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出張を出張で終わらせたくない旅の話。

「空港でレンタカー借りたから、
みんな乗ってくよね?
明日はホテル前に集合で時間は…」
すみません、別行動でいいですか……

出張目的の仕事が終わって
ごはんを食べたあと、上司の送迎を断る私。
とんでもねえ奴だ。

飛行機の時間は変えられない。
昼には空港に着かなければ。
6時台に起きる(仕事の日でもこんな早起きはしない)。
前日に閉店間際に立ち寄ったパン屋さんで
買った、バターロールと牛乳を胃に入れる。
パンと牛乳で105円。
誰も起きていないホステルを
そっとチェックアウトする。


地下鉄と、電車と、バスを乗り継いで
1時間半。
街中をバスで走っていたのに
うとうとして目覚めると、
周りには木しかない。森のなかみたいな道。
湖に着く。9時22分。 

空港行きのバスは10時50分。
1時間半もある。さあ、なにをしようか。

「9時40分より、遊覧船が出航します」
すぐ近くでアナウンス。
なんだって?ツイてる!乗る。
チケットを買って乗り込む。
階段を降りると、
海底ならぬ湖底が見える窓が。
この湖は透明度が高いらしい。
光が降り注いでいる。


ファミリーが数組いるなか、
同い年くらいかなあ、女のひとがひとりで乗っていた。
チキって降りるまで話しかけられなかった。
友達になれたかもなあ。

こんなに大きな湖を目の前にして、
湖を触らないわけにはいかないので
水辺を歩く。
と、柵がないゾーンがある。
水を触る。冷たい。


ちょっと離れた位置からの湖も撮りたい。
撮る。
自分も映り込んでみる。


10時46分。
え?私、この地に来て
ソフトクリーム食べないで帰るつもり??
売店に ナントカ牧場のソフトクリーム の文字。
バスまであと5分もない。
「ソフトクリームを食べていたら
飛行機逃しました」
なんて言ったら、車に乗せてくれると言った上司はどんな顔をするだろうか。

「カラスに狙われるので
気をつけてくださいね」
持ってバス停まで走る。
間に合った。

このご時世、
バスで飲食なんて許されないだろうか。
他の乗客はひとり。
お兄さんに心の中で謝りながら、
離れた席で食した。
森のなかの道を走りながら、
換気のために開けられた窓からの風を感じながら食べる、ナントカ牧場のソフトクリームは美味しすぎたな。
-完-

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