1000字でまとめる『世界標準の経営理論』~ 1-2 SCP理論をベースにした戦略フレームワーク (第1部 第2章) ~
2019年12月に早稲田大学の入山教授が出版した『世界標準の経営理論』。出版早々に購入するも、面白そうな章だけつまみ食いした以降は、3年ほど本棚の肥やしとなっていた。しかし、2022年10月にマネジメントへの一歩へを踏み出す中で【経営】への関心が再び高まり、この機会に丁寧に読み直すことにした。
本noteは自身の咀嚼を主な目的として、各章の概要を各noteで "1000字程度" で整理すると共に、読む中で感じたことを記録する備忘録である。なお、今の自分にとって目に留まった章から順番に触れていく。
1.本文概要:SCP理論をベースにした戦略フレームワーク
✄『世界標準の経営理論』該当ページ:P50~P65 ✄
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ポーターのSCP理論をベースにしたフレームワークの代表は「ファイブ・フォース」「戦略グループ」「ジェネリック戦略」の3つである。
①ファイブ・フォース
骨子は「産業の収益性は、5つのフォース(脅威)で規定される」というものである。フォースが強い産業は「完全競争」に近づく、フォースが弱いほど「完全独占」に近づく。
・フォース1:潜在的な新規参入企業
・フォース2:競合関係
・フォース3:顧客の交渉力
・フォース4:売り手の交渉力
・フォース5:代替製品の存在
ファイブ・フォース分析を行う上での留意点は2つである。第1のポイントは、ファイブ・フォースは産業構造・収益性の現状分析だけでなく、将来の予測に使うと有用性が増すこと。第2のポイントは、ファイブ・フォース分析を複数の階層・レベルで行うことの重要性である。同分析の結果は「どこまでを自社の競争環境とするか」で大きく異なる。
②戦略グループ
戦略グループは「企業グループ」そのものである。すなわち自社と同業他社を、製品セグメント構造などをもとにグループ化することである。
③ジェネリック戦略
自社が業界内で取っている「ポジショニング」を検討するフレームワーク。ジェネリックは「包括的な」という意味である。大別すれば『コスト主導
戦略』と『差別化戦略』の2つに分類できる。
「自社の競争環境を完全競争から離し、独占に近づける戦略」という目的を達成しやすいのは、他の条件を一定にすれば、明らかに差別化戦略である。ただし、「コストで圧倒的に勝てる条件が揃っている時に限り、コスト主導戦略も追及する価値がある」というのがSCPの合意になる。
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SCPの限界については大きく2点を述べる。第1に、SCPはそもそも「安定」と「予見性」を前提としていることである。しかし、もしその業界がハイパーコンペティションにあるなら "均衡(安定)" は定まりにくい。結果として、競争環境の方向性は極めて予見しにくい。
第2に、SCPは人の認知面に入り込まない。古典的な経済学の前提は「人間は合理的で、認知バイアスに影響されない」と考えるが、意思決定者の認知・心理面が強く影響する時には、齟齬を来すかもしれない。
2.本章に対する振り返り
一見使い勝手が良さそうなフレームワークだが、そのままを鵜呑みにせず、「何を行うことを "目的" としたフレームワークであるか?」、「使用にあたっての "前提条件" は何か?」の明確化への必要性を改めて感じさせられる内容であった。自身がフレームワークを用いる場合においては、何となく分析したつもりを招かない様に "目的"と"前提条件"を振り返りたい。
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また、(本note中では抜粋しなかったが) SCPで評価する「産業効果(産業属性)」が企業収益性に影響を与える割合は、過去のCOV (Components of Variance) に基づいた検証でも 5~20% と非常に幅がある結果ともなっており、本章中では「産業属性が企業の収益性に影響を与えることは間違いないが、過大評価しないことも重要である」という示唆がなされていた。
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これまで自身が持っていなかった新しい観点を得ると、「それが実は支配的な/非常な重要な観点である」かの様に錯覚してしまう場合があるが、本書に触れながら『その観点の持つ対象への影響力はどの程度のものであるのか?』を冷静に把握し、得た観点の過小評価・過大評価を防ぐようなスタンスを守ることが大切である様にも考える次第であった。