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年末調整と総裁選

先週末の台風は結局関東には辿りつきませんでしたが、台風が去った今週からは一気に虫の声が聞こえるようになりました。まだかすかにですが、秋の気配を感じます。夏が終わるとなると寂しいなと思ったりもしますが、一方でまだまだ暑い日中に外を歩くと、いやいや早く夏終わってと思う自分もいます。人間って我儘ですね、笑。

この時期に年末調整?

最近年末調整が話題になっているようです。確かに夏が終わると気になり始めるのが年末調整。とはいえ、例年計画的な企業でも準備を始めるのは10月ぐらいです。さすがに年末調整を話題にするには早すぎます。

実は今月末に予定されている自民党の総裁選に向けて、立候補者の一人である河野デジタル大臣が、年末調整の廃止を公約として表明したとのこと。大元は大臣のX(旧Twitter)での発信。

給与などの所得が発生するたびに、事業者はそのデジタル情報を国の一本化された窓口機関に送信します。税務署、年金機構、自治体など、税と保険料の情報が必要な機関には、窓口機関から情報を連携します。 窓口機関はマイナンバーを使って個人の所得、保険料、所得税、地方税を名寄せして、マイナポータルに表示すると同時に、e-TAX、eL-TAXに自動入力していきます。移行期間を経たうえで年末調整を廃止して、すべての国民に確定申告をしていただきます。雑所得の経費だけ手入力が必要になりますが、その他の入力、計算は自動でできるので、個人の確定申告がほとんど手間要らずで出来るようになります。

河野大臣のXアカウント

こ、これは…。全く同じではありませんが、骨子としては社会的システムデジタル化研究会(Born Digital研究会、BD研究会)が2021年6月に発表した「デジタル化による年末調整の新しいあり方に向けた提言」とほぼ同じです。この提言では、デジタルを前提として年末調整業務をゼロから見直し、社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図るべきであると提言しました。

本来は、給与所得者にとって確定申告の簡易版に相当する年末調整が、見積もりの必要性、ルールの複雑化、事業者への重い負担により、その実施・運用が困難さを増している。従業員による申告書作成の電子化、保険料控除証明書の電子化なども始まったものの、紙を前提とした当初の業務から本質的には変わっていない。デジタルを前提として年末調整業務をゼロから見直し、社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図るべきである。
新たな年末調整の基本的な考え方は、1.発生源でのデジタル化、2.原始データのリアルタイムでの収集、3.一貫したデジタルデータとしての取り扱い、4.必要に応じた処理の主体の見直し、そして、確定した事実ベースの5つのポイントである。

デジタル化による年末調整の新しいあり方に向けた提言(BD研究会)

この提言では、年末調整の完全廃止にまでは踏み込んでいませんが、河野大臣の公約のように、原始データをデジタルでリアルタイムに収集することにより、年末調整の負荷を実質的になくすことを提唱しています。なお河野大臣の公約では皆が確定申告が必要になり、税務署がパンクするという批判の声もあるようですが、現在年末調整で完了している方は、内容を確認して「OK」というボタンをクリックするだけなので、負担になるようなものではありませんし、税務署がパンクすることはありません(ちなみに、BD研究会では、このプロセスを年末調整という名称で残していますが、実質的には同じことです)。

この提言は平井卓也デジタル改革担当大臣(当時)に対して行ったものですが、平井大臣にもぜひやりましょうと言っていただきました。またその後複数名の議員にもご説明し、皆さまに賛同いただきました。今回、河野大臣が提言されたように「真に支援を必要としている人を正確に把握し、迅速に支援に繋げるためのデジタルセーフティネット」が必要であるという問題意識から、複数の議員が集まっての勉強会が開催され、その勉強会でも色々と発信させていただきました。当時、財務省ではかなりの方が「デジタル化による年末調整の新しいあり方に向けた提言」を一字一句熟読されていたとか、笑。

しかし残念ながらこの提言が具体化することはなく、ここまで来てしまいました。私自身が弥生の社長を退任し、活動してこなかったのも反省材料です。

総裁選

ご承知のように今月末の総裁選に向け、かつてないほどの盛り上がりを見せています。既に5名が立候補を表明しており、立候補に意欲を示している方も含めると10名近くになるのではないかと言われています(少なくとも過去最多になるのは確実)。なおかつ候補者も40代から70代まで、女性候補も複数名とかなり多彩な顔ぶれになりそうです。

これだけの混戦の中では、一回の投票で過半数を取ることはなかなか難しそうです。とはいえ、初回投票で上位2位に入らないと決選投票に進むことはできません。初回投票は議員票(367票)と党員票(367票)で決まるということで、これまで以上に党員票の動向がカギになりそうです。結果的に、昔ながらの票集めではなく、公約を発表して競い合うというようになっているのはとても素晴らしいことだと思います。

8月上旬にAI制度研究会の初回会合が総理大臣官邸で開催されたとお話ししました。岸田総理大臣も参加され、会合終了時には、研究会メンバー一人一人に握手をしてくださいました。岸田総理大臣が今回の総裁選への不出馬を表明されたのが8/14のことですから、おそらくこの時点ではもう決めており、胸に秘めた状態だったのではないかと想像します。

岸田総理大臣の功績については色々な見方があるかと思いますが、不出馬表明によって、これまでになく活発な政策の議論がなされるきっかけを作ったことは間違いないのではないでしょうか。

改めて社会のデジタル化に向けて

今回の自民党総裁戦でどなたが勝者となり、次の自民党総裁であり、総理大臣になられるのかはなかなか見通せません。しかし、この総裁選が、活発な政策議論につながり、それが議論で終わるのではなく、次期総理大臣のリーダーシップのもとで、実行に移されることを期待しています。

日本は少子高齢化が顕著な課題先進国。その課題を解消するためには、デジタルを徹底的に活用し、包摂的でありながら効率的な社会を作るしかありません。政治のリーダーシップに期待をしつつも、民間も声を上げて活動を続けていくことが必要だと思います。

社会的システムデジタル化研究会は現在活動休止状態ですが、改めて何ができるか考えたいと思います。


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