1000字でまとめる『世界標準の経営理論』~ 2-5 組織の知識創造理論(SECIモデル) (第2部 第15章) ~
2019年12月に早稲田大学の入山教授が出版した『世界標準の経営理論』。出版早々に購入するも、面白そうな章だけつまみ食いした以降は、3年ほど本棚の肥やしとなっていた。しかし、2022年10月にマネジメントへの一歩へを踏み出す中で【経営】への関心が再び高まり、この機会に丁寧に読み直すことにした。
本noteは自身の咀嚼を主な目的として、各章の概要を各noteで "1000字程度" で整理すると共に、読む中で感じたことを記録する備忘録である。なお、今の自分にとって目に留まった章から順番に触れていく。
1.本文概要:組織の知識創造理論(SECIモデル)
✄『世界標準の経営理論』該当ページ:P269~P284 ✄
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本章では「経験→知」に焦点を当てる。この手段には (1)知の創造 (knowledge creation)、(2)知の移転 (knowledge transfer)、(3)代理経験 (vicarious learning) の3つがある。この中における (1)知の創造 のプロセスを描き切った理論が、一橋大学名誉教授・野中郁次郎のSECIモデルである。
このSECIモデルの出発点は「『知識』は『情報』とは違うのではないか」という問題意識である。そして、その時に出会ったのが「人格的知識としての暗黙知」という視点である。
SECIモデルの根幹は、組織内における個人と個人、あるいはより多くの人たちの間での暗黙知と形式知のダイナミックな相互作用である。この知の相互作用のプロセスは「2×2」で4つのパターンに分けて説明できる。
①共同化 (Socialization):暗黙知➡暗黙知
新しい知を組織で生み出すには、複数者の暗黙知が共有される必要がある。大きくは、他者との直接対面 (知的コンバット) による共感や、環境との相互作用を通じて暗黙知を獲得する。
②表出化 (Externalization):暗黙知➡形式知
共同化を経て共有された暗黙知はそのままでは使えない。形式知化されることで初めて顕在化する。個人間の暗黙知を対話・思索・メタファーなどを通して、概念や図像、仮説などをつくり、集団の形式知に変換する。
③連結化 (Combination):形式知➡形式知
表出して形式化された知は、組織全体で集められ、連結されて、物語や理論として「組織の知」として体系化する。現場レベルで言えば、マニュアル・設計書などの形での体系化が該当する。
④内面化 (Internalization):形式知➡暗黙知
組織レベルの形式知を元に具体的な行動を起こし、成果として新たな価値を生み出すとともに、新たな暗黙知として個人・集団・組織レベルのノウハウとして「体得」する。反復してやり続けることで、組織は知識を生み出す。
SECIモデルは現象学と親和性が高い。そのエッセンスの1つは「主体と客体の同一性」「他者との共感」にある。まさに全人格をかけた知の格闘 (知的コンバット) をすることで、やがて互いが「我、汝」の関係になっていき、現象学の主張するように、主体と客体が一体化していくのである。結果、共感が発生し、共同化が進んでいく。
2.本章に対する振り返り
「仮説を立てる」ことが「暗黙知を形式知にする取り組みの1つ」であると解釈する点に非常に興味深さを感じた。暗黙知は容易に言葉にできないからこそ暗黙知であり、だからこそ、暗黙知を形式知にするためには【仮説】というワンクッションが必要となる。仕事の中ではつい一足飛びに形式知化を目指してしまいがちだが、自分に新たな観点を添えるものであった。
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自身はこれまで「組織内に暗黙知が存在することにより、仕事の出来栄えに差異が生じる」という印象を持っており、そのため「暗黙知そのもの」に対して漠然としたネガティブな印象を持っていた。ただし、SECIモデルに触れながら、ネガティブに捉えるべきは「暗黙知そのもの」ではなく、「暗黙知が組織に浸透していないことである」と考えを改めるに至った。
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暗黙知を組織内に浸透させる(共同化する)ためには、「全人格をかけた "知の格闘" が必要」という示唆があったが、「多様性」の言葉が生半可に広がると共にここで示唆する "知の格闘" は徐々に組織の中から失われているのではないかと感じる。個の尊重はもちろん大切ではあるが、組織に属する以上、それぞれが『組織としての考え方(暗黙知)』に意識を向ける必要がある。
【参考資料】
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