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体が弱くても、人の心を支えられる

 あんまり繰り返し「鬼滅の刃」を読んでいるものだから、「もしかして、漫画という物を読んだことないの?」と夫にからかわれた。

 面白いとか感性を刺激されたものへの没入が激しい。その世界からしばらく帰ってこれなくなる。日常生活がフワフワ上の空で、現実感が薄れる。それでも私はこの感性が好きだ。どなたのnote記事か忘れて大変失礼なのだけどHSP(hlghly sensitive person)気質の人が「HSPは没入しやすいから、精神的に疲弊したら、好きなことに没頭すると良い。麻酔が打たれたみたいになるから」といったようなことを書いていた。ああどなたのだっけ。フォローしている方ではなくて、偶然見つけたから、ちゃんとメモしておけば良かった。
 

 これだけ繰り返し読んだ漫画は、小学生の頃に読んだちばてつやさんの「ハリスの旋風」、中学高校の頃に読んだ成田美名子さんの「エイリアン通り」「CIPHER」と、あだち充さんの「タッチ」くらいだろうか。他にも繰り返し読むのはたくさんあるけれど、しつこいほど読んだのはこのくらいじゃないかな。


 入り込む気質だとしても、「鬼滅の刃」の何がそんなに私は好きなんだろう。

 MCUの世界(マーベルシネマティックユニバース)も大好きだから、多分私は、ヒーローものが好きなのだろう。ヒーローものが好きな心理をちょっと調べたけど、ろくでもないことしか書かれてない。

 真に受けると落ち込むから、自分で分析してみよう。
 映画も漫画も、ストーリーによって深みはある。人によって解釈が違うと、それも面白い。
 隠されている何かを見つけるのも面白いし、全体を感じるのもまた面白い。

 そして強いものに対する憧れは、すごくあるのだろう。


 私は幼少期からよく体調を崩して、部屋の天井を眺め、ただその時間をやり過ごすしかない日が多かった。
 小学生になるとさすがに自覚してきて「私は入院するほどでもないのに、弱いばっかりに、部屋の天井ばっかり眺めて暮らしてる」って、体調を崩す度に泣くようになってしまった。
 中学、高校の頃になるとちょっと丈夫になり、人並みになった気がして嬉しかった。
 でも生理痛が激しくて、通学中の駅のトイレで吐いたり、学校でも保健室で吐いたり。熱もないのに汗ダラダラになり、「寒い寒い」と何重も布団にくるまったり。病院で診てもらってどこも異常はない。でも痛み止めを飲むタイミングが難しく、急性胃炎になったり、痛み止めが効くまでの時間まで苦しみ悶えたりしていた。

 そんな私は、「昔の時代に生まれなくて良かった」ってよく思っていた
 今の医療技術だから、私には薬があり、昔よりは負担や偏見が少ない。便利な物も多い。

 25歳でメニエールが起き、結婚してから寝込む度に、自分が役立たずに思えてベッドの中でまた泣く。
 昔の時代なら、「使えない嫁」とされるんだろうなあ。早死にしちゃうんだろうなあ。
 って何度も何度も思ってきた。

 仕事だけしている時は元気だったけど、それも20代前半。後半は幼少期からの自律神経失調がひどくなっていった。特に結婚直後は、家事も好きでやりたくて譲れなかった。仕事もごくわずかの期間やってみただけだったのに、ウチに持ち込んでしまうので、段々眠れなくなり、手が震えるようになっていった。
 「役に立たない私」が自分の中でクローズアップされ、夫によく謝っていた。

 夫は「かせみどんは、仕事をして笑顔になれるなら、仕事をしてほしいんだよ。でも仕事をしないで笑顔になれるのなら、仕事をしないでほしいんだ。どっちかや笑顔を強要しているんじゃなく、僕が頑張れる間は、楽しそうに暮らしているのが僕には嬉しいんだ。かせみどんは、かせみどんの心を大切にできる暮らし方をしてほしい」と言っていた。

 ま。だからと言って、いたわってくれるわけでもなく、家事を積極的にやってくれるのとはまた違うけどね! 夫は自由人で自分のペースで暮らすタイプだし、仕事柄、激務になる期間が度々やってくるので、できる範囲で私のサポートをしてくれるだけ。
 でもその方が私も気楽かもしれない。言葉で頼んだら、応えようと奔走してくれる。

 子供ができてからはホルモンの変動が激しく自律神経の調整はますます難しくなり、メニエールも頻発した。
 それでも40半ばくらいから元気になってきたかなと思ったら、更年期症状。
 また寝込む日々が増えた。

 自分がどうしても役に立たない人間だと思い、周りに申し訳なく思う。

 こんなだから、強いものに憧れるのかな。そして強い人たちが心に抱える葛藤や苦悩の中に、「中身は私たちとそれほど変わらない人間なのだ」を知って安心するのかもしれない。

 「鬼滅の刃」の作者は、「役に立つ」という言葉をよく使う。それでも身体の弱い人に優しいなあと思う場面がとても多い。

 序盤で体の弱い人が登場する。私もこの時代に暮らしていたなら、今の比じゃないくらい絶望しちゃうんだろうな。
 体の弱い人につけ入る鬼。強くなりたいと願う人々。
 そこで鬼になるか人間らしいまま生きるかの選択。鬼になれば強くなれる。生き続けられる。でも欲に負け続け、残酷で心を持たなくなる鬼が大多数。人間のままだと、きっとその時代、身体の弱い人は短命だ。

 それでも人間らしく自然に生きたいと選ぶのは心の強い人。病弱なのは謝ることではない。強い人は弱い人を守り、弱い人は強い人の心を支え守れる。
 人は一人ひとり、思いを伝える役割がある。

 作者はそんな想いを伝えてくれる。

 そして私はきっとそれが一番嬉しくて読んでいる。

 何かを成さなければならないんじゃないんだ。人の想いが大切なんだ。

 私には幸い、夫や子供を想い、友達を想う心だけはとても強い。それがちょっと度を過ぎてワガママだともわかってもいる。周りの人たちが幸せになってほしい気持ちを押し付け過ぎないように気を付けなくちゃ。
 そして夫がかけてくれた言葉を胸に、私はその言葉を直接そのままでなく、その想いを自分のやり方で他の人に伝えたい。

 


#エッセイ #鬼滅の刃 #身体が強い #身体が弱い #心が強い #伝える

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。