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これができれば料理上手?

僕が子供だった頃、肉じゃがが作れれば立派なお嫁さんになれる、みたいな風潮があったことを記憶しています。家庭料理の基本中の基本、みたいなものですからね。時代は流れて現代においても、未だに肉じゃが神話は根強いらしく、軽く検索してみても、料理上手と思われる料理のトップに君臨しています。

…本気で?

いやだって、今の世の中には「めんつゆ」っていう有能選手がいるじゃないですか。肉と玉ねぎぶち込んでめんつゆに書いてある比率で薄めて煮込んだら出来るんですよ? 肉じゃがって言っとけばだいたいOKみたいな、素朴感出して好感度上げようとして言ってるみたいな、絶対そういう感じじゃないですか? できないほうがどうかしてるだろーと言いたくなるくらい、超絶カンタンお手軽料理だと思うんですよ。というか煮物全般全部そうですけど、和食の基本であるからこそ、便利なアイテムが世の中にたくさん出回っているわけで、それらを駆使すれば誰でも簡単に失敗せずに美味しく和食が食べられる時代になっているんです。

それでもなお料理上手と思われる料理のランキングトップの座に君臨している肉じゃがは、今やどのレシピサイトも超簡単お手軽レシピから、プロ監修の超絶ハイレベルなものまで、無数のレシピが玉石混淆していますよね。なのに今さら肉じゃがに手を出すなんて、自ら火傷しにいくようなもんです。

というわけで、せっかくなので、火傷することにしました。なぜなら僕は、今まで一度たりとも肉じゃがを作ったことがないんです。料理やってるのに、まかないとかも作るのに、いくらでも作れるタイミングがあっただろうに、ただの一度も作ることなく約半世紀ダラダラと生きてきてしまいました。ああ、何やってたんだろう僕は。とはいえ、これでも料理業界に身を置く人間として、普通に作ったら面白くないので、レシピを一切見ないで、カンだけで作ることにしました。

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材料はこんな感じ。あと調味料にはみりんと酒と砂糖が入りました。

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深めのフライパンにごま油とにんにく、輪切り唐辛子を入れて弱火で熱します。

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牛バラ(写真はたまたま家にストックしてあった焼肉用。牛丼用とかで全然OKです)を入れて炒めます。このあと煮込むので、完全に火を通さなくてもだいたい通ってれば大丈夫です。

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新じゃがだったので洗って皮はそのまま、適当な大きさに切って投入、玉ねぎは皮をむいてくし切りにして投入し、油を回す感じで軽く炒めます。

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酒、みりんを加えてアルコールを飛ばし、水とめんつゆを加えます。量は「ひたひたになる程度」。アクを取り、このまま少し煮込み、味がなじみ始めたら味見して、砂糖や醤油や塩などでお好みに調整します。ただし、この段階では「薄いなー」くらいでいいです。

蓋をして弱火で煮込んでいきます。しばらくすれば、玉ねぎの甘味や肉のうまみ、ジャガイモのでんぷんなどが溶け出して、少しずつまとまっていきます。味が少し足りないと感じても、信じて待ってあげてください。

ジャガイモに竹串(なければ菜箸でいいです)を刺してみて、スッと通れば煮込み完了です。ここで最後に味見して、足りなければ醤油や塩、砂糖、何ならめんつゆ追加で調整してください。あとはあれば青いものを入れると「らしさ」が出ます。僕は冷凍庫に「冷凍インゲン」があったので鍋に直接放り込みました。これ、スジも取ってあるんですよ。便利ですよねー。セブンイレブンで売ってます。

最後の味見の際に、もう少し甘味が欲しいと思い、普通なら砂糖を加えたりするのですが、ここに僕はバルサミコ酢を少量加えました。甘味もありますが、酸味がしっかりあるので、他の素材の甘さがより引き立つんです。イタリアンやフレンチでよく使われる調味料ですが、今や和食でも中華でも結構使われるんですよ。いろんなもの、特に肉との相性は抜群なので、隠し味に少し入れるとワンランク上の味になりますよ。ちょっと高いですが、騙されたと思って一度試してみてください。

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完成です! トップ画と一緒ですね!

うん、意外とおいしい。いけるやん。とはいえ合っているのか不安だったので、レシピサイトで確認してみたところ、作り方は本当にめちゃくちゃいっぱいあるんですね。中でも気になったのが土井善晴先生のレシピで、水を一切使わないで、野菜を主役にする肉じゃがのレシピ。さすがですね。こういうの作りたいなぁ。

作って食べてみて、調べてみてわかったのは、肉じゃがって可能性しかないってこと。家庭料理の基本中の基本であるからこそ、カンタンでありながら奥が深く、幅広く、そして懐も深い料理であるということを、心底思い知らされました。肉じゃががおいしい人は料理が上手、というのは、風潮ではなく事実として、これからも日本人の心に刻まれ続けて欲しいものです。

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