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【#73】息抜き

2016年、夏。

学校の課題や家庭の整理に
時間を要していた時に息抜きとして
テレビ局での派遣バイトをすることにした。

昨年に比べて
当然だが働いた日数は少なかった。
しかし様々な出会いが
大きな変化をもたらした。

担当した場所では昨年と同様に女性が多く
わたしとエリア担当の方以外の
6、7人が全て女性だった。

皆年上ということもあって
わたしとしてはとても仕事がしやすかった。

おっとりとした方やガツガツしている方
ずっと休憩所で勉強している方など
多種多様な方ばかりだった。

中でもあるひとりの女性と仲良くなった。
その方はわたしよりも7歳ほど年上で
幼稚園の先生を目指していた。

はじめは同じポジションで
仕事をして話すようになり
段々とふざけ合うようになった。

年上のお姉さんが
からかってくるような感じだ。

わたしが仕事が休みでも
わざわざお姉さんに差し入れを買って
持っていくほど憧れもありつつ
とても可愛がってもらっていた。

ある日の仕事終わり。
わたしはお姉さんに相談を受けた。

『幼稚園の先生になりたいんだけど
 私なれるかな?』

わたしも子供が好きで
先生は将来の選択肢の一つに
考えたことがあった。

でも今のわたしは将来のことなんて
一切考えられなかった。

父が死に、就活する時間と余裕が
なくなってしまったからだ。

わたしはお姉さんと関わっていて思ったことをそのまま伝えた。

『お姉さんならなれます。
 だってわたしの先生がお姉さんなら
 ものすごく嬉しいですもん。
 わたしも先生になるの憧れてたんですけど
 わたしの代わりになってください』

お姉さんはうっすら
目を滲ませながら頑張るねと言った。

その後お姉さんがどうなったのかは知らない。

でもお姉さんのおかげでわたしも
今するべきことを頑張らなきゃと思えた。

当時は言えなかったけど
もう伝わらないと思うけど

本当にありがとう、お姉さん。

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