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小説の書き方講座③【行はコマワリ】文の塊は漫画のコマ

今日は行はコマワリって話。
何の話やねんって方は、以前に書いた記事からどうぞ。

小説を書くといっても、どういう風に書けばいいのか。何を表現すればいいのか。まぁ、様々な悩みが出てくると思う。
この記事を読んでる人が、少しでも、たしかに!と思ってもらえたら嬉しいかな。あ、あとちなみに、小説の書き方については完全に自論なので、その点はご理解いただきたく思います。


行はコマワリ


この前の記事で、没入感のある文章を書くためには、

そもそも、自分の視界にどれだけ鮮明に景色が映っているのか?

これがカギになるという話をしたと思う。

しかし映っている景色の描写とは言っても、

どこから描けばいいんですかね?

これを今回は文字を通して伝えてみようと思う。



映る世界をどこから描くか?


見える世界の描き方は、外枠から

これが基本になると思う。もちろん、カップから上がる湯気に視線を向けて、そこから視界が広がってカフェ全体を描くというパターンももちろんある。ただそれらは注意を引くテクニックなだけで、基本的には外枠から描く流れで間違いはない。

だって一時的に注意を引くだけでは、そもそも見えない脳内世界の中に読み手を長時間閉じ込めることなんてできないから。

まぁ、きっかけになるには違いないけど、今回はその話ではないから、話を世界観の描き方へと戻すことにする。

そのときの注意点として僕が意識していることが、コマワリ。

そのコマワリを言い換えると、今映る視界を描くこと
そして白紙状態である読み手に対して、大体三行ほどの文章で相手の脳内世界を作り上げることに具体的に貢献することを目的としている。

世界観の構築に三行

そしてさらに詳しく描写したい部分があれば、視界を動かさず視点をさらに絞り込んでもう三行

そんなことを言われても文章だけだとわかりにくいだろうから、もう少し例文を出してみようと思う。

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 ①チャイナタウンの駅に到着すると、地上に出た瞬間に大きなショッピングセンターが見えた。漢字の看板がいたるところに見え、全ての意味は、おおよそ推測できる程度に過ぎない。

 ②その周辺では屋台が並ぶフードコートがあり、プラスチックの机と椅子を囲む人で溢れていた。ちょうど出し物をしているようで、僕はその場で足を止めた。

 ③小さなステージに年配の中国系女性が立ち、大きな音楽に合わせて歌をうたう。ゆったりとした音のテンポからは、どことなく時代の違いが感じられる。まるで演歌のような音のリズムは、独特の言語で辺りに響く。

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これを先ほどの描くということに当てはめると、

①チャイナタウンの駅に到着すると、地上に出た瞬間に大きなショッピングセンターが見えた。←この文章は全部描いている。
漢字の看板がいたるところに見え、←ここも描いている。


全ての意味は、おおよそ推測できる程度に過ぎない。
これは描いていない。

これは、描いた景色を見た本人の所感であり、この文章が多くなりすぎると読み手の没入感は少なくなる。

だって、没入感っていうのは基本的に「その世界に入ること」だからね。

だから必ず、世界を描かない文章の場合、文章から見えた世界の中での感想や思考を言語化すること


じゃ、次にいこう。

②その周辺では屋台が並ぶフードコートがあり、プラスチックの机と椅子を囲む人で溢れていた。ちょうど出し物をしているようで、僕はその場で足を止めた。

この文章を分解すると、

その周辺では屋台が並ぶフードコートがあり、プラスチックの机と椅子を囲む人で溢れていた。←全部描いている。

ちょうど出し物をしているようで、←描いていない

僕はその場で足を止めた。←描いている

ここでも描いていない文章を入れているけど、きちんと流れに沿っているのを確認してほしい。

★その周辺では屋台が並ぶフードコートがあり、プラスチックの机と椅子を囲む人で溢れていた。

この文章を読んで思い浮かぶイメージとは、

チャイナタウンの夜の明るい感じ
赤いネオンライトが光っている
看板が全部漢字
東南アジアだから夜でも温かい風が吹く
辺りはごちゃごちゃしていてうるさい
プラスチックの机と椅子は出店でもよく見るやつ
(色はたぶん、白、赤、青、黒のどれかだと思う)


これは、チャイナタウンに行ったことがある人。
もしくは、以前までの文章を読んでいた人が想像できやすい範囲だと思う。

だからチャイナタウンなんか聞いたことがない。
チャイナっていう言葉すら知らない。
中国って漢字使うの?

とかいう人にはそもそも世界が見えない

だから描き方も重要だけど、プラスチックの机の色で黄色とか緑、透明色なんかがイメージで出てくる人は、そもそも前提として持っている材料が違う。

つまり逆に言うと、共通認識がある程度ありそうなことは、多少の省略が許されるということでもある

チャイナタウンの一言だけで、牢獄とかホットドッグとかが出てくる人はきっといない。
ふつうは、ワンタンとか、シューマイとか、点心とか、瓦屋根の寺みたいな建物とか、赤い染料で建物が塗られているとか。人も中華系で、インド系とか西洋系がモノを売っているという印象はないはずだ。

つまり、ある程度の共通認識がある中で、世界を描き、さらに具体的にリアリティを出したい場所をいくつかピックアップしてあげるだけで、相手の脳内世界をより濃く補完することができる。


さぁ、ここまで読んでもらってから、さっきの文章をコマワリするね。

コマ①
チャイナタウンの駅に到着すると、地上に出た瞬間、大きなショッピングセンターが見えた。

コマ②同じ視界から視点をしぼる。(細かく見る)
漢字の看板がいたるところに見え、全ての意味は、おおよそ推測できる程度に過ぎない。

コマ③
その周辺には屋台の並ぶフードコートがあり、プラスチックの机と椅子を囲む人たちで溢れていた。ちょうど出し物をしているようで、僕はその場で足を止めた。

コマ④小さなステージに年配の中国系女性が立ち、大きな音楽に合わせて歌をうたう。ゆったりとした音のテンポからは、どことなく時代の違いが感じられる。まるで演歌のような音のリズムは、独特の言語で辺りに響いた。

つまりさっきの文章は、4つのコマからできてたってことになるんだ。

ただやはり漫画と違うのは、相手が連想できる範囲を残せるっていうこと。
全てを描いて具体化しすぎず、書き手がここを見てほしいという場所に視線を誘導してあげる。

それが小説における、コマワリの役目なのかもしれません笑

逆に、千夜特急はそこをけっこう意識して書いたかな。


千夜特急の電子書籍はここから

特にインドに関しては、かなり気を使ったよね。インドの城とか、普通に脳内材料にない人の方が多いだろうし。




ただ、現実と多少違ったとしても、想像の中で心を動かせることこそが、小説のだいご味なのかもね。

次は何について書こうかな。

たまには小説のことじゃなくて、旅のことやどーでもいい思考哲学の方がおもしろかったりするのかなー。

ではでは、しーゆーねくすとたいむ。


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