フードデリバリーと『誤読』
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フードデリバリーと『誤読』

オンラインでの交流が中心となり、リアルな場で人と接する機会が減った今年、その生活様式に合わせ多くの新しい取り組みが生まれ、体験されました。また、以前より提供されていたものでも、今年の状況にあわせてブームとして盛り上がったものもあります。

例えばこの記事には、このようなものが挙げられています。

・リモート飲み会
・ゲームでのオンライン交流
・自宅トレーニング
・自転車
・フードデリバリー

何度か試してみたものの、もうやめてしまったもの。一度試したことをきっかけに、そのまま習慣として定着したものなど、いろいろありますよね。

個人的には、フードデリバリーのサービスを昨年から利用していましたが、今年はさらに利用機会が増えました。上記の記事では、リモート生活によるお得感が理由に挙げられていましたが、まったく違う理由からです。

それは、小さい子どもがいるためにできなかった外食の気分を味わうことができるという理由です。小さい子どもがいると、外食できる機会や場所がかなり制限されてしまいます。子ども用の椅子やスペースがなかったり、子どもも一緒に楽しめるメニューがないなど、簡単にはいきません。自宅で、子どもがすぐに食事に飽きたり走り回ったりすることを気にせず、外食のメニューが楽しめるというのは、思っていたより楽しい体験でした。

しかしながら、もともとフードデリバリーに対して、このような使い方ができるといいなと思っていたわけではありません。元来は、会社でランチとして頼む際に利用していたように、利便性だけで考えていました。

コロナ渦で従来はデリバリー対応していなかった飲食店もデリバリーをはじめたことにより、家族での外食の代わりとして利用したいなと思う店舗が増えたり、以前は足繁く通っていた店がデリバリーに対応し、意図せずそのような利用が増えたのです。以前店舗で食べていた味を食卓で味わうことができた際は今までにない喜びを感じ、子どもが生まれる前に夫婦でいろいろなお店を巡っていたときの気持ちを思い出しました。

おそらく、フードデリバリーサービス側も、飲食店側も、このような部分に大きな価値があるとは考えていなかったのではないでしょうか。サービス提供者側が想定や意図していた価値だけでなく、ユーザーが自身の文脈の中で価値を見出し、意味を付与していく。

Takramの渡邉康太郎さんが『誤読』と言っていたり、東浩紀さんが『誤配』と言っているような体験を、まさに勝手に生み出していました。

渡邉氏「誤読とは、他者が生み出した物語を自分で語り直すこと。誤読が生まれる時は、これまでの聞き手がいつの間にか語り手に移り変わる時です。、作り手が生み出した物語が形を変えて、いつの間にか自分の物語になっている。ブランド自体も、作り手から使い手のものになっていくんです」

フードデリバリー以外にも、多くの新しい体験が今年は広まりました。このような新しい体験が一過性のブームではなく、今後も定着するものになるかどうかはユーザーが自分の文脈での価値を見出だせるかどうか、というは大事なポイントになりそうです。

渡邉氏「コンテクストデザインというと、『企業やブランドが文脈を作り、顧客に正しく届けること』と誤解されるのですが、実は逆なんですよ。Contextの語源はラテン語で『con-=ともに』と『texere=編む』。つまり、“ともに編む”という意味の言葉です。情報を押し付けるのではなく、むしろ受け手とともに編んでこうというものです」

現代ではマスメディアだけではなく、多くの人々が情報の発信者であり、世の中に流通する情報は以前に比べ膨大な量になっています。そのような環境において、企業は価値を顧客に押し付けることは難しく、顧客とともに価値を共創していくことが必要だとあらためて感じました。


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Photo by Jed Owen on Unsplash




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博報堂を経て、2015年よりプレイドに参画。現在はコミュニケーションディレクターとして、CXプラットフォーム「KARTE」のコミュニケーション領域を担当する傍ら、CXカンファレンス「CX DIVE」統括とCXにフォーカスしたメディア「XD(クロスディー)」副編集長を務める。