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そのスーパーに行く毎回が、ちっちゃな冒険だった

 まつしまようこさんが「#スーパーマーケット まとめマガジンをはじめます。」と書いている! 彼女が「オオゼキ」について書いていたのを読んだなあとうっすら思い出しながら読み返した。

 何と力強い文章だろう。彼女の「オオゼキ」愛に圧倒される。こんなにまでスーパー愛が語られていたら、これ以上のものは書けない気がするが、スーパーマーケットは生活に密着している。日常に密着しているものは、思い当たるものが多いので参加したくなる!

 私にとってスーパーマーケット選びの基準は品揃え。新鮮さと豊富さが大事。ほとんどの人がそうでしょう。でも宝塚、ニュージャージー、札幌、今住んでいる地域、と記憶をたどった時、思い出されるのは人との会話や交流だ。

 今、住んでいる所は田舎で、主に行くスーパーマーケットは、車でしか行けない距離。バッタリ近所の人と会うなんてなく、そんな瞬間があるとしたら、よほどの偶然。
 札幌のスーパーマーケットは、徒歩圏内に幾つかあって、子供ができてから、子供連れた母親友達に会うのはしょっちゅうだった。待ち合わせて行くなんて面倒だし、子供の生活リズムがあるのでしなかったけど、それでも会えば声をかけあってちょっと喋ったり笑ったりしたものだった。
 生鮮食品は、特に魚介類が充実していて筋子やホタテ、イカなど新鮮なものが安く手に入り、とても楽しかった。


 私が一番好きなスーパーマーケットは、ニュージャージーの、ちょっと治安の悪い場所にあったPathmark(パスマーク)。

 今回この文章を書くにあたってグーグルマップで確認すると、現在は違うスーパーマーケットになっている様子。寂しいけれど、道路や周りの店も全体が小ぎれいになっていて、雰囲気も安全になっているし、それでいてきっと通う客たちはそう変わっていないと想像する。(画像を観て、通った道路をたどっていると、胸がいっぱいになった。もう20年以上前の話)

 そうやって時代の流れはあれど、アメリカならどこにでもあるPathmarkだったし、幼少期に住んでいた頃、母について行ったスーパーマーケットも、ルームメイトが連れて行ってくれたスーパーマーケットも別の系列だったけど、中身は似たようなもので、あの独特の雰囲気はアメリカ全土、どこもなのだろう。
 シャンプーや洗剤などの生活用品も多く揃っており、だいたいの物がスーパーで足りる。サイズは日本で見る機会があるとしたら、コストコに並んでいる物くらい。それどこにストックする? ってくらい大きいのが、驚きの安さ。
 野菜は、ほぼすべて個別に積み重なっていて選り好みでき、必要な分だけ自分で袋に詰める。はかりが近くにあるので、それでだいたいの値段を頭に入れながら、カートに入れていく。
 レジに並ぶと店員に、こちらから「Hi」と声をかけ、支払いを済ませると「Thanks」と言って商品を受け取る。とても当たり前に行われており、どんなに店員の愛想が悪くても、この言葉は客の側から言うのが礼儀だ。

 どこも似たような雰囲気なのに、何故そのPathmarkが好きだったかを改めて考えてみると、まず周りのスーパーと比べても店内がかなり広かった。天井も高く、品揃えも豊富だった。でもそれだけではない。私が通っていたその場所の、そこにいる人々が好きだったからだ。

 当時の私は、結婚して初めて生活する場だった。だからPathmarkが、初めての「通う」スーパーマーケットだったのだ。

 アジア人で、ちょっと童顔だった私は、大人に見られないかもしれない。あまり治安の良い場所ではなかったし、貧しい人も多くて、最初はびくびくしながら通っていた。

 鎖でつながっているショッピングカートの扱いがわからずガチャガチャやっていた私に、無言で手伝ってくれたスタッフがいた。
 駐車場で「ああ!! 私にも車があれば良いのにね!」ガハハ!! と私に話しかけて笑ったおばさんがいた。そういったことがある度に、ちょこっと返答したり一緒に笑ったりして、少しずつ慣れていった。

 ハムなど加工品は、量り売りの物が美味しかったので、いつも精肉コーナーで、どんな種類のハムを、どのくらい必要か注文した。いつもちょっと緊張しつつ、必ず会話がなされる。そこで順番待ちの時、「わたしはこの人の次」と、静かに待っている私を、周りの人たちがフォローしてくれていた。そうかそういうものかと知り、私も後から来て、先に店員に声をかけられると、「この人が先」と言うようにした。

 レジに並べば、前後の人同士で雑談が始まる時もあり、白熱して声が大きくなってくると、その内容に横でつい笑ってしまう時もあった。
 シイタケを買った時に、「なにこれ」とレジ店員に聞かれ、「英語で説明したところで、商品が何なのか通じるのかな??」と戸惑っていると、後ろからおとなしそうなお兄さんが、静かな声で「シィタ~キィ」と助け船を出してくれた時もあった。

 ハムを買う時やレジで並んでいる時だけではない、生鮮食品を選びながら日付を確認していると、横で一緒に選んでいたおじさんに「今日って、何日だっけ」と聞かれて「○日かな??」と答えると「そっか、ありがと」と会話を交わしたり。

 通い始めた頃に緊張感がただよっていただけに、とても気に入ったそのスーパーマーケット。

 帰国後、夫の出張で一度だけニュージャージーについて行った時、以前通ったPathmarkまで行って、シャンプー、カミソリ、シール、ノート、キャラクターの絵付きジップロック、ドレッシング、お菓子、などさんざん買い物し、買った物を郵送で自宅に送ったものだった。
 
 あまり治安の良くない場所だったけれど、人々の心は明るく温かで、毎回が私にとってちょっとした冒険。大好きなスーパーマーケットとその思い出です。


#エッセイ #スーパーマーケット #スーパー #買い物 #人との交流  

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。