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ジェフ・ベック “Blow by Blow” (2003.12.01)

で、そのジェフ・ベックである。'75年の8月6日木曜日にもし彼が雨の円山音楽堂に来たとしたら、このアルバムの曲たちを弾き捲ったことだろう。


“Blow by Blow” Jeff Beck (1975)

「ジャズへの傾倒、クロスオーバーの影響」といった評され方をよく眼にするが、実際この作品中にあるジャズイディオムは、探さないと見つからない程度である。音楽的にはむしろソウル/ファンクとの融合と言うべきだろう。ジャズとの共有点はなによりも、「従来間奏を受け持ってきた楽器のインプロヴィゼーション(即興演奏)が、リードヴォーカルに取って代わった主役であり、楽曲はインプロヴィゼーションの素材でしかない」という、その様式である。

当時のギターキッズたちの心を魅了していたロックギタリストには、他にジミー・ペイジ、エリック・クラプトン、リッチー・ブラックモア、ジミ・ヘンドリクス、そして'78年に衝撃的に登場したエディ・ヴァン・ヘイレン等がいた。彼らの演奏を聴くと、「ほらほら、こんな風に弾くとカッコいいよ。君もやってごらん」という声が聞こえてくるようで、私達ギターキッズは彼等のプレイを一生懸命真似ることを通じて、腕を競い合ったものだった。

しかしこのアルバムでのジェフ・ベックは違った。囁いたり、怒鳴ったり、まるでギターでおしゃべりしているようなそのプレイ(*注)は、「真似しようなんて思うなよ。君には君の言いたいことがあるだろう。自分のことばで話しなよ」と言っていた。というわけで、このアルバムに出会った少年ナカハラは、その後コピーすることを止め、インプロヴィゼーションの世界へまっしぐらに進んで行くのでありました。

(2003.12.01)


*注:2曲目 “She's a Woman” を聴いて「あっほんとだ!ギターがおしゃべりしてるように聞こえる!!」と思ったあなた。その曲ではトーキング・モジュレーターという機材を使って、本当にしゃべっているのです。



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