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「アンダークラス─新たな下層階級の出現」を読んで

ご覧いただきありがとうございます。竹位和也です。

先日「日本の子どもの貧困」の研究結果を図解総研にて発表させていただきましたが、その際に「アンダークラスって本読みましたか?」と聞かれ、読んでいなかったので読んでみることにしました。

この本はアンダークラス層を定義し、その定義を用いて様々な調査・分析を行い、そこから導き出される見解と、大まかな提言が行われています。

様々な角度で分析されているので、是非手に取っていただけたらと思います。

この記事では、本で示されているデータそのものについては基本的に触れず、考察を中心に述べていきたいと思います。


1.アンダークラスとは何か

本を読もうとしたとき軽くググって、あっそういえば、と思ったのは、こちらのサイトにあるピラミッドの絵です。

私はTwitterで見かけたと記憶していますが、アンダークラスが出版されたときにこの記事も書かれたようです。

アンダークラスは平均年収が186万円で、930万人もいるとされており、かつ本の中では、家庭で主に収入を得ている人以外の人が少し仕事をして収入を得ている人(主婦のパートなど)は含んでいない、ということです。つまり生活のために主となる収入獲得手段で得た収入で、年収200万にも満たない人がこれだけいる、ということになります。

ただ、このアンダークラスは日本だけの問題ではなく、北米やイギリスなどの先進国でも深刻になってきています。

アンダークラス層の多くは労働集約的で比較的代替のききやすい仕事に携わっていることが多く、雇用市場の観点から見ると低賃金になりやすい仕事に就いていることが多いと感じました。また、望んでそのような仕事を選んだというわけではなく、それまでの生い立ちや環境という、自身の理由に依らない事情でそのような仕事を選ぶしかなった、という背景もあるようです。

これらのことから、アンダークラスというのは、「ゆがんだ社会構造が作りあげた低所得労働者層」ということができると思います。

2.アンダークラスの置かれている状況

年収200万円にも満たないわけなので生活水準は低いというのはすぐにイメージがつきましたが、更には社会との断絶や健康、結婚、老後など、様々な課題を併せ持っていることが本で示されていました。

また、家庭や身の回りの環境に問題(貧困、DV、いじめなど)があると、それが引き金となってアンダークラスに入ってしまうおそれについても示されていました。

このほか、年代や性別などでも個別の分析を通じて分かったこともあり、特に印象的だったのは、アンダークラスに属する男性と女性において、社会や人との関係性(ソーシャルキャピタル)に大きな違いがあったことです。これは社会課題の解決策を検討する際に踏まえなければならないポイントだと感じました。

ソーシャルキャピタルについてはこちら↓

3.どのようにしてアンダークラスから脱却するか

本の内容のほとんどが暗い話で、読後感もいいものではありませんが、著者は調査を通じて、わずかながら可能性もみえていると述べています。

この本の肝のひとつと思われるのでぼかしつつ表すと、アンダークラスによる政治参加と、(こちらは明示的ではなかったが)ソーシャルキャピタルの可能性を模索することの2つが示されていたと感じました。

個人的にはこれら2つの考え方はアリだと思っていますが、長期的な話になるので、今日明日の生活に困窮しているアンダークラスにどれだけ刺さるだろうか、という点は疑問が残りました。

私自身も貧困の家庭で育ち、もう本当にいろんなことが起こりましたが、自分の行動によって変えられるものは確かにあるので、過去・現在の重しだけに目を向けず、自分を変える機会に目を向けていけたら、と願っています。今なら専門スキルを身に着けるために職業訓練給付金を活用する、無料のプログラミングスクールでエンジニアリングスキルを身に着ける、といった選択肢があります。

記事はこれで以上となります。ご覧いただきありがとうございました。

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