見出し画像

ワクチン安全性事象:コミュニケーション対応の管理 - 保健省の拡大予防接種計画 (EPI) マネージャーと健康増進ユニットのためのガイド (日本語翻訳版)

世界保健機関(WHO)欧州事務局発行のVaccine Safety Events: managing the communications response. A Guide for Ministry of Health EPI Managers and Health Promotion Units, 2013の日本語版を同事務局の了承を得て作成しました。日本は、ワクチンの安全性に関するリスクコミュニケーションが未成熟で、システマティックな対策が実施されていません。ガイダンスとなるよい教科書、参考書も乏しい現状もあります。本書が国内の関係者にとって有益な資料となることを願っています。

ワクチン安全性事象:コミュニケーション対応の管理 - 保健省の拡大予防接種計画 (EPI) マネージャーと健康増進ユニットのためのガイド (日本語翻訳版)


以下、本書の「はじめに」の引用です。

はじめに

ワクチンは、人々の健康を促進し、感染症の負担を軽減するための最も効率的な公衆衛生ツールの一部である。毎年約600万人の死亡がワクチンによって防止されている。この人命救済の影響は、直接的 (医療費) および間接的 (労働生産性) な経済的利益、経済成長にもつながる。ワクチンにより、何百億ドルもの節約が達成できたと推定されている。しかし、ワクチンの有効性よりもワクチンの安全性に対して、より厳しい目が向けられている。ワクチンが病気を治すのではなく予防するものであることがその理由の一つである。ワクチンが適切に機能する場合、目に見える効果がないため、その利点が容易に忘れられたり無視されたりし、逆にワクチンに関連する非常にまれな副反応が注目を集めている。

なぜこのマニュアルが必要なのか

予防接種が広範な健康上の恩恵であることを証明することは、10年前に考えられていたほど容易でも明白でもない。近年、予防接種に関する情報は、世論とメディアの精査の対象になっている。マスメディアの関心が高まっている環境で、ワクチンと予防接種について、より多くの人々に情報提供するにはどうしたらよいだろうか?国の予防接種プログラムを管理するには、予防接種の技術的な側面に関する深い知識が必要である。しかし、プログラムマネージャーらは、実際のまたは認識されているワクチン関連事象 (VRE) によって引き起こされるコミュニケーションの問題、つまり彼らがこれまで訓練されていないかも知れない問題への対応を求められるようになってきている。このマニュアルは、地域社会、国家レベル、またはそれ以上のレベルでVRE発生後における、コミュニケーション対応の計画と管理に役立つ実用的で有益な戦略とツールを提供する。このマニュアルを読むことで、コミュニケーション戦略とツールを使用して、ワクチンに対する国民の信頼を高め、VREの悪影響を最小限に抑える方法を学習できる。

情報を簡単に広めることができるということは、ワクチンに関する否定的なコメントが、バランスの取れた専門家の意見を伴わずにインターネット上で「ウイルス」のように蔓延する可能性があることを意味する。その結果、メディアはワクチンの安全性の問題について多くの収穫物を見つけてきた。予防接種分野の多くの専門家はしばしばメディアを「公敵ナンバーワン」であると感じてきたが、このガイドにより、現在のこの環境を、ワクチンのメリットについての良いニュースを世界に伝え、メディアとの相互に有益なパートナーシップを構築する絶好の機会ととらえることができるようになると私たちは信じている。

このマニュアルの使用方法

強力なコミュニケーションの原則と戦略を採用することは、エビデンスに基づくリスク分析に代わるものではない。したがって、この文書は、ワクチンの安全性に関連するリスク管理のためのWHOガイダンスの補足資料として使用するべきである。ただし、国によって状況が異なるため、この情報を状況に合わせて調整し、各国が独自のVREコミュニケーション計画またはマニュアルを作成することを推奨する。このマニュアルは、VREについてのコミュニケーション戦略のみに焦点を当てている。他の危機的状況 (国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態など) には対応していない。


目次

  1. はじめに

  2. 環境

  3. ワクチン関連事象 (VRE) とは何か

  4. コミュニケーションすべきか否か

  5. メディアコミュニケーション計画

  6. メッセージの作成

  7. メディアの選択

  8. メッセージの発信 – メディアスキル

  9. 危機への対処

  10. パートナーシップの構築

  11. 噂への対処

  12. 特別予防接種事象の課題

付録
付録1:VREへの可能性な対応
付録2:コミュニケーション計画のテンプレート
付録3:プレスリリース
付録4:コミュニケーション行動のタイムライン
付録5:コミュニケーションのベストプラクティス
付録6:AEFIが報告されたときに実行すべき職務
付録7:AEFIのベースライン発生率
付録8:自己評価
付録9:コミュニケーションをより効果的にするための5つの コンセプト
付録10:よくある75の質問
付録11:記者会見で記者が使用するいくつかの戦略
付録12:追加リソース


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?