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【#63】帰郷

叔父が青森に帰ると同時に
お墓に埋める為
わたしは父の遺骨を持ってついていった。

青森の家に帰るのは毎回父と一緒だった。
今回が一緒に帰る最後となった。

家から上野駅まで約30分。
そこから新幹線で新青森まで約3時間半。

その間ずっと箱に収まった父を抱えていた。

とても隠せる大きさではなく
他者が見てもなにかわかる。

近所を歩く人。
電車に乗る人。
新幹線ですれ違う人。

全ての人の目がとても冷たく感じた。
やっと帰れるね。
4時間寝ることなく優しく抱き続けた。

時間が経ち父の実家に到着した。
父の母である祖母は淡々と出迎えてくれた。

事前に叔父と話し合い
祖母には事実を話さないことになった。

祖母にはショックを与える必要はないとの
判断だった。

わたしが家に帰ると父は心臓麻痺で他界した。
そう伝えた。

祖母はいつもと変わらず接してくれた。
大変だったねと励ましてもくれた。

夜。
わたしは仏壇のある部屋の襖挟んで隣で寝た。

夜遅く隣の部屋でゴソゴソと物音が聞こえた。
そのあと仏壇で手を合わせたあと
啜り泣いているような音。

祖母だ。
わたしの前では見せなかった姿を見せていた。

直接姿は見ていないが音だけでわかる。

心が苦しくなった。
わたしのせいで祖母が悲しんでいる。

わたしが行動を起こせていれば
こうはならなかったのだろうと。

わたしはここから自然と
祖母に負い目を感じるようになった。

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