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第112回フィルムさんぽ(中判回)に参加してきた件


突然 ロモからの手紙


 最近色々なテレビで物価高の特集をやっている。

 「昨年比で◯◯%の値上がり!」などという切り口が多いが、その度に私は「それ、写真用フィルムの前でも言えるの?」とマウントを取りがちである。それくらい近年の写真用フィルムの値上がりは厳しい。
 数年前まで1本500円くらいだったものが今や2000円近い価格となっている。Ektar100が1本1100円くらいで買うのにちょっと勇気が必要だったのになあ……

 まあそんな界隈なものだから、フィルムメーカー各社から「価格改定のおしらせ」とやらが発表される度に我々は死んだ魚の目をしながらハイハイ値上げ値上げ、我慢我慢、欲しがりません勝つまでは、足らぬ足らぬは工夫が足らぬ、進め一億火の玉だ、何が何でもカボチャを作れ、と呟くのがほぼ日常となっていた。

 それは10月半ばのことだった。

https://x.com/lomographyjapan/status/1714856912230261178?s=20

 はいはい価格改定価格改定、値上げ値上……
 値 下 げ ! ? ! ? ! ? ! ? 

 この告知にフィルム愛好家は色めきたった。値上げじゃなく?値下げ!?私も現像してくれる店も減って棚の中でぐーぐー寝ていた中判カメラを慌てて動作確認してきたくらいに、この報は在野のフィルムカメラクラスタ達の中判カメラ熱を再燃させた。一度生まれたものは、そう簡単に消えない。

 ※ロモグラフィーの価格改定を受けて各地で再起しだす中判カメラユーザーのイメージ図。

 そんなこんなもあり、フィルムさんぽでも年末のガチャ回の前に中判回を一度やっておきましょう、という事で企画が持ち上がった。
 前回の中判回が盛り上がったことも理由の一因らしい。

今は君のことだけ


 持ち込むカメラは幾つかの選択肢があり、みんながハッセルブラッドを持っていて羨ましくなり買ったサリュート2台の他、チェコスロバキアのフレクサレットシリーズなども持ち出すことが出来たが、今回は前回の多重露光回で使用した中国のグレートウォール DF-5にすることに決めた。

 と、いうのもこのカメラ単純にめちゃくちゃ楽しい。プリセットすらない手動絞りで、スペック自体ははっきり言って1950年代の廉価機レベルである。映りに関しても一応ちゃんと映る、という位のものでしかない。しかし面白い機構と意外とコンパクトで下手な二眼レフよりも小さいというのも利点ではある。
 そして多重露光回でも使用したM39スクリューマウントのこのカメラならではの機構。超近接撮影能力を活かしてなにか面白い事ができないか、と。そうした理由でサリュートSとどちらを使うか悩んだ末にこちらを採用することにした。

突然のアカい誘惑に


 さてメイン機材の用意はできた。サブカメラは折角メインが中華カメラなので、鳳凰205ASというこちらも中国の35mmレンズシャッター機を持ち込もうと検討していた。



 フィルムさんぽは開催前に簡単な自己紹介と使用カメラを紹介しあうグループメッセージがあるのだが、その中で私の趣味を知る参加者の方のあるメッセージを見かけた。
 それは「人民公社ペンタコンのPentacon Sixを持参します!」というものであった。
 どうも他にもペンタコンシックスを持参する参加者の方がチラホラといそうだ。

 これは私の芸人魂が試されているな?

 しかしここで一つ問題が存在する。私もペンタコンシックスを1台持っているのだが。


 実はこれは通常のペンタコンシックスではなく、やや特殊な仕様のものである。

 これはチェコスロバキア警察でパスポートや運転免許などの法的書類用の写真を撮影するためにペンタコンシックスTLを改造して作られたオリジナルの仕様、ペンタコンシックスTLSというモデルである。
 何が問題かというと、証明写真サイズにフォーマットが改造されており具体的にはオリジナルの6×6cm判ではなく4.5cm*3.8cm判の18枚撮りという変態的なフォーマットになっているため当然の事ながらフィルムさんぽに持ち込むことは出来ない。このカメラを使う時は基本的に自家現像をしていたのだが、現在は引っ越しており、引越し先の自宅が浄化槽式のため自家現像が出来ない。

 ただ、ネタ振りには答えたくなるのが芸人というもの。ダメ元でカメスズの中の人に
「別に納期は問わないのでサブカメラなら使用できますか」とワガママを言ってみたところ、追加料金は掛かるが対応出来る、と快諾を頂いた。

 と、いうわけでメインカメラ長城DF-5・サブカメラPentacon Six TLSという頭のネジを今すぐ西川電子部品に行って揃えてこい、と。そういう装備でさんぽに挑むこととなった。

時間(とき)の経つのも忘れた

 そういえば、いつも書いているこのさんぽ参加noteなのだが、いつも撮影会終了からそれほど間を置かず更新されている事に気づいている方はいるだろうか。

 実はこのnoteは事前に起承転結の大まかな段落と説明を当日の朝の電車の中である程度形にして、参加後に帰りの電車内で仕上げている。なんせ自宅と集合/解散場所まで大体2時間以上は掛かるのだ。

 今回も同様に、集合場所である梶が谷駅までこの記事の下書きを書いていた。時刻表アプリでは9:15到着予定。集合時刻は9:30。到着はおよそ15分前か。
 成程到着後にコンビニで会費を下ろしても十分間に合う。スマホアプリでタイマーを掛けてラフを書き始めた。

 たまたま一段落付き、ふっ、とスマホの時計を見ると9:14分。そろそろか、と思うものの電車内の掲示板に集合駅である「梶が谷」の文字がない。

 「青葉台?あれ?梶が谷って青葉台より手前じゃなかったか?」

 実は私が乗った電車は時刻表より一本早い急行電車であった。9:15時点で梶が谷を通り過ぎかなり先の方まで走ってしまっていた。迷いkazオーバーランだ。
 慌てて青葉台で降り、主宰に連絡し折り返しの電車を待つが各駅停車で20分も掛かる。


 ひょええ、携帯忘れて取りに戻った時でも(ギリギリ)遅刻しなかったわたしの出欠記録が!!
 幸い到着して参加費を下ろして集合場所に走ると丁度自己紹介と説明が始まるタイミングであった。
 セーフかアウトかで言うとセーフ寄りのアウト。

 慢心、ダメ、絶対。


土曜日のソルソは混んでいる

 CM:

フィルムさんぽ赤化計画が順調に進んでいる様子〜
 
 CMおわり


 さて、散歩当日。実は今回中判カメラ回であること以外にももう一つハチャメチャが押し寄せてきてワクワクを100倍にする事があった。

 今回の撮影スポットとして、川崎の大型園芸スポット「ソルソファーム」が選定されていたのだが、実は私、植物の栽培には少々興味がある。

食虫植物 ビブリス・リニフロラ(実生)
食虫植物 ピンギキュラ・コンドイ
サギソウ
レリア・ダイアナ セルレア '長者丸'

 具体的に言うとかつては日本食虫植物愛好会に顔を出しており海外から苗を個人輸入していたり、洋蘭を色々栽培していたり、自宅には温室があり現在日中はピンク色の妖しい光が玄関から漏れていたりする程度だ。


 そんなこんなで話には聞いたことがある多肉マニアに知られる巡礼所、ソルソファームを訪問出来るとの事で発表からテンションが上がっていて前日の朝から影山ヒロノブのWE GOTTA POWERを歌っていたくらいだ。
 実は暫く風邪を引いており鼻水と咳・痰が止まらず具合はお世辞にも良くなかったのだが、ミカンをたくさん食べて熱燗を飲んでなんとか治した。


 実際に訪問した図。滞在時間がそう長くないことに加え、お客さんが沢山いたのと、たのしい植物も沢山いたので殆ど小走りでぶっちゃけ写真そっちのけで駆け回っていた。
 私の好きなジュエルオーキッドのシュスランや、多肉植物のアローディアが並んでいたのでしっかり購入しておいた。

どんな状況(とき)も笑っているよ

 
 さて、講評の時間となった。
実は今回ロシアのシルベラ160というフィルムを使っていたのだが、(植物を見るのに夢中で)時間までに撮り切れず、集合場所の公園で残り数枚のフィルムを使い切った。撮影後フィルムを取り出してみると……

 ありゃ。
 なんか巻き上がりが物凄くきちゃない。巻き上げ中にフィルムが偏り曲がってしまったのだろうか。
 まああれだ。ロシア製だし仕方ないが中判の自家現像をした経験は勿論ある。裏紙が寄れてくしゃくしゃになっているが、中のフィルムは大丈夫、なの、では……

 返されてきたフィルムの袋を見ると…… 

 よし!特記事項なし!!

 ※もしなんらかの写真が写っていた場合であっても、フィルム状態に偏りや光漏れがあるとここに書かれてくる。なんとかしょっぱい事態は免れた、ということではあるのだが肝心の写真の出来そのものがちょっと弱っちい。


 これは割と個人的に選びがちなモチーフなのだが、並んで停めてある自転車やバイクを奥行きを出して撮るのが好きだ。

 中々いい陽が差していた。

 困ったときは車に頼る。

 上がりがそれほど良くないのは、えと、その、草を探して買うのに忙しくしてたからですかね……



 実は今回裏技として上述のM39スクリューマウント用レンズ使用による超近接撮影能力を活かすためにキットまで作ってシネマショットを狙ったのに1コマは主題の露光中にシャッターを止めてしまって台無しにしちゃった(露光中にシャッターダイヤルに干渉するとシャッターが止まってしまう構造)し、リベンジを狙った生きてる方はしょっぱい形だ。


失敗した方


できたけど格好良くなかった方


 このkaz、撮影の中で撮影を忘れた……っ!

 しかし、集合場所の公園で残りのフィルムを使い切るべく何ショットかやっていた中で中々いい上がりが出てきた。
 前回の多重露光回で講師の先生に紹介頂いた、
「花にピントを合わせず思い切りぼかして女性のシルエットを重ねる」というテクニックを試してみたものだが、これで公園のシクラメンを並べて撮ることで極彩色っぽくなり(元々今回使ったフィルムは赤が強調されるため)中々の評価を頂き、一応3位の評価を頂く事ができたのだ。

 うっかり掲載許可を聞くのを忘れて帰ってしまったので代わりの写真で勘弁して欲しい。

 いや、なんせ遅刻して走って、ソルソファームで走って、昼食後に横浜のキタムラ回ってたらエスカレーターで猛烈に足つって半日満足に歩けないくらい痛かったのだ。早く帰って買った植物の植え替えとお風呂でマッサージしたかった。

 今回も波乱が盛り沢山ではあったが、埃まみれになって時の経つのも忘れていたユーザーの中判カメラ熱の燃え残りにもう一度火をつけることとなった一つの切っ掛けはロモグラフィーの英断である。
 写真用フィルムにとって不可避の値上げの潮流の中で、敢えて値下げという選択肢を選んだ御社にはこの言葉を送りたい。

 ありがとう、ロモグラフィー
 ※あとコダックアラリスジャパンも追従して値下げしてくれ


今度こそは意地を張らない


 さて、年末最後のイベントはガチャ回・そして忘年会が待っている。どちらも参加予定だ。特に忘年会はフィルムさんぽ関係で私が一年で一番本気を出すイベントでもありその辺りはちょっと気合を入れていきたいと思う。

 その前日は年末最後のフィルムガチャ回なのだが実は私はこのガチャ回、割と鬼門の回であり、いつも持参したカメラがなんかしらの不具合を起こしてうまく撮れなかったりするケースが多い。
 今回は主催から「今回は各フィルムの違いを見る企画でもあるのでちゃんと動くカメラを持ってきなさい」と厳命されているので、持参するカメラは手持ちの中でも特に信頼性が高いものの中から候補を投票で選定した。


 成程、それが世界の選択か。

 と、いうわけでガチャ回はKiev IIIを使用することとなった。(大丈夫だと思うが稼働に問題がなければ)
 巻き戻す時にたまにパトローネからフィルム切れるくらいの症状はたまに出るが、それくらいソビエトでは不具合のうちには入らないしな。
 また翌日の忘年会は室内+酔いが回る関係でAFが付いているカメラを持ち込む予定ではある。もちろん東側にそんなカメラはない。




 この際プライドは抜きだ。



kaz



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