デンジャラス メモリーズ
慢性的運動不足が悩ましい中年ライフを謳歌しております私も、子どもの頃は大変活発で、おてんばというかボーイッシュというか男勝りというか、ちょっぴり野生児というか…でした。
雪の積もった急勾配の斜面の細い小径の崖っぷちギリギリコーナーをソリで滑り下りてみたり、ヤゴ(トンボの幼虫)に、おたまじゃくしを与えて、ヤゴがおたまじゃくしを襲う様をひたすら見てたり、
住宅の二階から飛び降りるくらいの高さのある段差の、田んぼから田んぼへ、ドーン!ドーン!とひたすら飛び降りてみたり、子どもだけで落ち葉を集めて焚き火して、色んな物を焼いてみたり。。。余罪は色々;
今なら問題行動としてどっかに通報されそうな、荒っぽい遊び。大抵は大人に見つかって怒鳴られたり、「火遊びなんかしよったら一生おねしょするで!」と(科学的根拠には乏しいが相当怖い迷信で;)脅されたりみたいなバチは当たってましたけども。
でも、時にはファンタジーな遊びも。
大きな虹を見て、「あの虹の根っこへ行ってみよう!と、ずっと走ってみたり。
まぁ、いくら走ってもたどり着けるわけもなく、すぐ飽きるんですけどね。
走って行けるかどうか考えたらわかりそうなもんですが、子どもの世界っていうんでしょうか、理屈じゃないんですよね。
ある日、近所のおばちゃんが大声で「イヤーーー!」と叫びながら棒のようなもので地面を叩いてる場面に遭遇しました。
「おばちゃん、どしたん?」
「あっ!かよちゃん!来たらだめよ!危ないけぇ!」…庭に現れたマムシに不意をつかれたのか、おばちゃんは若干興奮気味。
そっと近づき、見ると、50〜60cmくらいのマムシが血を流しのたうち回っていました。
おばちゃんの武器は、竹の柄の先に四角いごっついブラシがついた、今風に言えば「デッキブラシ」。町内会でドブ掃除の時に使ってたやつ。そのごっついので、ゴン!ゴン!と容赦なし。叩き潰さんばかりです。
見ていられなくなった私、「も、もう大丈夫じゃない?すごい弱ってきとるし」
するとおばちゃんも我に返ったのか、手を止め、しかし次はホースを出してきて、その場にジャーッっと水をかけ始めました。
惨めなマムシはボロボロ。かろうじて生きてはいますが、もう勘弁してください;といった風情です。その上、強い圧で水をかけられ、マムシはその場から逃れようとジリジリ動き始めました。
私は、徐々におばちゃんの顔から鬼の形相が薄れるのを見計らい、
「また悪さしたらいけんけぇ、ずっと向こうへ持って行って放してくるね」と告げ、(弱って るとはいえさすがに血でドロドロの毒蛇を手で持つことは躊躇われたので)そこらの棒切れに引っ掛けるようにしてそうっと持ち上げ、おばちゃんの庭からマム シを連れ出しました。
さもないと、この瀕死のマムシはアスファルトの道路をヨロヨロと極遅で移動しているうちに、車に挽かれてしまうに違いない…可哀想 じゃんか;と思ったわけ。
近所の広場に行き、たくさんのヨモギの葉を集め、それを地面に細長くフカフカになるように敷いてベッドを拵え、その上にマムシを寝かせました。
蛇の生命力は強いと聞いた事があった私は、看病したら元気になるかもしれん。と、本気で考えていました。
次にヨモギの葉をすり潰し、その汁を傷口に垂らしてやると、痛かったのか、マムシは少し身をよじりましたが、後はずっとおとなしくしていました。当時の私は、ヨモギは万能薬だと固く信じており、自分が外で擦り傷などを負った時にも同様に手当していたのでした。
傷の集中した頭部付近にはさらにヨモギを貼り付け、胴体部分には掛け布団のつもりでヨモギの葉をかぶせて。。。
↑良い子はマネしてはいけません。
この時、蛇も恩返しとかするんかなーと思ったのをすごく憶えてます。無償の精神からの行いではなかったのか・・・。なんと、やらしい子だね。
マムシはされるがままじっとしてて、時々チロチロと舌を出すだけでしたから、手当してもらって嬉しいんだろうなーなんて、私は完全に看病してるつもりでいい気になってましたけど、マムシにしたらえらい迷惑だったかもしれません。今思えば。
「治療」を終え、様子を見守るのにも飽きて、ちょっと放 置したらそのスキにいなくなってましたから。
あれからおよそ30年。へびの恩返しは…まだかな。いや、すでに来てるのかも(なんせ理屈じゃないもんで)。
あ、恩返しじゃなく仕返しだったりして。そして、これからだったりして。
ひえーーー。ごめんよー。
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