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2023年・福岡旅行録

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福岡旅行だ! 線状降水帯だ!

急遽3連休が発生したので突貫で福岡旅行を計画したら、その前の週から福岡に線状降水帯の大雨警報が連日連夜出るようになった。
出発当日、祈るような気持ちで空港にたどり着いた私は、備え付けのテレビで福岡の雨の状況を見た。

//// デデン! \\\\

あのー、なんだろう、手加減してもらっていいですか?
飛行機も1時間遅れで飛び立つことになり、手持無沙汰でどうしようもなくなった私は、売店でビールを買って流し込むことにしたのだった。
あとはこれまでの経験上、気乗りのするイベントはことごとく晴れ間に遭遇してきた私の晴れ男としての力に祈るしかない。

灼熱の福岡行脚

十数年ぶりに乗った飛行機(大学生活に対してあまりにやる気がなさ過ぎて海外への卒業旅行などをしてこなかった)で緊張のあまりガチガチになりながら眠ること約二時間。

窓ガラス越しに撮影者の姿が映っているのは内緒。

死ぬほど晴れていて自分でも正直ビビった。つい先ほどまで雨が降っていたのであろう濡れた路面が生々しい。
いざ、博多の地へ足を踏み入れ……
暑い!
死ぬほど蒸して、クソがつくほどに暑い。

豪雨の爪痕が残る川の風景……

ついさっきまで雨が降っていたせいであろう、猛烈な湿度と雲の晴れ間から覗く強烈な日光が、博多の地を地獄たらしめていた。
茶色く濁り水嵩の増した川を見れば、先ほどまで博多がどのような景色だったのかが一目瞭然だった。

社会というクソにたかる蠅のプライド

予約した赤坂のホテルまで博多から徒歩で向かうこと1~2時間。
博多の街には2本の地下鉄の路線が走っているのだが、それぞれの駅の距離感は徒歩で20分ほどで、少し歩けば別の駅にたどり着く都心に慣れている身では炎天下で歩くには少し骨が折れる。
以前訪れた仙台は東京都心と同じような間隔で地下鉄の駅が点在していたので、都市ごとの都市計画や要所要所の立地の違いが出ているのかもしれない。

途中で見かけた祇園山笠。近々祭りが予定されていたらしい。

宿に着いた私はシャワーで汗を流しつつ、1日目の夜に何をするかに思いを馳せた。
元々予定していた「福岡旅行でやりたいことリスト」は以下の通り。

  • νガンダム立像を見る(そして限定のキットを買う)

  • 水炊きを食べる

  • イカの活け造りを食べる

  • 明太子を食べる

  • tinderでマッチした現地の人と食事をする

もはや目的の大半が食に関することしかないので、1日目夜、2日目の朝昼晩、3日目の朝昼の限られた回数でやりくりしなければならない。
突貫で旅行計画を立てたこともあり、詳細なタイムスケジュールを決めておらず思い悩む私は、とあるフォロワーから1つのレコメンドが届いていたのを思い出した。

>エロバニー風俗行ってきてください
エロバニー風俗……?
悪くないな……
2日目の夜はやりたいことリストのために開けておきたい。
となると、可愛らしいうさぎの尻を追いかけるチャンスは今日しかない。
悪くないね……とスマホで店の位置を調べようとした私は、もう一つの内なる声を聞いた。

>そういうことはNF原油先物でこさえた今年度の10万円の損失を埋めてある程度利益を出してからやるって決めたじゃないか!
そうだ。投機家(『社会というクソにたかる蠅』と読む)のなけなしのプライドとして1か月ほど前に決めたことが私にはあった。
様々な銘柄を売り買いし、損失は現段階で残り5万円ほどにまで減った。含み益もまぁまぁ出ている。
だが甘い。私にはまだうさぎの尻を追いかける資格はない。
ついでに言えば小麦ETFでこさえた損失も別勘定として残っている。
様々な思考が脳を去来し、私はこの旅の一番の目的を果たすことにした。

νガンダム、福岡に立つ!

赤坂から地下鉄空港線、博多でJR鹿児島本線に乗り換え竹下駅。
下りる人間の数に対してあまりに改札のキャパシティが間に合っていないこの駅の近くに、νガンダムは立っている。

νガンダムは伊達じゃない!

かっけぇ~!
横浜の動くガンダム、お台場のユニコーンと、これまで実物大ガンダムを見てきたのだがやはりそれぞれの良さがある。
本来、νガンダムのカラーリングは白と黒を基調とした落ち着いたものだが、黒の部分を青にして、アムロのパーソナルマークであるユニコーンのマークもグラデーションにすることで、非常に観光地映えする立像になっている。

かっけぇ~!
もしかすると昔の人々も大仏や神の巨大な像を見上げることで似たような感覚を抱いていたのかもしれない。
あまりのカッコよさに無限に眺めていられるが、あいにく時間には限りがある。付随する目的を果たさなければならない。
そう、ガンダムベース SIDE-Fまで。

かっけぇ~!

すげぇ~!

/// このシャア・アズナブルが粛清しようというのだ! \\\

デケェ~!

/// エゴだよ、それは! \\\

来た、見た、買ったッ!
限定のサザビーも逆襲のシャアの勇壮なBGMが流れる店内にディスプレイされているものを見ているうちに買いたくなってきたのだが、あまりにも大きかったので今回は断念。家買ったら考えよう。

やりたいことリスト埋めRTA

1日目夜~2日目の昼をダイジェストでお送りする。

1日目夜:

イカの活け造り!
酒!

優勝!

2日目朝:

博多駅地下、喜水丸にて。朝から5人くらい並んでいた

明太子と高菜と茶漬け用の出汁がおかわり無料!
ここは天国か?

2日目朝~昼:
博多の旧市街(黒田官兵衛で有名な黒田家のお膝元ということで博多には寺の多い地域がある)から、マリンメッセ福岡の方面へ、炎天下の中、ひたすらに徒歩での行軍。

博多はそば・うどん発祥の地……らしい
世界水泳の準備の真っただ中。

マリンメッセ福岡でトイレを借りられないかと思って近づいたら警備員の方に止められた。正しい。
そこからまたさらに歩くと、博多港国際ターミナルにたどり着く。

世界水泳の関係者、選手と思しき人々が出入りしていた。

そして港といえばこういうの。

デケェ~!
思えば今回の旅行は大きいものにばかり興奮している気がする。
埠頭から天神方面へ戻る道すがら、県立美術館に立ち寄り、日本画展を鑑賞。

そして、2日目……夕方。
ここで一度、福岡旅行でやりたいことリストを振り返ってみよう。

  • νガンダム立像を見る(そして限定のキットを買う):

  • 水炊きを食べる

  • イカの活け造りを食べる:

  • 明太子を食べる:

  • tinderでマッチした現地の人と食事をする

中々の進捗具合である。

天国と地獄

実は一日目の夕方から、ひそかに仕込んでいたことがあった。
それは、Tinderを起動して現地の女の子と会話することだ。
1日目に種をまき、2日目で運が良ければ収穫できる。
これは、以前一人でセリ鍋食べたさに仙台旅行に行ったとき、図らずも現地の女性陣とかなりマッチして何人かといい感じの会話の流れになったものの、その時は仙台に1泊しか滞在しなかったせいでチャンスを逃したという経験と反省を活かした施策だった。
それに、どうせ今回は水炊き目当てで福岡に来たようなものなので、1人で鍋モノは食べきれない以上、同伴者が欲しい。
ならTinderで現地調達すればいい。Q.E.D.
これ以上ないほど合理的な判断である。
ちなみに数日前から某出会い系サイトの掲示板で並行して募集をかけていたが、妙齢(社会性フィルタ検閲済)の方々からのレスしかなかったのでそちらはスルーした。
そうしてスワイプしていると、ある一人のOLとマッチし、トントン拍子に話が進み……
2日目の夜、Tinderで知り合った現地の女性と一緒に水炊きを食べに行くことになったのである。
知り合いのいない地でも食事の相手が見つかる。いい時代である。
私はすぐさま宿に帰り準備を整えると、天神南の水炊きが売りの店に目星をつけた。
集合場所と時間は決まっていたので、慣れない地ということもあって下見がてら30分ほど前に集合場所に到着。そこから目的地への道を実際に往復して道順を頭に叩き込むと同時に、店の周辺に何があるかを大まかに把握。
我ながらガチすぎてアレだなと思ったが、そんなことで身を引いていてはいつまで経っても自分の幸福は手に入らない。
集合時間になってやってきたのは、青色のワンピースを着た、歯並びのいい可愛らしい女性だった。
顔の造形を見ると、何となくだが過去に見た誰かに似ているような気がした。具体的な例はすぐに思い浮かんだ。
ちょうど、私が大学時代に在籍していたポケモンサークル(私はポケモンをやっておらず、主に部員の遊戯王の相手として参加していた)にいた男性の先輩の性別を入れ替えて、女性としての記号を形作る髪型、服装、アクセサリー、化粧によって修飾するとこのような仕上がりになるだろう、と言ったところだった。
この言説を読んで美しさを想起する読者は稀だと思うが、街ゆく人々の顔を観察して属性を入れ替えて飾った時、どのような造形になるか、その様が自分にとって好印象か悪印象か? のイメージを試行してみてもらえれば私の言わんとしていることは分かると思う。
真に造形に優れている人間、というものは非常にまれなもので、我々は単に時代の定義する男性性・女性性という記号に欲情しているだけなのだ。
つまり何が言いたいのかというと、私が彼女に抱いたのは好印象だった、ということだ。
あいさつもそこそこに、私は彼女を連れて店へと赴いた。道すがら、聞けばこの日はたまたま夜が空いていたのだという。すごい巡り合わせだねぇ、などと話していた。

心の目を開いてみれば右の席に座った相手の姿が見えるはずさ……

アプリで話していた仕事の話をおさらいするように乾杯をし、話題はTinderで出会った相手やこれまで付き合ってきた相手にシフトした。ついこの間まで金持ちの息子(ハーフ)と付き合っていたらしく、あまりに金銭感覚が違いすぎて疲れて別れたのだとか。
「次誰かと付き合うとしたらどんな人がいい?」
「静かに、平穏に過ごしたいかな~」
「ほんとだね~」
などと話していた。
いい感じに酒も進み、鍋も片付き、旅行中で気が大きくなっていた私はノータイムで会計にカードを切った。
「なんか申し訳ないんだけど……」
「いいんだよいいんだよ、旅行中だからね~アハハ!」
店を出ると、私の脳裏には2つの選択肢が思い浮かんだ。
逃げればひとつ……進めばふたつ……
逃げれば何事もなくきれいな旅行の思い出だけが手に入る。
進めば更なる旅行の思い出が手に入る。
様々な思いと打算が数秒の間に脳裏をかすめ、私は彼女の手を取り、
「明日早いんだっけ?」
「そう、早いんだよね~」
「そっか~、もう少し一緒にって思ったんだけどね~」
大人しく天神で解散。火曜の夜だからね、仕方ないね。

慣れない地で慣れない相手と話して疲れた私は、バーにでも行って落ち着こうと考えた。1日目に選択肢に上がったバニーの幻が鼻先をかすめたが、もはや女の機嫌を取る元気は私に残されていなかった。
P’s PLACEという比較的新しいバーで羽を休めることにした私は、気さくなバーのマスターに迎えられた。
「お客さん、旅行中ですか?」
「そうなんですよ、さっきアプリで知り合った女の子と飯食ってたんですけど解散になっちゃって、アハハ!」
「へぇ~!」
供されたカクテルを口に運びながら、もはやこの地で新しい女に会うことはあるまいが、とは思いながら一種の癖でTinderを開いた。

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ア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
私は砂になった。
進めばふたつ、得られましたか……?
1軒目で前のめりになりすぎたということだろう。反省点である。
惜しむらくはその反省を活かすフィールドが使えないということだが。
その日の晩、Tinderがまた使えるようになっている夢を見た私は、やはり何も言わないTinderの骸を見つめて、泣いた。

一瞬の快晴の果てに

3日目の朝はこれまでの快晴と打って変わって、いつ雨が降ってもおかしくない空模様だった。

それでも一つ救いだったのは、飛行機で福岡を発つ直前、晴れ間が覗いたことである。

山の向こうに、重たい雲があるのがお分かりだろうか?

まるで、この旅行で最後の思い出として手を振ってくれるように……

……

ミ”ッ……

いつかきっと、幸せを掴んでみせるさ……(完)

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