「米・中・日」のインド出願 日本はインドにある中国企業の特許に気が付いているか?
今回は、「米・中・日」のインド出願を企業ごとに検討し、どのような企業がインドに積極的に出願しているのかを俯瞰しました。
日米だけでなく、中国も加えて、誰がインドに市場性を見ているかをマクロに見る試みです。
1. 全体像
まず、日本企業・米国企業・中国企業のインド出願がどのように推移しているかを確認します。
データの出所はOrbitです。
インドの出願を見ていると、どうやらパリ条約ルートではなくPCT出願を経由しているものが多いようで、2018年のデータがかなり少なくなる傾向があります。
上の図ではそれを示しました。日本とアメリカの資本がそれぞれ持ちこたえている状態であるのに対して、中国が挑戦している図に見えます。
では、挑戦している企業はどこか?
2. 日本企業と米国企業
前回も取り扱った経緯があるので、今回は簡略に図で紹介します。日本企業は自動車と製鉄が中心です。
ソニー、NECが出願注力していた時期があるようですが、いずれも2013年以降撤退しているようです。
米国企業は、Qualcomm一社が突出して多く、続いてICT関連企業が続きます。
Qualcommはピークアウトしていますが、数が一社だけけた違いに多くなっています。
マイクロソフト、GEはまだ出願を続けていると言ってよさそうです。
Googleが注力しており、アップルもここ数年で再注力している可能性が高い。3M、Intel、P&Gは撤退の可能性があります。
これらの企業の出願内容の変遷を追っていくと、インドでビジネスが上手くいったのがどこなのか、が見てきますが、今回は「中国」の存在を確認しておきたいという趣旨なので割愛します。
3. 中国企業の出願
中国企業の出願は下記の通りです。
ご存じな方も多いかと思いますが、中国の出願は世界一の量です。しかしながらほとんどが自国での出願で終わっており、海外へと出願しているケースはまれです。
この表からは、スマートフォンに関連する企業群、Huawei、 OPPO、 Xiaomiが、Qualcommに対して後を追うように出願を増加している点が読み取れます。
読み方を変えると、中国はインドに投資をしているということになります。これは存外見落とせない観点ではないでしょうか?
4. まとめ 日本は自動車・製鉄、Qualcommに中国が挑戦という構図
まとめると、日本は自動車・製鉄で戦っているのに対して、中国は総がかりでQualcomm一社に挑戦しているように見えます。
興味深いのは、中国版ツイッターと呼ばれるテンセントが出願しているのに対し、facebookなどは現れないという点でしょう。アマゾンも上位10位には表れていません。
これは過去10年のデータを用いていますので、大まかな現象としてはこのように言えるというマクロな状況の分析になります。
日米中の三か国の企業で、トップ10に入った企業をまとめると、下のようになります。
動きが激しいのが、スマートフォン(あるいは通信技術)関連で、Qualcommに対して、HuaweiとOPPOが抑えにかかっています。これを見ると、日本よりも中国の方がインドに市場性を見出して先行投資しようとしているようにも見えますが、どうでしょうか。
なお、改めて見てみると、「本田技研はトヨタ自動車よりも出願が多い」ことなど、比較してみると何かが見えてくるものがありそうです。別稿でいつか検討するかもしれません。
5. 終わりに
インドの市場がどういう構造を持っているのかという点を分析するには、もっと技術分野を絞り検索をしていく必要があります。
ただ、中国が対インド投資を強く推し進めている、ということが今回のデータからは読み取れるように思います。
今後のビジネスにおいて、日本は中国で中国の知的財産に足をとられるのではなく、インドで中国の知的財産に足を取られるということも考えられるように思われます。
2021年2月1日
川瀬知的財産情報サービス 川瀬健人
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