指導ってどうすればいいのさ

部活や行事を引っ張ることが増えた頃から、ずっと考えていることがある。人を導く、というのはすごく難しい。どうしたら話を聞いてもらえるか、どこまで言ったら立ち直れないぐらい傷ついてしまうのか、今は叱るべきときなのかそうじゃないのか、同じ目標に向いてもらうにはどうしたらいいか。一時は「後輩の指導方法」「部下を育てるには」「叱らない子育て」みたいなサイトを読み漁ったこともあったが、やはりピンとこない。まあ学生がリーダーとして相手取るのは「思春期の子」であって、リーダーである自分もその括りに入るから当たり前ではあるのだが。

最近は「良かった先輩たち」の真似をしようともするが、中学生の頃よりも真似がしづらくなってきた。きっと「良かった先輩たち」の記憶がまだ新しかったのと、単純に中学生の私が怖いもの知らずだったということだろう。あとは、同じ部活に4年以上在籍しているから、「良かった先輩」以外にも「同じ轍を踏みたくない先輩」ができたことだろうか。部活の先輩はもれなく全員好きだが、それはそれとして「同じ失敗はしないぞ」と思う先輩もいる。でもそういう先輩に限って一番仲が良かったし、一番覚えているのだ。

今日、怒ってしまった。本番前日なのに舞台の流れが全然できていない。主に役名のある人たちが、変更点が多く色々あやふやになってしまったのにどうしても焦って、役名のない人たちまで巻き込んでしまった。もちろん役名のない人にも言うべきことはあったのだが、それはそれとして。

なんで怒鳴っちゃったんだろう、と考える。元々声は低いし大きいしよく通ると自負しているので、私が怒鳴ったら怖いだろうと思う。出来る限り怒らないようにしてきた。思春期の子は繊細だから。私もできる限り怒られたくないから。

なんで?というと、ちょっとずつ私がいまいち気に食わないことが増えていたんだと思う。
なんで返事しないの? なんで先生が喋っているのに雑談してるの? なんで音が取れてないの? どうして立ち位置を覚えてないの? なんでこんなにヤバいのに平気な顔して雑談できるの、練習しなさいよ。
そういうモヤモヤが全部溜まって、うまく行かないことがまるで後輩のせいみたいに思えてきて、八つ当たりみたいに怒ってしまった。もっと論理的に理性的に、言うべきことをちゃんと言えばよかったのに。

というか、自分の中では言ったつもりだった。常に頭の奥に「ちゃんとしなきゃ、分かってもらわなきゃ」という気持ちはある。万が一失敗してもお客さんにはバレないからその場で堂々としてとか、当たり前にしてほしいことを色々。でも後で聞いたらなかなか具体性がなくて酷かったらしい。具体的(なつもり)だったわけだ。

きっとみんなできるだろうという「行きすぎた信頼」があったんだと思う。私や同輩は性格的にアドリブに強い(と少なくとも思っている)し、割と大雑把だから抵抗なく動ける。舞台慣れもしている。何年も前からそうだったと思う。万が一ハプニングが起きたらどうしよう、と考える癖は割と昔からあった。それでもって、うちの学年は2人しかいないから、「何年生ができるレベルはこれぐらいだよね」という標本が2人しかいないから、2人ともたまたまレベルが高いと狂ってしまう。逆に2人のレベルが低いことは、「何年生ってこんなにできるんだ」となる。勿論。

昔は、後輩たちはもっとみんなできないと思っていた。自分たちの学年がそこそこ優秀だとは正直思っている。先輩たちからの信頼もまあまあ得ていたと思う。だから、私たちと同レベルで物事をこなすなんて正直後輩には無理だろうと思っていた。
こなせるようになってきたのだ。特に一個下の代が。最初からしっかりしていて真面目だったけど、入部当時はあまりにも静かで主張しなかったので、本当に何もできないと思っていた子たちだ。私たちが一次関数だとしたら、指数関数みたいに成長した。もう追いついてきている。隣で歩いてくれている。きっとそのうち私たちを抜く。幸か不幸か、後輩の「標本」はこの子たちだった。この子たちがこなせるようになってきたから、随分安心して色々任せるようになった。それにちゃんと応えてくれたからもっと安心して。みんなが何もこなせないと思って全部1人で抱えていたときよりだいぶ楽になったが、私が楽したらやっぱりダメなんだなというのが今日の感想。そうだ、後輩は一個下だけじゃない。もちろん喰らい付いてくる二個下三個下の子もいるが、教えないと分からないことは教えないと。

自分が教えてもらっていたのか、それとも元々できていたのかは正直覚えていない。客席に背を向けない、というのを馬鹿みたいに教えられた記憶はあるので、それは私も後輩に教えようとしていたはずだ。間違えてもバレないから堂々と、というのは誰の台詞だったか。先輩や先生かもしれないし、自分で言っていたかもしれない。

ああ、なんかいろんなこと教えてもらってた気がしてきた。ちゃんとしてきたのは中3ぐらいからだったかもしれない。私、先生や先輩が何回言ったら覚えてたんだっけ。少なくとも「客席に背を向けない」は一対一で五回以上言われた。先輩には申し訳ない。

とりあえず、怒っちゃってごめんなさいとしか言えない。でもやっぱり返事とか挨拶とか、うーんと思っていることは常々あったと思う。でもこういう時に怒鳴っても響くのっていつもちゃんとしてる子たちなんだよなあ。あなたにちゃんとしてほしいのよって子には大抵響かない。

やっぱり指導って難しい。世間で最上級生と言われる人はよくこんなこと10代でできるな、と思った日だった。

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