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教えすぎない教え 岡田龍生著

今回は小説ではなく、評論を紹介する。この本は履正社高校野球部監督の岡田龍生氏が執筆し、その内容は彼自身が現代の高校野球のあり方について述べる本である。

まず高校野球を知らないという方に簡単に履正社高校野球部を説明すると、2019年の夏の甲子園で全国制覇を成し遂げ東京ヤクルトスワローズの山田哲人選手やオリックス・バファローズのT岡田選手、千葉ロッテマリーンズの安田尚憲選手など多数のプロ野球選手を輩出してきた全国屈指の野球の強豪校である。

そして、この野球部の特徴は全体練習が2時間という脅威の少なさで全員が自宅通学(地方の学生は下宿)という事である。
大阪桐蔭や広島の広陵高校等多くのの野球強豪校は全寮制でかつ、全体練習が少なくても平均6時間に比べるとあまりにも少ないのだ。

しかし、この教育こそ履正社高校野球部に自主性を選手にもたらすのだと岡田氏は語る。
何故ならば、やらされている練習では選手は何も考えずひたすら目の前の作業を行うのみだが、この教育下では選手自身が

「自分には何が足りていないのか?」
「何をすべきか?」

と考える為、チーム力の底上げができるのだという。
この教育ができるのは履正社高校に集まる高校球児が最高レベルの逸材であるというのも事実だが、そのレベルに見合った新しい教育方法であるとも捉えられる。

また岡田氏は「一昔前は男の子は公園で野球をやっていたのだがそれに比べて現在はゲームなどの娯楽が増えつつあり、野球人口が減りつつある。既存の野球の教育方法では野球存続の危機さえある。野球に対する教育も変革していくべき。」
と作中で述べている。

野球だけでなく、既存の教育に我々はもう一度向き合ってみるべきなのかもしれない。

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