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『女性を愛するということは』エッセイ-03

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※当エッセイの内容について購入者以外への内容の公開はお控え下さいませ。内容には同性愛の描写が含まれますので苦手な方は購入をお避け下さい。

それはそれは咽返るような夏の最中。
白いカーテンを開ける彼女の姿は、女性にしては少し広く
華奢でありながら筋肉質の背中がとても美しく映った。

私は女性の美しさを知っている。


―出会いー

20代の最中。彼女とはインターネットで知り合った。
大きなショッピングモールで、迷いそうだったから
誰でも好きそうなオムライスの店で待ち合わせた。

まるで少年のような服装に、ツンとしたショートカットの髪の毛。
丸く大きな瞳、端整な鼻筋と、小さな唇。
とても可愛らしい女性だと感じた。
私と同じように女性を恋愛対象としてみている事なんて、外見の印象からは想像できない。何処にでもいるカジュアルでボーイッシュな女性といった感じだ。

私達の共通点といえば”女性に関心がある”ということだけ。
それも恋愛対象として。
しかし、恋愛といってもちゃんとしたことが無いんだから
それすらもあやふやで形を保っていないような気持ちである。

私達は地球上で一番不安定なものに感じた。

その店で有名で間違いなさそうなオムライスのセットを頼んだ。
初対面の相手との食事というものは、味を感じ取りづらい。
初対面なのに目の前で食事という無防備で原始的な動作をすることに、若干違和感がある。

ふわふわのパンをちぎり、口へ運ぶ。

相手のことは”Tちゃん”と呼ぶことにする。

Tちゃんはパンをちぎり、オムライスを口に含み、順番に食べていく。
しかし、野菜を少しずらしている。
やっぱりそうだ。
何度みても・・・・トマトの出番がやってこない。

「トマト嫌いなの?」と私が聞くと
「そうやねん・・・」とばつが悪そうな顔をしている。

私は「残していいよ~」と伝えると
Tちゃんは「食べるもん・・・!」と言いながら、えいっと口へ放り込んだ。

子どものように強がりな子だなぁと感じて、クスっと笑った。

その日は食事をし、お互い他愛のない話をして別れた。

目がまあるくて、凄くかわいらしい顔なのに
ボーイッシュな装いがわざとその愛らしさを隠しているようで
なんだかもっと知りたくなってしまったのだ。

バイバイした後、携帯が鳴った。Tちゃんからだった。

「かやちゃん、今日はありがとう!人見知りやけど楽しくお話できたわ!
次いつ暇かな?」

(まじか・・・・・。)

自分から送るのを躊躇っていたから、心の中で小さくガッツボーズを決めた。

Tちゃんとは、それから暇がある度にLINEをした。何度も何度もやり取りを繰り返しながら、いない間もお互いのことを考えながら、
女性同士も異性の恋愛も何も大差なく
そこに存在するのは【好き】という気持ちだった。

はじめて、Tちゃんと夜を過ごした事があった。
女性同士の付き合いというのは、様々な状況において美化され、茶化され、真実というものは本当に僅かなものである。

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