見出し画像

スウェーデン「森と学び」レポート Vol.0

コロナ禍を挟んで、およそ5年ぶりのスウェーデン。ロシアの戦争によって飛行機がロシア上空を通れなくなり、北極海を大きく回って12時間かけてヘルシンキに着いた。
この5年で、世の中は大きく変わった。いつも自宅に泊めてもらっている自然学校のロバートの息子と娘たちは、5年も経ってみんなずいぶん大きくなっているはず。でも、北欧の優しい人たちや、豊かな森や落ち着いた暮らしは、変わらずそこにあるだろう。この間、日本にいながら北欧について調べたり本を読んだり、オンラインで話をしたり、北欧の教育について紹介したりしてきたとはいえ、やっぱり実際に身を置いてみないとその本当の豊かさはわからない。まだヘルシンキの空港にて次のフライトを待っているだけだけど、あらためてそう思う。

コロナ前までは、何度もスウェーデンに通っていた。これまでの渡航回数は7〜8回ぐらい。2018年に野外教育の教材「野外で算数」を翻訳したこともあって、その前後には年に1〜2回通っていた。個人的な視察・見学や交流のときもあれば、知り合いから頼まれたガイドの仕事として現地の案内や通訳をしたこともあった。
毎度、スウェーデンで野外教育が実践されているフィールドを見て回った。地域の学校と結びついた「自然学校(Naturskola)」と呼ばれる施設や、民間の団体「野外生活推進協会(Friluftsfrämjandet)」が運営する野外に特化した学校「I Ur och Skur(晴れでも雨でも学校)」、公立のプリスクールや基礎学校、成人教育や民衆教育の場「Folkhögskola」など、さまざまな教育現場を見学しては、そこで働く先生たちと話をしたり、直接の交流を行なってきた。

野外教育や環境教育というと、日本では理科的なイメージ、もしくはキャンプファイヤーや飯盒炊さんといった集団行動やグループ活動のイメージが思い浮かぶかもしれない。それはどこか、日常から切り離された特別な時間であり、「自然体験学習」として人里離れた山の中の施設にバスに乗って出かけて行くことが多い。自然は身近にあるものではなく、バスに乗って「体験しに行く」ものなのだ(もちろんそれだけではないけど)。
ひるがえって、スウェーデンをはじめ北欧の国々に来てみると、人と自然との近さや関わりの深さが印象に残る。「森と湖の国」というイメージそのままに、北欧の人たちは自然に囲まれて暮らしていて、ストックホルムのような都会であっても街の中に緑の空間が広がっている。もちろんスウェーデンであってもデジタル化の流れは大きく、そうした北欧の「自然と共にある暮らし」は全体の中の一つの側面に過ぎないかもしれないが(「だからこそ自然学校が必要なんだ」と元代表のマッツは語っていた)、森の中に自由に入れる散策路とファイアーピットが至るところにあり、ピクニックやアウトドアスポーツを楽しみ、夏になると森の中のサマーコテージでバケーションを楽しむスウェーデンの人たちを見ていると、やっぱり彼らの中にはアウトドアマンの血が流れているように思えてくる。
野外教育にしても、教育先進国である北欧の「メソッド化」された先駆的な取り組みというよりは、"当たり前の選択肢として身近な自然を使おう"というイメージの、日常の暮らしと結びついた学びのあり方が見えてくる。学びの場の選択肢の一つとして、子どもたちは森の中で遊びながら学んでいるし、それだけ森や自然の中には、いろんな気づきや発見など、子どもにとっての学びにつながる要素に溢れている。

というわけで、久しぶりのスウェーデン旅。今回もいつもと同じように、南のスコーネから旅を始めて、ニュネスハムンの自然学校や、レクサンドのエクセルスクールなどを訪ねてまわる予定。現地の自然学校で行われている一つひとつのアクティビティの手法だけでなく、その背景にあるスウェーデンの学びのあり方や、社会の基盤である民主主義や子供の権利といった価値観、そうした背景を元に成り立っている野外教育の役割について、自分なりに見つめてみたい。長年のスウェーデン通いによってぼんやりと見えてきた北欧の「森と学び」の全体像について、現地のレポートと一緒にこのページでもまとめていきたいと思っています。
 
現時点、成田→ヘルシンキの12時間フライトと、ヴァンター空港での7時間のトランジットで、待ち疲れ&座り疲れてフラフラの状態…。コペンハーゲンはまだか…


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?