ドン、ドン、ドン

ズドン。


駅を降りると爆発音。地響きのようにドン、ドン、ドン。あぁ、そういえば盆か、花火か。どれどれと空を仰ぐ。しかし、見えるのはマンションの外壁。花火は容赦なしにドン、ドン、ドン。これでは高層階のブルジョワしか見物できぬ。やれやれ、Tokyo Cityは金がなければ先祖のお迎えもなならないようだ。孝行も風情も情緒もない夏夜模様。さもしい。こんな夜はコンビニで酒と肴を買って帰る。西京焼きを箸で掘り、安い純米酒で暑さを誤魔化す腹積り。自動ドアからこんばんは。セルフレジでありがとう。自動ドアからさようなら。外に出れば、ドン、ドン、ドン。目には見えない花火の乱射。外壁に投影される残光。冠、ダリヤ、菊変化。満開咲きの見物料は如何程か。晩酌を入れたバイオマスビニール袋がやけに軽い。まるで俺の価値のようだ。花火も満足に見えぬ、底辺労働者の命のような軽さ……


ドン。


花火があがった。
大きい。思わず空を見る。


ドン、ドン、ドン。



「おぉ」



マンションの隙間から、満開のスターマイン。手にしたバイオマスビニール袋が、急に重くなった。まぁ、こんな夜も、いいもんだ。

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