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キャプテン・ラクトの宇宙船 第2話

  二 ラクトの初仕事

 太陽系は、太陽を中心に、その周りをさまざまな天体が回っている。地球もそのうちの一つだ。地球のように大きなものは惑星と呼ばれ、太陽に近い側から水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星と、全部で八つある。ところがその軌道を調べてみると、火星と木星の間がなぜか広く空いていて、長らく天文学の謎となっていた。
 一八〇一年、その空隙にケレスが発見された。他の惑星に比べると小さく、そのためなかなか見つからなかったのだ。それを皮切りに、似たような軌道に、次々と小さな天体が発見されるようになった。現在ではメインベルトとも呼ばれる、小惑星帯の発見だ。
 惑星は、小さな原始惑星がいくつも合体し、大きく成長してできる。だが、小惑星帯では、となりにある太陽系一の巨大惑星木星の引力にじゃまされて、ばらばらのまま成長できなかったのだ。そこには大小さまざまな天体が、数百万、数千万とあると推定されている。
 ただ、小惑星がそれだけあっても混み合っているというわけではない。何しろメインベルトは一周三十億キロメートル弱、幅は一億キロメートル以上ある。一つ一つの小惑星の間は、地球と月以上に離れていて、そこを探査機が飛ぶようになっても衝突事故が起きることもなかった。宇宙空間はひたすら広く、星々はやはり孤独な存在なのだ。
 そんなメインベルトのうらさびしい空間を〈はやぶさ〉は進んでいた。太陽に照らされて、船体がうっすら白くかがやいている。その船長席でラクトは、なげきの声を上げていた。

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