#7 教育史の授業でこんなこと話してます!(stand.fm配信用原稿)
(これは、stand.fmに開設した「kazの研究室ラジオ」の配信用原稿です。音声配信については、以下のstand.fmの僕のページから聴いていただけます)
01 あいさつ・番組紹介
(この番組は、とある地方の私立大学で教員をやっている僕、kazが大学教員や研究者としての視点から、日々の生活や、いつも考えていること、たまに学問的な関心や学術的なことなどをマイペースに発信していく番組です)
02 本編:教育史の授業でこんなこと話してます!
・ここ数日、stand.fmでいろんな方のライブ配信におうかがいしています。
・で、配信を聴きに行くと自分のアイコンが表示されて、アイコンをタッチすると僕の自己紹介が出るんですね。
・それで、配信者の方に僕の自己紹介を見ていただいたときのリアクションを聴いていて、なんとなく、「教育史」って難しそうなイメージがあるのかなっていう感じがしました。
・教育史に限らず、歴史の授業ってもしかしたら、高校までの「暗記科目」のイメージが強いのかもしれないなあ…と思ったりして、「暗記のツラさ」とセットで難しいイメージがついているのかなぁ、と。
・あと、大学で教員免許を取ろうと思って教育史を勉強した経験がある人だったら、なんか小難しい教育思想とか勉強したんじゃないでしょうか?ソクラテスとか、ルソーとか、デューイとか…
・僕が教えていても、学生さんに「暗記」を求めることもありますし、小難しい思想の内容なんかも話したりします。
・でも、僕が思う教育史は、そういうことが本質じゃないんじゃないかなと思っています。
・確かに、思想の話や制度の話、それと教育実践とか教育方法などのテーマが目立っちゃうんですけれど、それ以外にも教育史の研究って、いろいろやってるんです。
・その「いろいろ」のなかで、僕が授業などでよくお話しするのは「教育の文化史」というテーマです。
・教育の文化史というのは、簡単に言えば、教育、特に学校教育に関係の深いモノやコトに注目して、その成り立ちに注目していくという研究分野です。
・たとえば、学校の教室と廊下に注目してみます。
・小学校や中学校の校舎って、ほぼ片側に廊下・もう片側に教室が連なっているところが多いんじゃないでしょうか?
・真ん中に廊下があって、その両側に教室があるっていう作りがあってもいいと思うんですが、日本の学校ではこうした作りのところは少ないんです。
・前者を片廊下、後者を中廊下というんですが、日本の学校ではほとんど片廊下の作りになっています。
・これはなぜかというと、日本の気候だと中廊下の教室というのは湿気が溜まりやすくて、子どもたちの健康上、問題が多いとされたんですね。
・それで、明治時代に近代的な学校を作った時に、片廊下の作りの校舎をたくさん建てたんです。
・すると今度は、廊下と教室の位置をどの方角に配置するか?という問題が出てきました。
・これは日本の場合、南のほうの地域では廊下を南側に配置し、教室を北側に配置するという形式が広まりました。
・なぜかというと、南方では日差しが強いので、教室に強い日差しがはいらないようにするためということと、南西の風が強い時期が多いので、雨風が教室を直撃しないようにするためだったといわれています。
・それに対して、北のほうの地域では反対に、廊下を北側に配置し、教室を南側に配置するという形式が広まりました。
・これは、北方では日差しが弱いので、教室に日差しを多く取り入れることで冬場の暖房効果を期待したことと、南方とは逆に北風が強く吹き付けるので、廊下を北側に配置したといわれています。
・今では学校の環境も整って、換気や冷暖房の問題はエアコンなどで解決できるので、本当ならいろいろな形式の校舎を建ててもよいはずなんですが、それでも片廊下の校舎というのはまだまだ多いですね。
・こんな感じで、今のわたしたちが「当たり前」と思っているようなことにもいろんな歴史的な経緯があって、そうした背景のもとで今の学校や教育が成り立っているんだなということが、教育の文化史という研究分野からはイメージすることができます。
・これは生きていくうえでも、物事を見る・考える視点を育てたり、多様な視点を身につけたり、自分の「当たり前」を超えていくためのトレーニングにもなると思うんですけれど、いかがでしょうか?
・こんな感じで、これからもちょっと学問的なこと、学術的なことを発信していけたらと思います!