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【野球現場におけるPT(理学療法士)の役割】について

今回は私がPT(理学療法士)なので、あえて“PT”としていますが、トレーナーが自分一人しかいないような現場では、これから話す内容についても役割を担う必要があるので読んでいただけたら幸いです。

ちょっと待って!
そもそも”PT”って何??

と思う方もいらっしゃるかと思いますので、、、
PT:Physical therapist → 日本では”理学療法士”と呼ばれます。(略してPT)
(知り合いの方にありがたいご指摘をいただいたので追記しております。💦)

さて、“PT”と聞いて一般の人がイメージするのは、
「病院で働いている人」「リハビリする人」「白衣みたいなやつを着ている人??」
という感じでしょうか??

たしかに、以前までは病院で働く人がほとんどでしたが、近年では多くの「スポーツ現場」に関わる人が増えてきています。

そこで、PTとして野球現場に関わる中で「PTに求められる役割」について書いてみました。

【ケガをした選手の評価】について

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例えば、試合の前に「肩が痛い」と言ってきた選手がいた時に、評価をして今後の方針を決めていかなければいけません。

プレーを続行可能か?
一時的に休めば回復するのか?
長期離脱する可能性があり病院を受診した方が良いのか?

といったようなことです。


病院と違うのは、最初に評価を行うのが「医者」ではなく、「PT、トレーナー」である、ということ。
トレーナーが複数いるようなチームでは、医療資格である「PT」が評価を求められることも多いです。(チームにもよります)

病院であれば医者が診察して、画像を診て、診断が出てからリハビリを行う、という流れになります。
この流れであれば、画像から「器質的な問題はないか」「重篤な疾患がないか」という判断ができますが、現場ではそうはいきません。

私たちは「診断」を行うことはできませんが、理学所見や整形外科テスト、痛みの程度などの情報から、こういったことの判断を求められます。

「ひとまず病院に行けばいいのでは?」

と思う方もいるかと思いますが、日々の現場の中では大きなケガから小さなケガまで毎日のように起こっているため、どこかで線引きして「緊急性の高そうな状態」「少し様子を見た方が良い状態」「注意しながらプレーを続ける状態」などの判断をする必要があります。

この点については現場で活動されている多くのトレーナーの方が感じる難しさかもしれません。

現状では、評価した人の「経験」や「能力」に依存してしまうこともあると思います。
このやり方は、ときに“ヒューマンエラー”を引き起こす可能性もあります。

“いかに、選手が安全にプレーできる環境を整えられるか?”

そのためには、「経験」や「能力」に依存しない、「評価基準」や「病院受診の判断基準」などを持つことは大切だと感じています。


【方向性の決定とリハビリ計画の立案】について

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例えば、先程の「肩が痛い」と言ってきた選手がいた時に、評価をして

・そのままプレーを続行する
・これ以上プレーを継続すると悪化する可能性があると判断し、プレーを中断する。
・2~3日の安静で様子を見る。
・病院を受診する

といった今後の方針を決めていきます。


病院受診した結果、「リハビリ対応」となれば、主にPTが関わり、『リハビリ計画の立案』を行うこととなります。

その際に主に決めていく内容としては、

●ゲーム復帰時期
●チーム練習への合流時期
→投手:ブルペンに入る時期
→野手:バッティングやノックに入る時期
●技術練習の開始時期
→キャッチボール、スイング開始

といったことを決めていきます。

ゲーム復帰に近づくにつれて、各担当コーチと小まめに状態の報告や今後のスケジュールなどの共有をしていきながら、リハビリを進めていくことになります。

例えば、投手のリハビリであればキャッチボールで出力を上げてできるようになり、ブルペンに入っていくタイミングで「投手コーチ」と相談し、ブルペンの日程や球数などを決めていきます。

ゲーム復帰する際には、登板イニングや球数の制限、次回登板までのリカバリーの期間等も含めて話をしていくことになります。

ここでのポイントは、もちろん「安全なスケジュールを立てる」ということもそうですが、

病院で働く場合とチームで働く場合の違いとして、
「1人の選手に対して多くの人が関わっている」ということであり、この点は意識しておいた方がいいんじゃないかなーと感じています。

つまり、1人の選手がケガをすればその選手の情報を知りたいと思っている人がたくさんいるということです。

例えば、
自分以外のトレーナー、監督・コーチ、球団フロント、、、など


それぞれの人の立場によっても「聞きたい情報・求めている情報」は違います。

そのため、相手によって情報の伝え方や資料の見やすさなどを考慮し、「相手目線」でのコミュニケーション、情報共有を行っていくことも現場のトレーナーに求められる能力だと感じています。


【ゲーム復帰を見すえたリハビリの実施】について

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先ほど、『リハビリ計画の立案』の段階で、

●ゲーム復帰時期
●チーム練習への合流時期
→投手:ブルペンに入る時期
→野手:バッティングやノックに入る時期
●技術練習の開始時期
→キャッチボール、スイング開始

といったことを決めていくとお話ししました。

その際にポイントとなるのは、まず「ゲーム復帰の時期」から決めていく「ゴールからの逆算」をしていく、ということです。

では、なぜ「ゴールからの逆算」が大切なのでしょうか?

それは先ほどもお話ししたように、1人の選手に対して多くの人が関わるからです。
・球団フロント(プロ球団の場合)
・監督/コーチ
・他のトレーナー など

これらの立場の人たちがそれぞれ、選手の情報を欲しがっているわけです。

球団フロントは、「チーム運営をするにあたって選手の情報を知りたい」
監督/コーチは、「選手がいつから練習や試合に出られるかを知りたい」
他のトレーナーは、「トレーナーチームとして選手の状態や今後の方針を共有してほしい」

といったようなことを知りたがっています。

リハビリを進めていく中で、とくに球団フロントや監督/コーチからは、「いつからゲーム出られるの??」といったことを急に聞かれることがあります。

その時に「ゴールからの逆算」ができていないと、

「とりあえず状態を確認しながら進めます、、、」
「まだ見通しが立ちません、、、」としか言うことしかできません。

もちろん、急性期で状態が変動しやすい時期や難しい症状の場合は、判断が難しい時もあります。

PTで病院に勤めているなら、その日の状態に合わせてリハビリをしていき良くなったら退院、という流れでもいいかもしれません。
(本来は治療の前に長期目標・短期目標を設定するはずですが。)
もちろん高齢の方で症状の変化が予測しづらい、慢性的な症状で目標期間の設定がしづらい場合などもあります。

上記のようなケースもありますが、しかしそこまで、初診時に決めた期間までに達成する!と患者さんと意志の共有をしながら進めていくことは少ないかもしれません。
#みんなはやっていたのかな
#自分は当時はそこまで目標達成の期限に対する意識は低かったです、、、


話はそれましたが、

球団フロントの人たちは、選手の契約や支配下登録などの問題もあり復帰時期を知りたいと思っている。
監督/コーチは、ゲームメンバーの決定や試合の戦略を立てるのに、いつから戦力になれるのかを知りたいと思っている。

すなわち、現場では「自分」と「選手」が共通認識できているだけではリハビリは上手くいかず、関わる人たちに対して情報共有をしていくことが大切になってくるのです。

そして、例えばコーチから「いつ頃にゲーム出られるの?」と不意に聞かれても答えられるように「ゲーム復帰の時期」から決定し、「ゴールからの逆算」でリハビリスケジュールを作成する必要があるのです。


少し長くなりましたが、【野球現場におけるPT(理学療法士)の役割】について書かせていただきました。

“リアル”な現場で私たちに求められるのは、「専門家としての知識・技術」はもちろんのこと、
チームの一員として、選手はもちろん周りのスタッフと「コミュニケーションをとる能力」が求められます。

いくら良い治療、良いトレーニングを考案したとしても相手に伝わらなければ意味がありませんし、
計画的なリハビリスケジュールを組んだとしても、コーチとの共有がうまくいかず予定通り進めることができなければ意味がありません。

それらは結果として、選手の野球人生に影響を与えてしまう可能性もあります。

“いかに、選手が安全にプレーできる環境を整えられるか?”

なるべくヒューマンエラーをなくすためのシステム作り、スムーズなリハビリを進めていくためのコミュニケーションスキルなど、

野球現場においてPTに求められる役割は多くあると感じています。

これからトレーナーを目指す学生さんや若手の理学療法士の方々に、少しでも現場のイメージを伝えることができたなら嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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