て、『幼い子に“怒ってみせること”ってなんて無意味なんだろう』と感じる。

それでも、わかっていても、突発的に怒りの感情に支配されてしまうことは少なくない。

怒ってしまったあとは息子と娘に謝罪をする。

あとから謝るくらいなら最初から怒るな、と自分を戒めながら。

「怖い声出してごめんな。お母さんほんまは怒りたくないねん…」

だから、お着替えを手伝っているときに何度も蹴らないで、洗濯中の服が着たいならしばらく待って、売ってないものを食べたいと泣き続けないで、「痛いからやめて」って言ったらすぐやめて…

そもそも未熟な人間が、別のもっと未熟な人間を育てるというのはなんと難しいことだろう。

自分の感情のコントロールの難しさ、子供との関わりに悩みながら揺れながら目の前の子供に接していく。

怒るたびに反省して謝り、もう怒鳴りたくないと思っても、また感情は簡単に怒りに支配されてしまう。

大事な子供を怒らずにすむように、何事にも慌てず動じない人間になりたい。

感情に振り回されず、子供にとって良いアプローチを毎回確実に選べるほどの経験と知識がほしい。

望んだところですぐ手に入るものではないし、私のような人間に『完璧な育児』ができるはずもない。

なるべく感情的になりたくないと願い、怒ってしまったら状況に応じて子供に謝りながら、お互い成長しながらとりあえずは一緒に過ごしていくしかないなと思う。

母のように、怒りが響かない娘に、自分の感情が伝わると信じて睨み付けて説教を続ける気力は私には湧いてこない。

他人の感情を汲み取って話を聞いて反省できる息子、怒られても全然気にしない娘。

どちらに対しても尊敬しかない。


人に怒られても響かないくせに人には怒る、私みたいになりませんように、と都合よく願いながら今日も子供達と一緒に過ごしていく。


子供との関わりについてなどブログでも書いています。

親が子供にできることなんてどうせ知れているし、親の説教とか全部スルーしてきた私もなんとか生きているので、だいたい子供を信じて大丈夫だとは思ってます。

それはそれとして、家庭内弱者である子供が許してくれることに甘えて感情に任せて怒りすぎないようにしていきたいですね、ほんとね。。(ため息)

読んでくださってありがとうございます!