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メンバー1人1人のスキルアップを促す「等級(グレード)」と「給与テーブル」

風音屋(@Kazaneya_PR)では、メンバー1人1人のスキル水準をモニタリングし、さらなる成長を促すための仕組みとして「等級(グレード)」を設定しています。プロフェッショナル人材が少しでも正当な評価とフィードバックを受けられるように試行錯誤を経てきました。

採用選考を進める中で「自分の場合はどのくらいのグレードになるのか?」というご質問をいただく機会が多々あります。この記事では、どういった考え方でグレードを設計・運用しているのかを、給与テーブルとセットで解説します。


注意事項

  • クライアントワークを担当するAnalytics部門を想定した内容となっています。Backoffice部門の給与テーブルは試行錯誤中ですが、ベースとなる考え方は同じような形に落ち着くはずです。

  • 人事周りのルールは今後変わっていく可能性があります。最新状況についてはカジュアル面談でお問い合わせください。

  • すべての人にとって「完璧な評価制度」「完璧な給与水準」ではないかもしれませんが、風音屋として何を重視しているのか、一定の考え方にもとづいて、少しでも納得感のある制度になるよう整えてきました。これからも継続的に改善していこうと考えています。

風音屋の等級(グレード)と給与テーブル

この記事の公開時点では、以下のような等級(グレード)と給与テーブルを設けています。L1からL5まで、5段階でグレードを設定しています。

風音屋の等級(グレード)と給与テーブル

各グレードに求められる期待水準

各グレードに求められる期待水準は、次の表のようになります。詳しくは後のパートで解説します。

各グレードに求められる期待水準

「3つのスキル」

上の表の「横軸」には、「Project Skill」「Technical Skill」「Human Skill」という「3つのスキル」を記載しています。グレードごとに各スキルについての期待水準を設定するためです。例えば「L3」の「Project Skill」では「自分から進捗報告ができること」といった水準が期待されています。

この「3つのスキル」については「プロフェッショナル・マニフェスト」の記事で解説しています。風音屋では「プロフェッショナル・マニフェスト」があらゆる人事制度の土台となっていますので、まだ読んでいない方は、ぜひこの記事を先に読んでいただければと思います。

グレードを5段階に分けるときの考え方

前提として、高いパフォーマンスを安定して発揮できる人材に対して、より多くの報酬を還元できるようにしたいと考えています。そのためには、利益を生み出している従業員の報酬をより大きくし、コストがかかっている従業員の報酬はなるべく抑えるための仕組みが必要となります。

そのため、マネジメントのコストに応じてグレードを分けています。

マネジメントコストに応じたグレード判定

周りにサポートを提供しているのであれば「L4」や「L5」となり、マネジメントコストが浮く分だけ、報酬を還元します。周りからサポートを受けているのであれば「L1」や「L2」となり、自走できるまでは報酬を抑え目に設定します。

チーム内に閉じるサポートは「L2」や「L4」、チームの枠を超えたサポートは「L1」や「L5」になります。チームの後輩をサポートしているならL4、チームの枠を超えて会社全体に貢献しているならL5です。チームの先輩にサポートを受けているならL2、チームの支援だけでは足りずに新卒研修の受講が必要であればL1です。

まずは、ベースとなるL3について詳しく説明します。次に、L3に昇格するまでのステップ(L2←L1)について説明します。その後、L3を超えた後のステップ(L4→L5)について説明します。

L3:リード(〜780万円)

グレードを考えるときのベースとなるのがL3です。風音屋における「リード」というのは「複数人のチームを束ねるリーダー」ではなく「担当業務を推進する役割」のことです。

L3の基準は「責任を持って担当案件を推進できること」です。会社がL3メンバーに求める期待は「安心して案件を任せられること」です。

注意していただきたいのですが、自分の仕事を自分で推進できる状態というのは、すべてを1人で抱え込んで誰にも相談しない状態ではありません。むしろ、必要なサポートを積極的にリクエストしているほうが、周りは「この人は自分の仕事を推進している」と安心できるものです。

  • Project Skill は「誰かに聞かれる前に進捗を報告できる」水準です。

    • プロジェクトを進める上で遅延リスクがあることは仕方ないです。リスクのないプロジェクトなど存在しません。

    • ただ、リスクが顕在化した時には、迅速に状況を取りまとめて、リカバリー方針を打ち出すことが重要です。

    • プロジェクト進行について質問や意見が寄せられたときには、根拠と自信を持って説明できるのが理想です。

  • Technical Skill は「案件に必要な専門知識を持っている」水準です。

    • もちろん全ての分野に精通している人間は存在しません。得意・不得意もあるでしょう。

    • ただ、目の前の業務で必要なのであれば、自己学習で速やかに知識不足を補えることが重要です。

    • 単に「そのツールが使える」というだけではなく、どういったケースでどういった方法を選ぶのがベストなのかを論理的に説明できるのが理想です。

  • Human Skill は「自分で心身の健康を保てる」水準です。

    • もちろん風邪を引くこと自体は仕方ありません。風邪を引かない人間など存在しません。

    • ただ、風邪が悪化しそうであれば、早めに休みを取ることが重要です。

    • 病院で適切な薬を処方してもらい、睡眠・食事を十分に取って、短期間で復帰できるのが理想です。

L2:ジュニア(〜540万円)

チームや上司からのサポートが必要となる「見習い」です。言い換えると「サポートを受けながら成長したい」という人は、L2のグレードで入社していただくことになります。

  • Project Skill は「誰かに聞かれたら進捗を報告できる」水準です。

    • 誰かが聞かないと自分からは報告できない、QCDS目標の達成に向けて自ら行動できない、ということになります。

    • 周囲からのサポートが必要で、マネジメントコストを投下することになるため「安心して仕事を任せる」には一歩足りていない状態だと判断します。

  • Technical Skill は「手法の選定にサポートが必要となる」水準です。

    • 単に「このツール/この手法を使ったことがある」というだけでは、安心して仕事をお任せできません。その手段が今回の問題解決にマッチするか分からないからです。

    • ツール選定の妥当性を確認するには、専門スキルを持っている別のメンバーに相談しないといけないため、追加でマネジメントコストが必要となります。仕事をお任せするには一歩足りていない状態です。

  • Human Skill は「誰かにモチベーションを上げてもらうと作業が進む」水準です。

    • 誰かがモチベーションを上げないと作業が進まないということなので、周囲からのサポートが必要となります。

    • 安定して成果を出せるようなプロフェッショナル人材は、自分なりに「この仕事は将来的にこういうことに繋がるからキャリアにも意味があるはずだ」と動機付けをしたり、モチベーションに依存せずにコツコツと仕事を進めるような習慣を身につけています。そうした人材と比べると、一歩足りていない状態だと判断します。

L2メンバーには、1年後までにL3にグレード昇格することを目指していただきます。1年後にL3として認められるには、最初の半年でL3の働き方にトライし、次の半年でL3の動きを定着させることになります。スケジュールに余裕はありません。

「L2だから成果を出さなくてもOK」ではありませんし、「L2は皆が優しく手取り足取り丁寧に教えてあげる存在」でもありません。お金をもらって顧客に価値を提供するプロフェッショナルの1人として、早期に成長することを期待しています。

L1:ビギナー(〜420万円)

トレーニングの受講が必要な「新卒・第二新卒」相当のグレードです。言い換えると「体系的なトレーニングを受けて鍛え直したい」という人はL1のグレードで入社していただくことになります。

  • Project Skill は「業務遂行に周囲の積極的なフォローが必要となる」「成果物に手直しが必要となる」「TODO管理ができていない」水準です。

    • ちょっとしたサポートを受けたとしても、まだ自力では仕事をやり抜けないフェーズです。仕事の進め方を1から学び、ステップアップしていく必要があります。

  • Technical Skill は「SQLの書き方やBIツール、Gitの使い方が分からない」「データ分析の結果をレポートとしてまとめられない」水準です。

    • 自学自習でキャッチアップできるなら問題ありませんが、そうでない場合、体系的に知識・働き方を身につけられるように、研修を受けていただく必要があります。

  • Human Skill は「強すぎる権限を付与されたときに怖いと思えない」水準です。

    • ビジネスマナーや社会規範についてトレーニングを受講し、どのような振る舞いが好ましいのかを知っていただく必要があります。

    • 他にも「フィードバックを素直に受け止められない」「ミスを隠してしまったり、ごまかしてしまう」「打ち合わせを無断欠席する」「SNSなどのパブリックな場所で悪口を言う」といった場合、経験年数を問わず、L1となります。

L1メンバーには、半年後までにL2に昇格することを目指していただきます。研修やトレーニングで基礎スキルを一通り身につけて「合格」の判定を受けることで、L2に昇格します。

L4:シニア(〜1,140万円)

担当業務を行いつつ、周囲のメンバーをサポートできる「チームの先輩」です。チームのこぼれ球を積極的に拾っているような存在です。

  • Project Skill は「他メンバーの進捗管理をサポートできる」水準です。

  • Technical Skill は「他メンバーを専門技術の面でサポートできる」水準です。

  • Human Skill は「他メンバーのミスをフォローできる」水準です。

残業しないという前提のもとで、自分の担当業務を行いながら、L2以上のチームメイトをサポートできる水準です。メンバーの相談に対してテキパキとサポートを提供できるように、圧倒的なスピードと品質が求められます。

L3水準のスキルを身に着けた上で、「普段からポモドーロ(30分単位)でTodoを処理する」「ペア作業やもくもく会で画面投影しながら作業のお手本を見せる」「社内外のミーティングで相手のモヤモヤをヒアリングしながら整理する」「少しでも疑問に思ったことは調べたり試して理解を深める」「ブログ執筆やイベント登壇で専門分野の話をスマートに説明する」といった経験を繰り返すことでL4に近づきます。

このグレードになると、クライアントからは「この仕事を極めている」「こんな短時間でこんな成果物が出せるんですね」と感動されることが増えます。ミーティングで突発的な相談を持ち込まれても、ヒアリングしながら相手の抱える問題を整理し、その場で資料作成・プロトタイプ実装・データ可視化を完了させてしまい、なるべく宿題を持ち帰らずに済む(結果的に労働時間が短くなる)という水準です。

L5:プリンシパル(〜1,580万円)

担当業務を行いつつ、会社の土台となる仕組みを作る「トップ人材」です。経営メンバーの一員として、もしくは経営メンバーと同じ目線で活躍しているような存在です。

  • Project Skill は「再現可能な管理表やプロセスを作成し、組織に定着できる」水準です。

  • Technical Skill は「案件の依存ライブラリをメンテナンスできる」「データ分析手法を選ぶためのフローチャートを作成できる」「データマネジメントの研修教材を作れる」水準です。

  • Human Skill は「チームビルディングを型化できる」水準です。

残業しないという前提のもとで、自分の担当業務を行いながら、会社全体を見渡してボトルネックをカバーできる水準です。担当業務のアウトプットが、そのまま会社の仕組みになったり、複数の案件に横展開できることが求められます。

社内向けには「データ基盤のセキュリティ要件定義書」のフォーマットを例に挙げて説明しています。某案件の成果物なのですが、完成度が高く、そのまま社内標準テンプレートになっています。社内に留めておくのがもったいないくらいで、書籍に掲載して沢山の人に届けたほうが世の中のためになるだろうな、といった声が頻繁に挙がります。普段の業務でそういう発明を自然と行える水準がL5です。

L4水準のスキルを身に着けた上で、その分野を代表するような専門書を2〜3冊ほど執筆し、多数のプロジェクトを経験することで、スマートに「標準」を発明できるようになり、L5の水準に近づきます。

L5水準のメンバーたちにとって、毎日の仕事が発明のための素材に見えています。困難で複雑な問題が出てきたとき、未知のトラブルが起きたときには、ストレスを感じるのではなく「これはベストプラクティスを開拓するチャンスだ」とワクワクしているような人たちです。そして、実際にベストプラクティスを開拓し、業界にインパクトを与えるところまでやり抜くのがL5というグレードです。

グレードごとの働き方:L1・L2はスキルアップを徹底重視

風音屋では「L1・L2」と「L4・L5」とで、働き方を分けています。

L1・L2のメンバーには「まずはスキルアップを目指してほしい」「まずは一人前の活躍ができるようになってほしい」ということを伝えています。経験値を少しでも多く獲得していただきたいと考え、月30時間までの残業を認めています。

まだ試行錯誤を繰り返しているフェーズですが、L1・L2のメンバーがL3水準のスキルを身に付けられるように、会社としてトレーニングやサポートを整備しています。「プロフェッショナル・マニフェスト」の記事で紹介していますので、合わせてお読みいただければと思います。

L1・L2のメンバーをいかにフォローするかが、現在の組織課題でもあります。現在は、全員がフレックスタイム(コアタイムなし)かつ在宅勤務としていますが、L1・L2のメンバーについては、出社時間を決めて、オフィスに出社してもらうべきかという話も出ています。

「隣の席の人と相談しながら仕事を進める」「ホワイトボードで状況を整理する」「すぐ手に取れる場所に課題書籍が置いてある」「ミーティング後にその場で振り返りができる」といった点がオフィスの魅力です。オフィス勤務のほうがL1・L2のメンバーは快適に働けるのではないか、結果的に早くステップアップできるのではないか、といった意見が社内で挙がっています。

グレードごとの働き方:L4・L5はプライベートも仕事も楽しむ

L4・L5のメンバーには、本人の希望に応じて「週2日労働でプライベートを楽しむ」「大量の案件をこなして稼ぎまくる」といった働き方を提供しています。

「旅行が好きだ」「家庭に時間を費やしたい」など、プライベートの充実を目指す人には、週2日で働くといった選択肢を用意しています。この場合、仕事のクオリティは「100点」を維持しつつ、仕事のボリュームを「2日 ÷ 5日 = 40%」に減らす形になります。ただ、L4に到達する頃には、日数を減らさなくても、ワークライフバランスを自由にコントロールできるだけの実力が身についているはずです。

「大量の案件を楽しみたい」「ガンガン稼ぎたい」というメンバーには、成果連動インセンティブを設けています。年収1,000万円のメンバーが2倍の案件を対応するのであれば、2,000万円を支払います。これはエース人材の給料を補正するための制度です。上限は定めていません。営業やコンサルタントなど、売上を直接稼ぐ人たちの世界では「給料の3倍の売上を稼げ」と言われることがあります。年間6,000万円の売上に貢献した人材には、年間2,000万円を支払うのが適正水準となります。

売上を増やすには「①案件やテクノロジーを選り好みせずに対応のバリエーションを増やすこと」「②横展開・再利用できるようにテンプレートやツールを充実させること」「③要件漏れやトラブル対応をゼロに近づけるような設計や自動化をすること」の3点が重要となります。

1人1人が案件のQCDS(品質、予算、納期、範囲)を向上させるような技術資産を創造・蓄積し、ノウハウを横展開することによって効率的な価値提供が可能となります。結果、風音屋自身のグロースサイクルが回り、従業員に報酬として還元できるようになります。事業会社の1部門やフリーランスの1人スペシャリストという立場では実現できないスケーラブルな仕組み作りに挑戦していきましょう。

人事評価(Will・Can・Mustシート)によるグレードの見直し

定期的な人事評価では「3つのスキル」をスコアリングし、グレードの見直しを行います。評価シートには「Will:目指す姿」「Can:得意なこと/苦手なこと」「Must:業務で達成すべき目標」を記載する欄を設けています。

このシートのうち「Can」に該当するのが「3つのスキル」となります。Canについて、本人の自己評価と、マネージャーによる評価を記載し、認識を擦り合わせます。

ーーー 例 ーーー

【メンバーからの自己申告】

「私の Project Skill ですが、チケットの推進や定期的な状況レポートはL3水準になってきたと思います。」

「一方で、トラブル対応をハンドリングする部分はまだ苦手で、L2水準だと感じています。実際、Aの案件ではBさんにアドバイスを受けながらの対応となりました。」

「L2とL3の境目ですかね。トラブル対応ができるようになったらL3だろうなとは思っています。」

【マネージャーからのフィードバック】

「以前に比べて Project Skill が大きく成長しましたね。作業の見通しが立っており、安心してお仕事を任せられるようになったと他のマネージャー陣からもポジティブな意見が出ています。」

「たしかにトラブル対応ではまだ甘い点もありますが、迅速にエスカレを挙げ、Bさんへのサポートも自らリクエストしていました。矢面に立ってステークホルダーに説明しており、ミュニケーションの内容も丁寧でした。」

「この動きができているのであれば、総合的にはL2からL3への昇格だと評価しています。」

現在は「共同代表2名+プロジェクトマネージャー+現場リーダー陣」の複数名でスキル評価を行っています。まだ会社の人数が少ないということもあり、360度評価の仕組み化まではできていませんが、一通りのキャリブレーションを経た上で評価を行っています。

なお、「Can」のスキル水準がグレード(=月給)に連動する一方で、「Must」の目標達成は賞与(ボーナス)に連動しており、クライアントの課題解決や満足度を評価に反映しています。「Must」だけを達成しても、こぼれ球を放置するような振る舞いを続けているとスキル評価で「Can」が低いという評価となります。「Will」はアサインに連動しており、メンバー1人1人にとって理想のキャリアに繋がるような仕事をお任せしています。

採用のオファー基準や提示金額

採用選考では、候補者の「3つのスキル」に点数をつけています。中途入社の場合、「既にL3以上の水準である」または「入社1年以内にL3水準に到達するポテンシャルがある」という人にオファーを出しています。グレードや金額の提示は以下のように行われます。

ーーー 例 ーーー

【採用候補者の希望水準】

「SESでバッチ系のシステムや管理画面、クラウドインフラを担当してきました。直近1年ではチームリーダーの経験があります。管理画面のユーザーとのコミュニケーションではこういった工夫をしています。」

「データ分析やデータ基盤に関心があって、ブログに書いてあった課題図書を読んだり、◯◯の資格を取っています。」

「データ系の実務経験はないので、L1 からのスタートになるのでしょうか。もし L1 で入社するのであれば、2年以内には L3 の給与水準までアップできるように頑張りたいなと思っています。」

【当社からの提示オファー】

「要件定義やテスト、チームマネジメントをしっかりと経験していることが、選考課題のアウトプットからも伝わってきました。システム利用者向けに使い方のガイドを丁寧に書いている点も、レビューを担当したメンバーたちからポジティブな評価が寄せられています。」

「データ分析に特有の考え方はまだ弱いですが、課題図書を読んで自分なりに工夫したことがアウトプットから伝わってきました。レビュアーのフィードバックを積極的に取り入れて、ブラッシュアップしている点も素晴らしいです。伸びしろがあると感じています。」

「現在の評価では、Project Skill は 3、Technical Skill は 2、Human Skill は 3 となります。Technical Skill の弱さについては懸念の声が挙がっているため、入社時はL2でオファーを出したいと思います。2年以内と言わず、半年後に L3 への昇格を目指しましょう。」

上記の例のように、Project Skill や Human Skill が高ければ、Technical Skill が低くても入社後の向上を目指す、といったオファーを出すこともあります。

反対に、技術力に自信があったとしても、選考課題の要件を満たせていなかったり、フィードバックを積極的に取り入れていないような場合、低い評価になってしまうこともあります。

1つ上の水準を意識すると、自己評価と他者評価が一致する

自己評価と他者評価のズレを防止するために、社内では「1つ上の水準を目指すつもりで仕事をしてほしい」と案内しています。自分から見た100点と周囲から見た100点が異なるからです。得意な仕事や上手くいっている仕事ならば良いのですが、苦手な仕事や上手くいっていない仕事については、つい自分に対して甘い評価をしてしまうことがあります。

L3のメンバーであれば、L4になったつもりで周りのメンバーをサポートするように案内しています。たとえ上手く貢献できなかったとしても、徐々に全体の状況を見渡せるようになります。自分の担当業務についても、力を入れるポイントと力を抜けるポイントがわかるようになり、これまでよりもスムーズに「L3水準の仕事」ができるようになります。

L2のメンバーであれば、L3になったつもりで自分の業務を進めるように案内しています。L2はサポートが必要な「見習い」ではあります。しかし、見習いだからと言って、お金を払って授業を受けている学生ではなく、お金をもらって仕事をしているプロです。全力で自学自習をし、全力で仕事に向き合うからこそ、周囲はそのスタンスと努力に敬意を払い、サポートを提供するようになるのです。

マネジメントコストをベースにしたグレード判定

個々のスキルに高低のバラツキがあるときは「最終的にマネジメントコストはどのくらいかかるのか?」でグレードを判定しています。「Technical SkillがL4」「Human SkillがL2」という場合には、技術面ではチームメイトをサポートしていますが、一方でマネージャーからモチベーション面でのサポートが必要となります。トータルではL3の評価になります。

単純な平均ではなく、マネジメントコストの実態である点にご注意ください。Human Skillの面で他メンバーに悪影響を与えるような場合は、マネージャーは他メンバーの追加サポートもしないといけないため、トータルのマネジメントコストが肥大化します。この場合、たとえTechnical SkillがL4であっても、トータルの評価はL2やL1となります。

その際に「振る舞い」や「再現性」を重視しています。「実際の行動として期待水準のパフォーマンスを発揮しているか?」「次回以降も同じようなパフォーマンスを安定して発揮できるか?」を問います。

  • 振る舞いが十分ではなく、「L4の技術者と同じだけの知識を有しており、ポテンシャルはあるけど、現実の動きとしてチームに貢献できていない」という場合、スキル水準が高いとは判断できません。現実としてマネジメントコストが浮いていないからです。

  • 再現性が十分ではなく、「たまたま今回は成果が出たけど、次はどうなるか分からない」という場合も、スキル水準が高いとは判断できません。次はマネジメントコストがかかってしまう可能性があるからです。

グレードは悲観的に設定して、後から補正する

迷った時にはグレードは悲観的に設定します。低すぎるグレードはすぐに昇格できますが、高すぎるグレードを降格するのは困難だからです。

本人の実力よりグレード判定が低い場合は「この人はもっと上のグレードだ」という評価になり、すぐに適性水準に上げることができます。あまりにも当初の評価が低すぎるようであれば、賞与のタイミングで+αの補正インセンティブを支払うなど、金額面での不足を後から補うことは可能です。優秀な人材には長く働いてほしいので、何らかのフォローアップを検討することになります。

逆に、本人の実力よりグレードが高い場合は、期待がズレてしまい、お互いにとって不幸な状態になります。実際にはL2のスキルで「周囲からサポートを受けて成長していこう」というフェーズなのに、L4の報酬を支払い、L4の目標を設定してしまうと「他のメンバーのお手本になってください」という期待がなされてしまいます。

人間と人間ですから、マネージャー視点だと、ついつい「この人にもっと期待したい」「この人ならもっとできるはずだ」と思ってしまいます。一方で、本人にとっては、過度な期待が続くとプレッシャーばかりが積もってしまいます。

後から期待水準を下げるには、人事面談を設けて「あなたのスキルは当初の期待ほど高くありませんでした」「あなたの給与を大幅に下げます」「これから鍛え直しましょう」と話し合わなければなりません。関係者全員にとって精神的に負担の大きい会話になります。その状況からやり直せるのは、10人のうち1人にも満たないでしょう。相当なメンタルのタフネスがなければリカバリーは困難となります。

最初の期待水準を下げておいて、入社後にステップアップしていくほうが圧倒的に簡単です。

スキル水準を可視化し、改善サイクルを回す

グレードという明確な基準を設けることで、本人と周囲とで期待水準を擦り合わせやすくなったと感じています。「このスキルが足りていないから伸ばそう」「このスキルが伸びたから評価しよう」といった建設的なコミュニケーションが可能となります。

風音屋のコーポレートビジョンは「改善サイクルを回し、今日よりも良い明日を。」です。フィードバックやデータをもとに改善サイクルを回すことを重視しています。メンバー1人1人がプロフェッショナルとして活躍していけるように、スキル水準をモニタリングするための基盤システムが「グレード」です。

すべての人にとって「完璧な評価制度」「完璧な給与水準」ではないかもしれませんが、風音屋として何を重視しているのか、一定の考え方にもとづいて、少しでも納得感のある制度になるよう整えてきました。これからも継続的に改善していこうと考えています。

風音屋は「プロフェッショナルな人材が集まり、成長し、活躍できる環境」を目指しています。プロフェッショナルとしての意識を持ち、意思と努力によってスキルアップを続けている人材が、少しでも正当な評価とフィードバックを受けられるような環境でありたいと思っています。

少しでも「いいな」と思ってくださったら、ぜひカジュアル面談にご応募ください。


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