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カクテルブックができるまで②

9月29日に人気バーテンダーでユーチューバーとしても活躍するマスターイエツネさん著『神カクテル300』がKADOKAWAより発売されます。カクテルブックができるまでの話第二弾、今回は撮影の話をお届けします。

撮影は今治在住のイエツネさんに上京してもらい、横浜のダイニングバー「Newjack」さんをお借りして5日間の撮影へと入っていきました。

過去に発売されているカクテルブックはスタジオでライティングをして、カクテルが見やすいように黒ボックスで囲って撮影するのが一般的です。それが一番カクテルがキレイに見えるのですが、どの本も同じに見えて、つまらないなと感じていました。

そこで今回は、実際にイエツネさんがお店でお客様に提供するのと同じ形でカクテルをつくり、バーの雰囲気を生かして撮影することにしました。これは実際に読者の方が、バーで注文したときと同じ見え方を意識したものです。

テーマごとに背景やテーブル、ライティングを変えながら撮影したため、固定の撮影ポジションをつくって流れ作業で撮るよりも何倍も時間がかかっています。過去にあるものと同じものをつくってもまったく楽しくないし、イエツネさんらしさを出したかったので、カメラマンにも面倒なことに協力してもらいました。

この撮影で大変だったのは、バーカウンターから撮影場所へのグラスの移動です。キレイに飾っているカクテルや、ショットグラスになみなみと注がれたカクテルを運ぶ際、崩れたり、こぼれたりしないよう全集中の呼吸が必要になります。崩れてしまったり、変な混ざり方をしてしまったりしたら、やり直し。大変ではありましたが、ひと手間かけた分だけ、写真の出来は申し分ないと思っています。

とくに撮影に時間を要したのは、ブルー・ブレイザーというカクテルと、プースカフェというカクテルです。

ブルー・ブレイザーはアルコール度数が高いウイスキーを使っていて、炎の演出が入るカクテルです。その炎をしっかり写真におさめるため、どのくらい炎が出れば写真でしっかり見えるのか、テストを繰り返しました。その甲斐あって、決定的瞬間をおさめることができました。

プースカフェはカラフルな複数のお酒を使っていて、それらが層になっている映えカクテルです。この層になっているキレイな色合いを、お客様がバーで見ているのと同じように写真で表現したかったため、ライティングや背景の調節を繰り返しました。その出来栄えは、ぜひ誌面で見てもらいたいと思います。

次々と撮影していくため、写真のようにどんどんグラスも溜まっていき、カラフルなカクテルが並ぶ絵は壮観でした。

全部を試飲したいところでしたが、撮影の後には帰社して終電まで通常勤務もあったため断念。ただ、一部気になったものは一口だけ試飲させてもらいました。これはのちに取材の際にテイストを知っておくメリットがある…というのは、後付けで、ただ飲みたかっただけというのが、実際のところです。

横浜での撮影は昼休憩が入る長時間のため、昼食にもこだわりました。外に出て食べるのは時間ロスになるため、ほどよい時間にお弁当が届くように手配します。撮影スケジュールを見ながら、今日は丼ものにして、早めに食べられたほうがいい、イエツネさんが知り合いと会食があった翌日はあっさりめの和風弁当、また、横浜なら崎陽軒のシウマイ弁当はどこかで入れたい…というふうにラインナップを考えました。

こんなことは雑用係にやらせればいい仕事かもしれませんが、細部にまで気を配るのであれば自分でやるべき。とにかく、撮影に関わるすべての人に気持ち良く仕事をしてもらうのが、編集者の務めです。イエツネさんは毎日お弁当にも感想をくれたので、こだわって良かったと思えました。

そして、横浜で280杯撮影したのち、今治にあるイエツネさんのお店「Anchor」でも、オリジナルカクテルの撮影をしました。こちらは液体窒素カクテルをはじめ、装備や特別なグラスがないとできないオリジナルのため、お店まで行かないと撮影できなかったからです。かなり面白く、見映えもいいカクテルばかりで、他のカクテルブックとは、確実に差別化できたと思っています。

今回の取材、制作を通じて、本当にカクテルの奥深さやバーの楽しさを知ることができました。もはや私はただの酒好きではありません。

というわけで、次回はお酒に関する豆知識的な話を書いていきたいと思います。誰もうんちくを聞いてくれないので勝手に書きます!

おわり。

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