放浪の画家 ピロスマニ(※2015年のメモから)
ピロスマニは、ジョージアの画家。
――画家は孤独を愛した。
ただ、人と生きていく上で折り合いをつけられなくて苦しんだのだと思う。自分ともそうだが他人とも世間とも社会とも文化人画壇とも。
彼にはなぜ皆がいっせいに彼の絵の価値を疑い叩き出したのか理解できない。
そして絵に価値や批評を付けることも。
動物の絵が新聞でコケにされたといっても。
見るものを見つめる、絵画の動物たちの目は、表情は、昨日と今日とでなにも変わらないのだ。
変わるのは他人のこころ。
画家には、絵を描く人にも意地悪がいることを理解できないのだ。
なぜ足を引っ張る?
みんなどんどん描けばいい。それだけだ、と……
乗り合い馬車の赤子に乳を吸わせる女。愛した踊り子。
結婚するかもしれなかった少女は何年かのちに、子だくさんになって再びすれ違う。
途切れず繰り返す村の習俗。
男たちの歌。
女たちの伴奏と踊り。
銀がきらめく豪奢なサモワールはごくふつうの家庭にも並ぶ。
きれいな色合いのワイン。
悪い酒。
寒さと老いと貧乏。
人もそっけない。
そしてやって来る復活祭は――
復活したのはキリストだけではない。
ピロスマニもまた、復活したのだろう。
彼は二度と忘れられることはなかった。
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