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どうか自分を苦しめませんように

着物をまとわせて
その踊り子は
くるくる回り

そこに花びらを
乱反射する水しぶきを
いろづいた葉を
雪の結晶を
散らして
うっとり軽やかに両手を空へ

あなたが思うより
その景色は楽しいものかもしれないよ

アスファルトを
岩のくぼみを
石のとげを
木の枝を
踏みしめて
お腹がずんと重たく両手を下ろし

歩んできた道は
痛いものかもしれなくても

木かげを探して
やわらかな土の上に
腰をおろすと

着物をうっとうしそうに
はらいのけながら
踊り子が
苦しそうに回っている

笑顔でとりまく人々を
うらやましく見ていたあの子が
今度はうっとり回り始める

今日はおやすみと
そっと声をかけたら

アスファルトのかけらを
石の一つ一つを
拾って

大切に眺めた後
つめたく見えた
あたたかなベッドで横になるんだ

まぶたを閉じれば
その景色は優しいものかもしれないよ





読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。