見出し画像

服を作るひとの「街ゆくひとの服観察」実は絶賛テスト中!

いつも忘れそうになるのだけれど、私は服が作れる。両親が婦人服の縫製工場を経営していて、物心ついた頃には工業用ミシンを踏んで、工場のラインを手伝っていた。

何百枚ものポケット布の山、前身頃の山、後身頃の山、裏地の山、ベルト芯の山、型紙を毎日毎日追いかけて育った。

膨大な枚数と工程の繰り返しの中で、私は「平面(布)を立体化する方法」を身に着けた。自分ができることを忘れてしまうほどに、体にしみこんで理解した。

私は服が作れる。

そんな私は、「街ゆくひとの服観察」が大好きだ。

たぶん、少しでも服装やファッションに興味がある人なら、誰でも好きなのだと思う。自分や家族に似合う服を探す楽しみは、なかなか奥深い。

でも、たぶん、

私がしている「服観察」は違う。

多くのひとがする「服観察」は、着るとか着せるためのもの。

私は「服を分解」しているのだ。分解して何をしているかというと、「テスト」

テスト問題はひとつだけ。「見た服の作り方を解明しなさい」

服を作るひとが「街ゆくひとの服観察」をする時、それは「服の作り方のおさらいとテスト」。

例えばこんなことをやっている。

基本問題①スカート

ウエストにゴムが入っているか?ゴムの伸縮分の布幅を、ギャザー分から割り出す。ベルト芯でタイトに作られているなら、型紙に分解する。

縫い目から何枚の型紙で仕立てているのか?解明する。フレアの広がりで、布の分量や、型紙の広がりの角度を想像して型紙に組み立てる。

このプリーツ(ひだ)はどのくらいの布が使われているか?タイトに見せてひとの動きをカバーし、しかも邪魔しないプリーツ幅はどのくらい?とか。

基本問題②シャツ

袖の形から、型紙の形を想像する。いったんすぼまっている形ならどんな型紙になるか?フレア袖なら布の分量を考える。最近は胴から続きの袖も多いので、肩からの落ち具合で、型紙の形を思い描いている。

ウエストの絞りと広がりは縫い込んでいるのか?別布を足しているのか?

ここまでは基本形に近い、シンプルな服でやっていること。ところがワクワクすることに、最近複雑な形、アシンメトリーの服、ポケットやステッチが複雑な服も多い。

これらの服はどう作られているのか?ぱっと見ではわからないことも多くて、頭の中で型紙を、ああでもない、こうでもないとひねくり返すことになる。これならできる!という型紙ができた(頭の中で)時には、結構ガッツポーズ。

気づくと、買い物そっちのけで近くのベンチに座り、頭の中で描いては消して、切っては貼り合わせ…とやっている。平面を立体にするのは、人類の知恵と挑戦の積み重ね。そう簡単に解き明かせるものではない。

先人の知恵と挑戦の次の一歩に挑む楽しさは病みつきになる。

具体的にはこんなことをやっている(頭の中でだけど)

応用問題①ちょっと変わった形の服

基本形を大きく離れている服もたまに見かける。それに最近増えているアシンメトリーの服も解き明かすのはおもしろい。

縫い目をたどって型紙の形を掴むのだけれど、これがなかなか難敵。基本の型紙の形とは全然違うのだけれど、作りあがる形は似たようなものになっているわけだ。これをどうにか型紙に落とし込めると、ほんとうに嬉しい。

応用問題②付属品が多い服

これは型紙を作るのもやるけれど、主に縫い合わせの順番を解き明かしている。

ステッチと別布の切り替えとポケットが重なっているとか、ポケットの蓋に別布があしらわれているとか、ステッチが複雑だとか。これらをどんな順番で縫ったらこのデザインになるのか?をうんうんと考える。

応用問題③もうちょっとここを!という服

これは服と着ているひとの組み合わせの問題で、もうちょっとズボンの腰回りがすっきりしていたらほっそり見えるのになあとか、シャツのウエスト周りが絞られていたら、背が高く見えるのになあとか。

これらの問題を、型紙をどういじればそのひとをもっと素敵に見せられる形になるのか?を考えている。形や型紙だけでなくて、色や柄、手触りや落ち感など布を変えてみたらどうか?とか。大きなお世話!と思うけれど、これはなかなか楽しい問題。

一体ひとの服を捕まえて何をやって(考えて)いるんだろう?と、自分でも思うけれど、気になる服、素敵な服を見つけるとついつい買い物そっちのけ。やめられない。

私が服を作れるようになった過程はこちら↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?