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【#59】最後の晩餐

食欲など
どこにもないくらいに消え去っていた。

何も考える事すら出来ない。
でもやる事はしなければならなかった。

数日経って司法解剖の結果が出た。

書斎本棚に結束バンドを掛け
これを頸部に巡らせ縊首。

要は首吊り自殺だった。

驚くべきは死亡推定時刻。
7月4日頃。

わたしが発見した3日前には
すでに死んでいたらしい。

わたしはその日何をしていたかを思い出した。

いつも通り学校に通い
帰りに展覧会に行った。

『シリアルキラー展』
連続殺人を犯した人間が作ったアートが
展示してある企画展。

人殺しの作品を見ているときには
すでに死んでいたのだろうか。

家に帰り夕食を食べる。
父は毎日夕飯を用意してくれていた。
それを見つけてキッチンの一角で食べる。
忙しいわたしのルーティーンになっていた。

自炊の時もあれば買ってきた物のときも。
その日置いてあったのは
ケンタッキーフライドチキン。

チキンを貪り骨だけになった。

食べている頃にはもう死んでいたのだろう。

なぜチキンだったのか。
なにか意味があったのかはわからない。

その日以来
数年間はケンタッキーが食べれなくなった。
いまは気持ちが弱いときに思い出して食べる。

わたしが父からもらった最後の晩餐。

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