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カーボンオフセットとは何か?企業の環境対策に有効なのかを再考したい。

ここ数年、企業のCO2排出量削減、排出量ゼロを目指す取り組みの中で、決まって触れられるキーワードが「カーボンオフセット」だ。このカーボンオフセットに関するニュースや、オフセットのためにCO2排出量を取引する「カーボンクレジット市場」のニュースが増えたように感じる。ゆえに、このカーボンオフセットについて考えてみたい。

※多くのプロフェッショナルによる論考が巷に溢れているため、この記事は企業広報にとって、わかりやすいように解説することを第1の目的においています(わかりづらければ補足するのでコメントください)。

カーボンオフセットとは何か。


再生可能エネルギーにオフィスの使用電力を切り替えたり、社用車を電気自動車に変えたりと、自前で実施できるCO2排出の削減はいくつかある。それでも、製造や物流などを事業としていると、排出しているCO2の量が多く、相殺してCO2排出ゼロ(カーボンニュートラル、ネットゼロなどと表現されることが多い)を実現することは、なかなか難しい。排出している事業を止めるわけにもいかない、という現実があるからだ。

そこで登場するのが、カーボンオフセットの考え方。「まだまだCO2の排出量を削減できますよー」あるいは「CO2削減のための事業をしています!」(植林やCO2吸収技術など)という組織団体に対して、資金を提供し、その資金を活用して削減した排出量を、自分たちの削減量として見なすというものだ。

つまり、CO2を削減したい企業Bが、植林事業を行う団体Aに対して、1万ドルを提供したとする。その1万ドルを使って、団体Aは植林をする。それで10t-CO2(二酸化炭素トンと呼ぶ)を削減したとする。その10t-CO2は資金を提供した企業Bが削減したこととみなされる。

お金で削減量を買い取っていると言える。
いかにも資本主義的な、CO2の排出量取引だとは思う。

CO2を取引できる「カーボンクレジット市場」の存在

CO2排出量の削減に関しては、国際間で目標が決められているわけなので、企業間で取引できるとはいっても、どことでも自由取引できるわけではない。確かに、「私100t-CO2削減しました。買ってください。10万円で!」という人がいてもその信憑性はないので、誰も買わないし、それが削減量として認められたら、困る。

現在は、オフセット・クレジット(J-VER)や「J-クレジット」などの認証機関で認証を受けた団体組織と認証されたCO2削減量のみが取引できることになっている。

カーボンクレジットの取引は、もともとは国際間で行われたいた

企業を例にして話をしてきたが、この取引は、国同士で行う考え方が先に登
場した。COP3(1997年)で生まれた「京都議定書」からスタートする。

COPの話はこちらで解説しているので、見てほしい。

このCOP3の京都議定書には「京都メカニズム」と呼ばれる、限界がある排出量の削減を考慮し、排出しすぎた分、他の地域で削減に成功した人がその削減量に付加価値をつけて売るという仕組みが、登場した。そして、ここでは国単位の取引に限定されていた。

つまり、まだまだ経済的、工業的発展が必要な発展途上国では、発展を優先したい。環境を犠牲にして発展してきた先進国が今になって辞めよう、削減しよう!と言い出し、先進国にもそれを課せば、環境より発展しなければという先進国が納得できない気持ちも、そりゃごもっともである。ここ近年のCOPでは「南北問題」と呼ばれ、この発展途上国(南)と先進国(北)とのCO2削減に対する取り組みに対する議論が白熱し、まあそこに終始してしまっている傾向もある。

直近のCOP27に関しては以下が参考になる。

話を戻すと、すでにCO2削減を始めている先進国よりも、対策していない分、CO2も削減しやすい。かつ、それを推し進めるなら資金的な潤いも欲しい。だとしたら、先進国がお金を出して、CO2削減のアクションを肩代わりしてもらおう、というものだ。

この国際間の取引が、企業でも近年行われるようになっているということになる。

カーボンオフセットで事足りるのか?


悪いことではなく理にかなっている手法だとも思うが、盤上での数字遊びのような気もしなくもない。

ESG投資なども盛んになっているし、CO2削減の報告義務も課されている以上、カーボンオフセットはやってることを示しやすいし、使いやすいツールになりつつあるように思う。が、これで本当に世界のCO2が削減されているのか(目標に向かって)というと、疑問は残る。

CO2削減をしていることをPRすることが目標なのではない。
本質的な地球の温暖化をなんとかするという目標を忘れてはいけない。

そうした時に、カーボンオフセットよりも、もっと主体的にやることはきっとある。同じ資金を投じるなら、ちょっと面倒でも、より本質的で有効なところに投じることが必要になると考えている。


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