見出し画像

kazのこんなカメラ⑫Etareta


 チェコと言う国は大まかに分けるとボヘミアとモラヴィア、あとシレジアという3つの地域に分かれる。

 元々は別の国だった。


 今は言ってみれば関東と関西のようなものだ。

 有名どころのMeoptaはモラヴィア地方に存在する。
 同じモラヴィア地方にはズノイモワインという地ワインがあるが、これがめちゃくちゃ旨い。


 ドイツワインをベースにもっとスッキリさせたような感じ。
 しかも安い。

 さて、ボヘミアはなんとなく皆分かるだろう。
 ボヘミアングラスとかその辺りだ。


 食虫植物のハエトリソウの園芸品種には、ボヘミアン・ガーネットという何ともお洒落な名前のものもある。



 チェコの首都・プラハはボヘミア地方にある。
 そのプラハにあったカメラメーカーがETAと言う。

 今回はそのETAがごく短期間だけ生産したカメラ・エタレッタについて紹介したい。



 ・エタレッタとは

 第二次世界大戦終結後、ナチスドイツによって解体されていたチェコスロバキア共和国だが、1946年にソ連の影響もありチェコスロバキア共産党(CSSR)が第一党となった。
 その後、1948年にCSSRは共産主義政権を樹立したのだが、このカメラは丁度その2年の間生産されたカメラだ。

 Opemaのエントリでも書いたが、チェコスロバキアのカメラはピントを肉眼で合わせることが出来る機能を持ったカメラが極端に少ない。
 このエタレッタも当然ながら目測式だ。

 沈胴式の50mm F3.5レンズがついており、フィルムのコマ送りはボタンを押してロックを解除することで1コマ分巻き上がる。
 レンズシャッター式の35mmカメラ、という要素を抜き出すと、日本のあるカメラに妙に似ている。

 少し先輩だがほぼ同年代のカメラ。
 Konica Iだ。


 勿論、出来は比較するまでもない。
 Konicaの方が遥かに良くできている。

 と、いうか戦前の基礎設計でよくこんな出来のカメラを作ったものだと思う。
 凄すぎる。

 恐らく、たまたま発想が似通っただけで縁もゆかりもないのだろうが、どちらも好きなカメラなので奇妙な一致を感じる。

 さて、このカメラの写りを早速見ていきたい。


 ・エタレッタの写り



 なんと、これが中々悪くはない。

 目測力(ちから)がある程度あれば、写りそのものはOpemaの標準レンズ・ベラーより遥かに素直だ。

 また、シャッターチャージと巻き上げが連動していないカメラなので、チャージを複数回行うことで簡単に多重露光が出来る。


 あまり多重感がないが、コーヒーショップの窓口に看板の文字を多重で載せている



 弱点がないわけではない。



 レンズが余りにも逆光に対して弱すぎる。

 


 何故かコニフード32mmが合うので、レンズフードは必須と言ってもいい。


 また、巻き戻し機構が非常にユニークで、巻き上げノブを持ち上げることによりスプールのロックが解除され、上面の巻き戻しボタンを押しながら巻き戻しノブで巻き戻す。
 文字で書くと大したことのない作業だが、この巻き戻しが非常に重く、巻き戻しは筋トレだと思っている程だ。
 力任せにやるとパーフォレーションがぶち切れてしまうため、根気も必要となってくる。

 ・謎のコピーカメラ

 さて、このカメラ自体は終戦直後の目測式の、と説明がほぼ終わってしまうのだが、ここからもう一つ面白いネタがある。

 次の画像をご覧頂きたい。


 エタレッタの型式違いが2台並んでいる、訳ではない。

 右側がエタレッタからおよそ10年後くらいに日本の新世光機という会社が売り出した、
「モンテ35」というカメラ、その後期型だ。

 他の角度から見ていこう。




 うん。

 明らかにコピーだ。

 ここで不思議なのが、東側で大した人気があったわけでもなく、たった2年しか生産されていないカメラのコピーを何故作ったのか、ということ。
 どうせコピーを作るなら廉価機にしてもドイツの有名どころだったりなんなりがあるはずだ。

 他国に流出もあまりしていない、チェコの廉価機を丸パクりしている意味が中々わからない。

 一応、新世光機の名誉の為に言うと、僅かながらモンテ35の方がよく出来ている。
 しかし金属の塊のようなアルミ合金削り出しのエタレッタの存在感は中々愛着がわきやすいものでもある。

 単純にカメラとしてはそこまで推せるものではないが、終戦直後に頑張って作った感が伝わってくるので決して嫌いではないどころか、割と好きなカメラである。

 このカメラでプラハの景色を写せたら楽しいだろうなあ。






kaz

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?