犬が喋るか喋らないか
先週末は文学フリマ東京37でした。
この手のイベントに参加するたびに起きるのは、会場の熱気に当てられてなぜか現場で原稿が進むという現象ですが。
今回は起きていません。やばいなー。本格的に執筆が行き詰っている。
冒頭のシーンは思いついているのです。そしてそこからつないで物語に入っていくアウトラインもできている。ただそこで、なんかうまくキャラクターが動かない。大きなエピソードのアイディアはもう揃っているので、その間のつなぎさえクリアできれば話は進むはずなのに。
何に引っ掛かってるのかなあと思い悩んでいて、この間ふと気づいて、ちょっと自分自身でも驚いたことがありました。本日はそれについて。
最初のシーンに犬が出てくるんですけど。
もしかして、僕は今まで犬が出てきた話では、ほとんど喋らせているのではないだろうか。
何かうまく動かないと思っているのは、今回普通のお話で、犬が喋れないからではないだろうか。
小説デビュー作『宇宙犬ハッチ―』は正確には犬ではなく、犬型宇宙人。二本足で立って喋っていました。
ハッチ―の遭難によって発見された地球に、宇宙から調査チームがやってくるというお話が『友だちみんな宇宙人』。こちらには友達の飼い犬が出てきますが、宇宙人の主人公が翻訳機を使ってコミュニケーションを取っています。
宇宙人が出てこない現代劇として、『ぼくは犬のおまわりさん』も書きましたが、主人公の健斗は飼い犬で元警察犬のハナや他の犬たちと言葉が通じ合っています。健斗がハナに育てられたからという設定です。
異世界ファンタジー『もふもふの魔女』では、犬も猫もみんな喋ります。
僕の書くお話を評して担当さんが「漫画っぽい」と言ったことがあるんですけれども、多分こういうところ。圧倒的な犬喋る率。ちなみに犬が関係ない『天下統一!』では、自律AIによる鎧武者型ロボットが出てきます。『キャプテン・ラクトの宇宙船』にはぬいぐるみ型ロボのミミがいますね。出てないやつでも、つなぎの部分をコメディタッチで進めるという型ができてて、喋る犬とかポンコツロボとかはそれをはかどらせるキャラクターなのです。
ただこれが児童文学的には、足を引っ張ってるのかもしれない。そう考えたのと、今回は題材的にも真面目なやつなので、いつもと違う感じで書こうとしています。その辺りを封印しているのです。
そしたらさっぱり動かない。三つ子の魂百までもとはよく言ったものだなと思います。デビュー作からずっと喋ってるんだもんなあ。
どうしよう。どうにかするしかないのだけれど。
(ブログ『かってに応援団』より転載)
追記。
「個性」という言葉は、こと創作の場ではいいイメージで使われる言葉だと思うのですが。
「個人の持つ特徴的な性質」という言葉本来の意味に沿って考えれば、いいも悪いもどちらもあり得るんですよね。必ず歓迎されるとは限らない。
しかも本人にはどうにもコントロールできないものだったりします。まじめに考えれば考えるほど、自分本来の嗜好に引っ張られていくのです。
長年これに悩まされているので、考え方を変えて、書ける物の幅の中でカードをたくさん取り揃えて、きちんとフィットしそうなものを出そうとしています。まだまだ精度が低いのですが。
今回も書けそうだと感じて始めているので、引っ掛かっているところさえ越えられれば、何とかなるはず。じりじりと匍匐前進中。
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