白く濁る

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疲れもそれほど溜まっていない、お休みの日の夜に、その有り余るエネルギーは創造へと向けられたような気がする。

多分私がこのように小説を書いているのも、全く同様である。

夜のホテルでコンビニのカルピスを飲みながら、僕は僕の欠落に思いを馳せていた。
足りないものを補ってくれるのはいつだって恋人だった。

気分が沈んでる日に笑わしてくれるのも
具合の悪い日にお粥を作ってくれるのも
お出かけしたい時に着いてきてくれるのも

恋人は隣に一緒にいるだけで十分なのに、違う家に帰れば離ればなれになってしまうし、食事を食べに行ってもトイレに行ってしまう。

そんな空白がとてつもなく苦しいと感じるほど彼に依存していた。

僕はそんな彼との関係には一定の線を引いていた。とにかく隣にいるだけで十分だったからだ。

僕が求めてるのは母性のようなものであるが、これはまたさんざん母に甘やかされて育った結果に過ぎない。

1秒でも多く愛しき匂いを感じていたい。体温が知りたい。可能ならば食したい。

愛する事は簡単でも、愛の中身は様々であるし、上手く愛すること、愛されてると感じることは人によって違うのだろうと思う。

僕たちは家庭の文化の中で暮らす。
人それぞれだとして好みの人が望むようにあらゆるを変えることは不可能だと思う。

ある程度は近しい関係の中でお互いに擦り寄っていく。

夜の街が似合うメイクを覚えるのと同時に、摂取する薬と変わっていく心と身体。

視界は幾分か白く濁る。もう子供が作れなくなる。

快楽のためだけにお金と時間を費やす日々の中で欠落を数えるような精神性だけが残存している

恥ずかしくないように生きている事が恥ずかしい。夜風を通す透けた服が心の体温を奪っていく。

私の可愛いと好きな人の好きなんてそんなに簡単に一致しない。動物的であるかあるいは私好みであるか。

なんだっていいけれど、私は私を好きでいて、社会が私をなんの違和感もなくLADYだと思うような、そんな日々を目指しているのかもしれない。

こんな歳になって、愛されたいとかあんまり思わない。現実味の無い愛情よりも、私を欲しているその欲の方が心地よく受け入れられる。

好きだからしてくれる。
そういう行動に心が惹かれる。

誰でもいいような男の欲をたまたま通りすがりの私に向けないで欲しい。

蓼食う虫も好き好き。
努力は程々に。

月明かりの下で唸り声をあげるオオカミさんに後ろから抱きついて抱擁をする時のオオカミの安心感。私の愛情。

夜のホテルで欠落の穴を埋める。
白濁を飲み込みながら、世界の匂いが蘇る。
誰も好きじゃないのは私の方かもしれない。

都合の良いあなたのそんな性格を恨みながら、目を閉じて5秒したあとLINEを消去した。

この広い世界で唯一スカッとする事と言えば、もう子供が作れない私の身体と、私を欲してきた欲の数々が対立する事実である。

さようならを告げたい。
欲の無い人間なんて居ない。
運が悪かったのね。

帰り道、一人で泣いていたのは欠落でも喪失でもなく、己の衝動だった。


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