見出し画像

なにもない…ことはない

近頃、調子が悪かった。原因は分からない。目の疲れからか、更年期の症状か、将又、霊の仕業なのか…。意外に霊の仕業なのかもしれない…。
いつだったか、怪しげだけど的確な診断をしてくれる町医者先生に
「何かに憑りつかれたみたいに…。」
と、冗談のつもりで言ったら、首の後ろあたりを摩りながら、
「憑りつかれてたら、このあたりが…な。ま、大丈夫や。」
と結構真面目に答えられて、ビビってしまったことがある。いや、先生、そっちも診れるんだ…と恐れおののいた。首の後ろあたりから自律神経に悪さをするんだとか言っていた。近頃の症状は正しく!そんなだったけど、自律神経って本当にいろんな要素から調子が崩れるから、本当のところ、何が何なのか分からない。私には目に見えないものが見える特技はないし、憑いていたとしても気づかないだろう。
だけど、一度そう言うことを聞かされてしまうと、
「これは、もしや…?」
と疑って、ひとり背後を怖がっては、
「どっか行ってもらえます?」
とかつぶやいてみたりする。

そんなこんなで、キチンと続けていた、毎朝の日課となっているダンスダイエットを数日休んでいたら、気がますます滅入ってしまった。やっぱり、体を動かすとポジティブになるし、その逆はネガティブを生むだな。
「自分には何も無い。ない。ナイ。ない。」
無いことばっかり考えて、『何も無いゾーン』に落ちていく。それで、何でだか昔の切ない片想いを思い出した。
何でそこへ行くんだ?と思ったけど、喪失感みたいな感覚が似ているのかもしれない。片思いだから一度も想い人の胸の中に入り込めたこともなければ、瞳を一人占めできたこともない。それなのに、喪失感とはおかしい。恋する人の横にはいつだって自分とは真逆の人がいて、
「負けた…。」
って思わされた。いつも完敗だった。女の子特有の…今で言うところの『マウンティング』にいつも負けた。そもそも、同じ土俵にすら立てなかった。『マウンティング』に立ち向かえるほどの『アイテム』を持ち合わせていなかった。何も無かったんだ。
『何も無いゾーン』に入ってしまうと、優越感で満たされた彼女たちの顔をふわっと思い出す。嫌だね~。憎たらしいんだけど、彼女たちの自分で掴み取る強さが羨ましかったな。
でも、何だってあんなにも、自分にはそぐわない人にいつだって恋したんだろう。それが恋というものなのか…。
沸々嫌な感覚を思い出して、どっぷりと落ち込んでみた。こうなったら、トコトン落ち込んだやるんだ。物悲しい秋ですし。もう風は冬の様ですし、落ち込むには時期がいい。で、いざ心を決めて、
「自分には何も無い。ない。ナイ。」
ってやって、頭の中で駄々こねていると、ふと思い出された。
「おばあさんにこれちょうだい?」
祖母が私が作ったらしきものを、えらく気に入ってくれているひとこまだった。ものすごく優しい笑顔だった。
「何にも無くは…ないか…。」
と背筋を伸ばした。おばあちゃんに叱られた気がしたのだ。
「シャーッ!」
と小さく息を吐いた。
毎日毎日、上がったり下がったり、頭の中も心の中も騒がしい。
やっぱり、何モノか憑いてたな!
油断もスキもないヤツだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?