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電子書籍とアガサ・クリスティー

M.S.さんがオーディオブックの話題を取り上げていたので、私も電子メディアの話を少し。
と言っても超アナログ人間な私はM.S.さんとはレベル違いで、去年、ようやくKindleを手に入れたに過ぎない。

去年の夏、長女が誕生日プレゼントに『薬屋のひとりごと』という漫画をリクエストしてきた。
すでに10巻まで出ていて、この先も増えていく見通しだ。
私は漫画を読まないが、シリーズものを揃え始めれば全巻揃えることになるのは予想がつく。
これ以上モノを増やすのは嫌だな…と思った私は、以前から興味があったKindleを提案してみた。
「これなら全巻そろえても良いし、他の本も買っていいよ」と。
長女も承諾。私は早速Kindleを購入した。

Kindleの使い方はシンプルで、電子モノは非常に苦手な私でも比較的すんなりと使い始めることができた。
娘が欲しがっていた漫画をダウンロードして、プレゼント。
ところが娘は目当ての漫画を読んでしまうと、Kindleそのものにはほとんど興味を示さなくなった。
そこで私が自分で使うことに。
果たしてKindleは私の日常の一部になるのか…?

結論から言うと、あまり使いこなせなかった。
まず、M.S.さんと同じで、選書に悩む。
無料サンプルのダウンロードもできるのだが、冒頭だけなので、なんとなく心許ない。
やはり書店でパラパラ…の方が確信がもてるようだ。
もうひとつの使いにくさは、どこを読んでいたか分からなくなってしまうところ。
間違ってちょっと画面を触ると、一気にページが進んだり戻ったりしてしまう。
多分、元のページに戻れる機能もあるのだろうが、説明書もついていないので未だにただ困っている。
良い点は、文字の大きさを変えられること。
老眼の私にはありがたい。

と言うわけで、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を半分まで読んで挫折してから、Kindleを手に取ることがなくなっていた。

しかし病気療養中で時間がある今、読書がしたいのは確かだ。
ただ、改めて読もうと思うと、何を読んだら良いのか分からない。
昔好きだった作家の作品は、今読むと小難しすぎてつまらなかった。
気軽に読めて、気分転換になる読み物が欲しい…

そんな中、行きつけの美容院の美容師さんから、お勧めをいただいた。
アガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』だ。
正直なところ、最初は「アガサ・クリスティーって…いやいやいや…」と思った。
私の中では、古い軽薄なエンターテイメントというイメージしかない。
何を隠そう、私は中学生でガルシア・マルケスを愛読した元文学少女なのだ。
しかし、この歳になって思う。
食わず嫌いは良くない。
つまらないこだわりのせいで、私は多くのものを見落としてきたかもしれないのだ。

そこであのKindleで…と思ったが、出費に値するかどうか懐疑的だったので、近くの公民館の図書室で貸し出しを予約した。
こうして私の手元にやって来たアガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』。
長年、多くの人々に読まれてきたのだろう。かなり年季が入っている。
奥付を見ると1995年出版だった。
このころの書籍は活字も小さく読みにくい。

「最後まで読めるかな…」と疑いながら読み始めたが…
これが意外と面白い!
時代も、場所も、社会的背景も私が知るものとは全く違う。
イギリスの鼻持ちならない上流階級の奥様の世界だ。
ミステリーで有名なアガサ・クリスティーだが、この作品では殺人は起きない。
人の心のゾッとするところを覗きながら、当時の奥様たちがどんな生活をしていたのか、その描写も楽しめる。

Kindleで最新の話題の書籍を読むのにも憧れるが、今の私には、図書館で借りたアガサ・クリスティーの文庫本を読むのが合っているようだ。





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