見出し画像

「移住が結婚なら、関係人口は恋愛」なのかもしれない。

先日「関係人口とつくる地域の未来」というシンポジウムにパネリストとして参加した。

昨年の春ぐらいからぼんやりワードだった「関係人口」について有識者の皆さんとコミュニケーションを続け、そしてこのシンポジウムが近づく中で「いったい関係人口とはなんぞや?」とひとり脳内ディスカッションも重ねた。現時点で私が出した結論は「移住が結婚なら、関係人口は恋愛」だ。

Twitterにもメモとして投稿したのだけど、忘れそうだから書き留めておこうと思う。


関係人口というキーワードをおさらい

「関係人口」は、地域界隈でいま盛り上がっているキーワードだ。ただ一般に広くは浸透していないものゆえ、簡単に言葉の紹介からはじめたい。

観光で地域にいく人を「交流人口」と呼ぶ。かたやその地域に住む(住民票をおく)人を「定住人口」と呼ぶ。その間にいる人たちをまるっと表現するのが「関係人口」だ。

たとえば、その地域に観光ではなく定期的に訪問する人、そのまちの出身の人、ふるさと納税をしている人、その地域の企業などに投資をしている人など。

「観光ではなく」と言っても定義が曖昧だ。その街から自分が楽しみや学びを享受するマインドから、自分の行為によって街に何かを生み出したい、残したいというマインドに変わった時、それが交流人口から関係人口にスイッチした瞬間と私は考えている。街からただ享受するテイカー(Taker)から与える(Giver)に変わることとも言えようか。

極端かもしれないが例をあげると、行った先でおばあちゃんの手作りの品を土産物として買ったとする。可愛い!思い出に持って帰ろう!これは観光の一貫だ。これは素敵な品だから、おばあちゃんにつくり続けて欲しいからひとつ私が買おう。という気持ちが芽生えるか。だと思っている。

また、先日ポートランドから日本に家族を残して単身帰国したとき、私は「ただいま」を言うのはポートランドなんだと実感をした。つまりそこにいる誰かへの想いが街との関係性を決める。街を思い出したときに、想いを馳せる人の数や想いの深さは、街との関係性の深度を図るひとつの指標にはなるかもしれないとも思う。

なぜ今、関係人口なのか。

第2期まち ひと しごと創生総合戦略において「関係人口」がフォーカスされていることが、今注目が集まっている理由のひとつにある。

一方、2年ほど前から移住の事業をやっている私自身も、その立ち上げ時に、人口減のなかで定住者を爆増するなんて事は人口の取り合いとなり現実的ではないこと、またやはり移住はハードルが高く、誰でもえいや!でできるものではないことは事実として受け止めている。だから、その事業では、関係人口の数値化と可視化を事業の第2のテーマに掲げており、「関係人口」という言葉はさておき、この概念は地域にとって大事なことだと捉えている。

移住は地域との結婚みたいなもの。

移住はやはり一大事であり、家族(親、配偶者、子ども)の同意も必要になるだろうし、仕事、住まいとゼロからのスタートになることが多い。結婚の際に親戚一同に挨拶をするかのごとく、移住先の町内会をはじめ、多くの人への挨拶も必要な出来事だ。受け入れる側も人口が少ない地域であればあるほど、歓迎ムードも強くなり、チェックとは言わないまでもその経歴などは気になるところとなる。まさに結婚だ。

もちろん、婚姻関係においても人生の選択のひとつとして終了を選ぶこともあるように、移住においても必ずしも定住と結びつかないと捉える地域も増えているようには思う。一度移住して都市部に戻る。あるいは他の地域にまた移住する人もおそらく増えてはいる。

また二拠点、他拠点といったスタイルを選ぶ人も増えている。が、多妻多夫がいろいろな意味で難しいように、他拠点を選択できる人も仕事や家族の構成に限りがあり、多くの人は住む場所はひとつに選び決めなければならないのが現実だ。だから結婚ぐらいのハードルはあると考える。でも結婚を決めたからには、それなりの覚悟もあり、移住者する側が地域にだいぶ歩み寄ってくるはずだ。だから移住施策の場合には、地域は地域のやり方で待っていても成立することも多い。

移住が結婚なら、関係人口は恋愛。

ここからが本題。関係人口である相手との関係のつくり方は恋愛だと思うとスムーズではないだろうか?という話だ。なんとなく似ていそうなシチュエーションを列挙してみる。

恋愛を継続して、お互いに良いタイミングが来たら、結婚(移住)に至ることもある。
一方的に盛り上がりプロポーズのタイミング(移住を促す)を見誤ると、気まずい関係となることもある。
もしかしたら別の人が現れて、目移りしたり、違う人と結婚したりすることもある。
恋愛期間中は特に、相手には、その人の暮らしと仕事と環境がある。LINEでメッセージして既読になったからと言って、なんですぐに返事しないのか、と言われても忙しいときだってあるし!と思うだろう。
盛り上がりのバロメーターも必ずしも一致しないゆえ、相手への思いやりが大事(自分よがりになると、たいていは良い結果を招かない)。
そして恋愛対象と結婚対象はちょっと違うと考える人も一定数いるため、恋愛したから結婚だ!、と思わない方が良かったりもする。

関係人口は恋愛。だとすると、移住促進とは異なり、地域側が少し歩み寄って、相手に合わせること、焦らないことがこれからとても大切になってくるのではないかと思うのだ。

結婚だけがゴールではないように、良い関係の気づき方はいろいろある。元カノ(元カレ)が紹介してくれた人がとても相性が良かったなんてこともあるだろうし。

移住が結婚なら、関係人口は恋愛。

結果を急がず、駆け引きや、その状況自体を一緒に楽しめるような関係が作れると、街にとってハッピーな何かが生まれてくるのではないかと思う今日この頃だ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?