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100分de名著「資本論」を読んで

「100分de名著」シリーズの「カール・マルクス 資本論」を読み終えました。
なので、久々に感想などを書いてみようかと。

0.「100分de名著」とは

NHK Eテレで毎週月曜に放送されている番組名です。
タレントの伊集院光さんとNHKアナウンサーが司会、それぞれの名著の専門家を招いて25分で4回にわたっていろんな名著を解説していきます。
(25分×4回=100分)
この番組のいいところはいくつかありますが、私がいちばん思うのは「独りで読んでいると気づかないことを教えてくれる」ということです。
たとえば「ハムレット」の解説であれば、ハムレットは父の復讐で悩んでいるというイメージでしたが、実はそうでなかったことなどが番組で知りました。

1.カール・マルクス「資本論」とは

「資本論」は一般的にとても長くてわかりにくいと言われていて、だいたいは挫折することが多いのかもしれません。
私は漫画の資本論を読みましたが、内容としては若干薄めだったような気がします。
(とはいえ、これもこれで芯をついてると思われる内容です)

この漫画で書いてあったのは「販売額のうちほとんどを占めるのが人件費。人件費を抑えられれば儲けが増える」といったことが書かれていました。
とはいえ、この「資本論」はずっと話題の本。実はもう少し深い話があるんじゃないのか?と思ったのが、この「100分de名著シリーズ」の「資本論」を読もうと思ったきっかけでした。

2.放送 第1回:「商品」に振り回される私たち

第1回は「商品」の話でした。
マルクスは「自然を取り込んで変容させ、自らの欲求を満たしていく」ことを「物質代謝」と呼び、そして「この物質代謝こそが労働である」と定義づけました。
難しく思えますが簡単です。
たとえば服は勝手にできるものではありません。布を縫って色をつけたり飾りをつけて「服」になります。
この服ができるまでに人間が行うことが「労働」になり、それが「商品」を生み出します。
なので、資本主義社会のなかでは大まかですがこんな式が成り立つと思います。
労働+材料=商品
「人間が何かを変容させる労働」は資本主義では商品を生み出すとマルクスは書いていたので、私はこの式が思い浮かびました。

ただ、資本主義が確立されるまで「材料はその地域の共有物」だったのが、資本主義では「材料=商品」となり、それは地域の共有物ではなくなってその地域の有力な人が占める「商品」になってしまいました。
わかりやすいのがミネラルウオーターです。ミネラルウォーターはもともとその地域の人の共有物だったのが、会社がそこの水を商品として扱うことで「商品」となって世界中に販売され、会社の利益になります。
私はこの話を聞いてすごく納得できました。
日本の水は別に飲んでも大丈夫なのに、なぜみんなわざわざ買うんだろう?買う必要あるのかな?と。なんならミネラルウォーターってもともと自然のものなんだから、それにお金を出しても自然が儲かるわけではないよな?と。

同時に違和感を感じていたのが「流行」です。
毎年の流行って誰がうみだすんだろう?と美容師さんに話したら、「カラーリングの色は薬剤の会社が勝手に話題を作るんだよ」と。
※美容師さんの話なので事実かどうかわかりません
でも、この本では「資本主義下において会社は商品を売り続けて資本を増やさないといけない。なので、『みんなが必要なもの』ではなく『みんなが欲しいと思うもの』を作らないといけない」とあり、さきほどの美容師さんのお話とリンクしているなと感じました。
タピオカドリンクなどがいい例です。別に飲まなくてもいいけどみんなが流行に乗って飲んでただけで、ブームが過ぎるとどんどんと街中のタピオカドリンク屋さんがなくなりました。
「みんなが欲しいと思うもの」に振り回されて商品を作る人、そして「欲しいと思うもの」を求めて何軒もハシゴする人…。
一時的なこととはいえ、モノに振り回されている人間って愚かなものなんだなぁ・・・と痛感し、放送1回目は終了しました。

3.放送 第2回:なぜ過労死はなくならないのか

商品には労働がつきもの。マルクスはある式を「資本論」の中で紹介していました。それをわかりやすくしたのが以下です。
(テキストに書かれていたもとの式ではなかなかわからず…)
材料+労働力=モノ
モノ→お金(=α)
材料+α+労働力=モノ’
モノ’→お金(=α’)
材料+α'+労働力=モノ’'
モノ→お金(α’’)

要は、モノを売ったお金をもとにしてモノをさらに多く作れたり品質の良いモノを作れたりしていくというループを繰り返すということです。
わかりやすく書いてみると以下のようになります。
材料+労働力=100個のパン
100個のパンを販売→100万円
材料+100万円+労働力=200個のパン
200個のパンを販売→200万円
材料+200万円+労働力=300個のパン
300個のパンを販売→300万円
実際はパンを売ったお金がそのまま次のパン作りに使えるわけではないですが、パンを作る労働力もお金もどんどん増えていきます。

売り上げをできるだけあげるのにはどうしたらいいか?
それはコストを減らすことです。
パン500円の中で労働力が200円、材料費が200円、利益が100円とすると、労働力を100円にしたら利益が200円になりますよね。
もしくは、1日の労働時間を2倍にしたら作るパンの数が2倍になり、結果的に利益も2倍になります。これが「過労死」につながります。

どうやら「過労死」は昔からあり、1863年のイギリスで発行された新聞に書かれていたそうですが、20歳のお針子さんが30時間休みなく働き続け、寝る時は1つのベッドに2人寝るなどの劣悪な環境に置かれていたため、死に至ったようです。
(1963年「純然たる働きすぎによる死ーDeath from Simple Overwork」)

なぜ過労死は起こるのか?シンプルにいうと「自給自足できないから」です。
自分で食物を作り、自分で料理して自分で食べるーそんな生活ができるなら誰かに自分の労働力を搾取されることはありません。
しかし、そんな自給自足の生活をできないから誰かに労働力を搾取されてしまい、結果的に劣悪な環境でも文句がいえない弱い立場になるというのです。
「自分はそうなるものか」と思って、職場で自由気ままにやってしまうとクビになる。クビになると生活に必要なお金を得られない。
そうなると困るのでみんなは文句も言わずに働き、それが過労死を助長してしまうという仕組みです。
マルクスは「資本論」のなかで以下のように書いています。

自然日の限界を超えて夜間にまで労働日を延長することは(中略)労働の生き血を求める吸血鬼の乾きをどうにか鎮めるだけである

カール・マルクス「資本論」

4.放送 第3回:イノベーションが「クソどうでもいい仕事」をうむ!?

前項で「売り上げをできるだけあげるのにはどうしたらいいか?それはコストを減らすことです。」と書きました。
コストを減らす方法は2つあります。最近の主流は「機械に任せる」です。今風にいうと「RPA化」です。
RPAとは"robotic process automation"の略で、簡単にいうと「作業のプロセスを自動化する仕組み」です。私が勤務している会社でも集計作業はRPA化されています。
たとえば、8時間労働の人(Aさんとします)が1日2時間を集計に充てているとします。でもRPA化して機械に集計をまかせてAさんがデータの確認を1時間で終わらせるとなると、残りの1時間を別の作業に充てられるのです。会社としてはRPAを導入するのが大変とはいえど、労働力が増えることになります。
でもそのデータ確認作業を30分でできるBさんが来るとAさんはお払い箱、そして今度はその作業を10分でできるCさんがくると、Bさんはお払い箱です。最終的にAさんとCさんを比較すると、労働時間は1時間50分増えますよね。
このように便利になるRPAによって、労働時間が延びていつまで経っても私たちは残業がつきもの…というわけです。

また、鍋を作る作業を最初の鉄打ちから最終工程までを1人でやる職人さんがいたとします。
職人さんの仕事はみんなが全工程できないものの、鉄打ちだけする人、形を作る人、仕上げの人というように分業にすれば経験値が浅い人でもできます。経験値が浅いということは人件費を削れるということになり、1人の職人さんを雇うより3人の素人を雇って結果的に人件費は安くなるかもしれません。
こうやってますます労働者は弱い立場に置かれることになってしまいます。
私はもともと分業に意味もわからず違和感を感じていたので、どの仕事も1人で最初から最後までやるようにしていましたが、それが間違っていなかったんだなと強く思いました。

5.放送 第4回:コモンの再生

個人的に響かなかったので、大幅にカットしますw
マルクスが求め描いていた世界は、どうやら「NPO法人」「NGO法人」のようです。
要は、利益など求めないで自発的な相互扶助の社会。でも個人的所有も認める。
たとえば、村でりんごを作っているとします。
りんご栽培に必要な道具などはみんなの共有財産。りんごを収穫してみんなに分配されたりんごは個人的な財産になるということのようです。
「みんなの共有財産」「りんごを収穫してみんなで分配」というと、いわゆる社会主義国を連想しますが、社会主義国は「りんごは個人的な財産」にならないみたいなので、マルクスが描いていた社会=社会主義国というわけでもないと書かれていました。
個人的には「マルクス=社会主義国」という式が成り立つんですけどね・・。(多分この辺があまり響かなかったところ)

5.まとめ

長くなりましたが、以下のようなことです。

・資本主義の国は「モノ」に振り回される
・「モノ」の利益をあげるために人件費が削られる
・世の中が便利になっても仕事時間は減らない
・マルクスが求めていた社会は「個人所有」「相互扶助」

挫折する人が多いと言われる「資本論」、本当に最後までおもしろく読めました。
これを書いてるときに、Abemaの番組「しくじり先生 俺みたいになるな」で過去の放送された「カール・マルクスのやらかし人生」が配信されていたので、また感想を書きたいと思います。

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