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自分の書店

ちょうど同じテーマの記事を二つ読んだのです。リアル本屋さんのお話。ただし、普通の本屋ではありません。

減り続けるまちの本屋さんに新風 各地に広がるシェア型書店とは 毎日新聞 22/3/10

本棚から溢れた愛蔵書、神保町の“棚主”になって新たな命を吹き込もう 誰でも本屋になれる共同書店〈PASSAGE〉の企て 坂元希美 JBpress 22/3/11

どちらも一般の人に書店の棚を貸して、好きな本を並べてもらうシェア型書店です。上はいくつか取材していて、福岡県糸島市に2021年9月にオープンした「糸島の顔がみえる本屋さん」、 山口県山口市に同年10月にオープンした「HONYAらDO」、さらに飲食店内に作られた例として福岡市中央区清川のカフェバー「清川SALON」内に21年12月オープンした「Book-R清川店」。下が東京の神田神保町に2022年3月1日にオープンした「PASSAGE by ALL REVIEWS」。

実はこの記事の前に、本屋がなくなった区域に本屋を残そうとしてうまくいかなかった例を取材した記事を読んでいました。そこでいつもの「本屋は文化拠点だから残さないと」という文言を見かけて、甘いなあと思っていた。自分が大切だと思っているから、それは伝わるはずだなんて激アマですよ。伝える仕組みを作らないと。

という時に、ちゃんと工夫している例を、しかもいくつも同時に見かけたので、素晴らしい! と感心したのです。

どちらも利用している人たちがよい点として挙げているのが、選書を通してメッセージが伝えられること。また、店番するというルールになっている例もあり、そこでの交流も挙げています。下の「PASSAGE by ALL REVIEWS」では、作家が自著サイン本を売っていたり、作家の遺族の方が故人を忘れてほしくないと売っていたりしているそうです。すごい。まさに文化拠点としての機能を提供している。

さらにですね、うまいなあと思ったのが、リアル書店の弱点を補う経済的な工夫も同時になされているところです。記事中ではあまり大きく取り上げていないのですが、数千円の棚貸し代を取っている。前述の失敗例の記事の中では、本のような薄利多売の商品で店の賃貸料を賄う難しさについて触れていました。多分そこを埋められてるんではないかと思います。

僕はこの手の話題に触れる時、電子書籍を推す側を取ることが多いのですが、でも紙の本が絶滅するとは思ってないんですよ。だって、アナログレコードがコレクターズアイテムとして生き残っていて、むしろ若干増産しているぐらいなんですよ。

電子書籍の方が便利なので、もっと普及するだろうし、その過程でただ並べて売っているだけの本屋は潰れるんだろうなと思っている。でも、実体があることの意味をしっかり体現すれば、量は減っても生き残るのではないかとも思っている。

この共同書店の例は、それを形にしているいい形態なのではないでしょうか。ここ数年で全国に40店ほどできているらしいので、もっと広まるのかどうか、注目です。

(ブログ『かってに応援団』より転載)

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