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iPS細胞と先天性ミオパチー その2

先日、iPS細胞研究所より、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関するニュースリリースがありました。自分の理解用メモを共有します。


デュシェンヌ型筋ジストロフィーにおける筋収縮力低下のメカニズムの一端を解明

【1】今回のニュースリリースの背景
・近年は、iPS細胞を用いてデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の症状を反映した病態モデルの開発が求められているが、機能的な病態を再現するまでには至っていなかった。
・一方で、DMD病態変化の一つとして、骨格筋細胞内へのカルシウム過剰流入が考えられている。

【2】今回新たに分かったこと
・DMD患者由来iPS細胞のジストロフィン遺伝子を修復したコントロール株(ジストロフィン変異以外の遺伝的背景がDMD患者と同一)を用いて、カルシウム過剰流入試験を行った結果、検証した3種類の阻害剤(CM4620、GSK7975A、AnCoA4)全てにおいて、カルシウム過剰流入を抑制する効果が認められた。
・骨格筋の細胞内に存在するOrai1-STIM1複合体(カルシウム流入を制御していると考えられている遺伝子)に対して、siRNA(mRNAの破壊によって遺伝子の発現を抑制する)を用いた遺伝子ノックダウン試験(人為的にターゲット遺伝子を抑制する)結果、mRNA発現量を80%以上減少させたため、Orai1遺伝子またはSTIM1遺伝子がカルシウム過剰流入を抑えるターゲット遺伝子となり得ることが判明した。
・筋疲労に似た収縮力低下がOrai1-STIM1複合体阻害剤により改善されるかを検証した結果、上記の3種類の阻害剤それぞれが効果を発揮した。

【3】まとめ(引用)

DMDの患者さんは、骨格筋細胞の収縮力の低下や筋組織の破壊が顕著であり、長らくカルシウム過剰流入がそれらの原因の一つではないかと考えられてきました。しかしながら、ヒトモデルでカルシウム過剰流入と収縮力低下の因果関係は不明のままでした。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーにおける筋収縮力低下のメカニズムの一端を解明

 本研究では、iPS細胞を用いてDMD患者さんに見られるカルシウム過剰流入と収縮力低下を評価できるモデルを活用してOrai1-STIM1複合体がカルシウム過剰流入の責任分子であることを同定し、Orai1-STIM1複合体阻害剤が収縮力低下を抑制することを明らかにしました。今後は動物試験や創薬試験を行うことで、Orai1-STIM1複合体阻害剤など筋疲労に似た収縮力低下を改善する薬剤の中から、DMDの症状改善に効果があるものを見つけることを目指します。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーにおける筋収縮力低下のメカニズムの一端を解明


参考


ひとりごと
先天性ミオパチー患者由来のiPS細胞で同じ検証してくれる方いないかなぁ?検体提供ならいくらでもするのになあ?何ならやらせてくれないかなぁ?(笑)。




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