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焼肉研修のススメ

コロナ禍以前は新入社員に対して「焼肉研修」なるものをおこなっていました。文字通り焼肉を食べながらの研修なのですが、単なる飲み会ではありません。これは取材現場やお偉いさんとの会食での振る舞いを覚えることを目的としたものです。

なぜ焼肉が取材現場や会食での振る舞いを覚えることにつながるのか? その理由は焼肉を食べる際はやるべきことが多いからです。寿司屋はカウンターに座れば勝手に出てくるし、コースディナーは客がやることは何もありません。鉄板焼きや天ぷらも職人さんがすべてやってくれます。しかし焼肉は、特殊な焼き方をするメニュー以外は、自分で焼くのが普通であり、人の分をどう焼くか、網を換えるタイミングや皿を換えるタイミング、飲み物の注文やハンパに残った肉の対処など、考えることが多々あります。だから振る舞いの勉強になるのです。

読んでくれている皆さんを実際に焼肉研修に連れていくことはできないので、ここでは何をして、それが何の役に立つのか…ということを紹介していきたいと思います。

①注文
タン塩、ロース、ハラミ、カルビ…それぞれ上なのか特上なのか、いろいろありますね。注文は偉い人が担当する場合もあり、人数によっても違ってくるのですが、注文担当を任された際は何人前頼むかにまずは注意してください。たとえば参加者が6人だからといって、6人前頼むのは良くないことは誰でもわかりますよね。理想は一人前ずつ頼むこと。人数的に一人前では足りないとなったら最大で二人前です。三人前以上頼むと一人前の分量がわかりづらく、追加注文する際の目安がわからなくなります。だから最初のオーダーは一人前、最大二人前からするのが基本です。これは焼肉に限らず、他のお店でも同じです。いきなり多めに頼むのはメニューの実態を把握できないし、バカっぽく見えてしまうのでやめましょう。目の前の作業をする際に、先のことも見越しておくことは、とても大事なことです。

②焼き方
絶対にやってはいけないのは、人数以上の肉を網に乗せることです。たとえば4人なのに、網には肉が6枚焼けるスペースがあるからといって、6枚乗せるとどうなりますか? 2枚余ってしまいます。余った肉はこげないように別皿に移す、あるいは二人に余分に配分することになります。これってスマートではないですよね。デートでも一緒ですよ。彼女と二人なのに網一面に肉を敷き詰めてバカバカ食べさせようとしたらどう思われるか想像できますよね。学生ならガツガツ食べるのでしょうが、大人の振る舞いとして、一枚ずつゆっくり食べるのが普通です。なので肉は人数分以上に焼かないようにしましょう。

焼き方にもポイントがあります。人それぞれ好みがあるので、焼き担当が焼くのは片面まででOKです。肉を網に乗せて、ほど良いタイミングで裏返したら、「お好みのタイミングで食べてください」と促すようにしましょう。催促されるように、取り皿に肉を乗せられるのを好まない人もいるからです。話すのに夢中でなかなか肉を取らない人がいる場合は、こげる前に「お取りしますね」と一言かけて、その人に肉を配布しましょう。一人一枚ずつのペースで焼いても、ジジイになると、話す、飲むのに夢中で食べない人がいます。見極めは難しいところですが、取り皿に肉が二枚以上余る状態になっていたら、焼く枚数を減らすように調整しましょう。

ここから何を学ぶかというと、自己中心に行動するなということです。相手のことを考えて振る舞うことは、さまざまな場面で必要になってきます。

焼くのは人数分だけ

③飲み物
体質的にお酒が飲めない人は先に断っておきましょう。今の時代、無理やりお酒を勧める人はまずいません。もしもいたらそんなクソジジイとはこの日限りにすれば問題ないです。乾杯時の注文は足並みを揃えるためにみんなと同じもの(ビール)にしておきましょう。自分の好みは2杯目から。大人になったらそれくらいの配慮はして損はありません。

飲み物がなくなったら自分で頼めよ…と思うでしょうが、仕事の現場で役立つ気配りを学ぶという意味で、時々周りの飲み物を気にするようにしましょう。残り少なくなっている人がいたら「同じものでいいですか?」や「お飲み物は何にしますか?」と声をかけます。催促しているように見られると嫌だなと思ったら「(自分が)飲み物を頼みますが、何か注文ある方いますか?」と、自分をダシにオーダーを促すのも良いでしょう。ただし、お金払わないのにガンガン飲むな…と思われないさじ加減は見極めることも大事です。

④取り皿、網の交換
食べていけば、取り皿、網が汚れていきます。高級なお店では何も言わずとも店員が良きところで換えてくれますが、そうではない店の場合は自分で見極めることになります。一番の判断基準は汚れ具合です。ただ、それがわからないという場合は肉が二巡したら、あるいは三巡したら…という決まったタイミングで交換を要求しましょう。肉の種類が変わるタイミングが交換のタイミングとしては自然です。

ざっくりと焼肉の現場でやるべきことを書きましたが…読んでくれた皆さんは「超絶面倒くせー!」と思ったことでしょう。そうなんです。超絶面倒くさいんです。

もちろん、友だち同士でワイワイやるときは細かいことは気にせず楽しむのが正解です。上記したことは、あくまでも大人としての振る舞い、仕事での気配り、距離感などを学ぶ際に知っておこう…ということなので、誤解のないようにお願いします。

仕事は能力ももちろん大事ですが、人に好かれるのは気配りができる人です。言われないと何もできない、言われるまで気づかない…ではなく、周囲に目を配り、誰よりも早く異変に気づく、先回りした行動ができる人は重宝されます。周りを見る、適切な判断をする、相手を不快にさせない言葉のチョイス…ということを焼肉屋での振る舞いで学ぶのが焼肉屋研修なのです。

友だちと焼肉に行くときでも上記したような振る舞いができると、スマートでみんなが何も気にせず楽しめる環境をつくれます。「俺が気配りするんじゃなくて、俺に気配りしてくれよ」…という気質の方は、仕事もできるようにならないし、モテないので、早めに気づきましょう。

今回の話をまとめると、自己中はダメだよということです。自分に気をつかえ!というなら、まずは自分から周りに気をつかいましょう。

ちなみに紹介した肉の頼み方、肉の焼き方は某ベテランレスラーと高級焼肉に行った際に教わったことです。肉を一枚網に乗せて片面焼いて裏返した後に「自分の好きなタイミングで食べて」とサラッと言う姿に、カッケー!と惚れそうになりました。

おわり。

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