職業に貴賎はないというが明確に差別偏見が溢れる昨今においてはまったく無意味な言葉になりつつある

 声優になりたいと出ていった娘がAV女優になっていた。

 今はセクシー女優と呼ぶらしいが呼び方などどうでもいい。問題は可愛い可愛い愛娘が不特定多数の男優に辱められるばかりかその様子を見て日夜自家発電に励む者達がいる事だ。それを思うと堪えられん。おのれ野郎ども! 皆殺しにしてくれる!

 なでと言っても仕方がない。ひとまず娘に今の仕事を辞めるよう電話で説得しなければならないだろう。それが親としての責務である。スマフォの電話帳の一番上に表示されるアカリの名前を猛タップ。さて、久々の会話だ!


 ……

「もしもし」

 よし繋がった!

「もしもし父だ! お前AV出てたなふざけんなよ!」

 しまったいきなり頭ごなしになってしまった。これは即切りか?

「あ、父ちゃん久しぶり! 観てくれたんだサンキュー」

 あれ? 意外と軽い?

「どうだった? 抜けるしょ?」

「お前……そんな事言うもんじゃ……」

「え? もしかして駄目だった?」

「駄目なものか! 大変ありがたく視聴いたしました! 三回利用しました! ありがとうございます!」

 ……何を言っているんだ俺は。

「ありがとう! そういえばオルペン元気してる〜最近一人はキツくてさぁペットでも買おうかなって……」

 それから俺は娘の愚痴を聞きながら時折相槌を打ち、適当な愛想笑いを吐き出してご機嫌を取るなどした。

「……どうだ? たまには帰ってこないか?」

 最後にそう聞くと、アカリは「止めとく」と言って電話を切った。

 俺は親として道を誤った気がする。しかし、自慢の娘が注目されているのは、いい事なのかもしれない。それが、どのような形であっても……

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