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絵本にしたかった息子の思い

 幼稚園に通っていた息子には、大の仲良しがいた。
 色白で丸い顔の息子と違い、その友達は色黒で運動神経も良くて、たくさんのことが息子よりどんどんできるようになっていった。元気いっぱいのように見えたけど、あらゆる面で、気難しい息子よりずっと繊細で。

 でも年中さんの途中で、彼は引っ越してしまった。その後も、時々行き来があったけど、引っ越した直後の息子の精神的ダメージは、見ていて辛いものがあった。
 息子の思いを絵本にしたくて、自分で絵を描けたらと思ったけど、まず自転車に乗っている子供を描けなかった。あと一場面一場面を描いても、同一人物なのに、毎回顔が違って、ページをめくる度に「誰……!」ってなってしまう。絵の上手な友人に相談したけど、結局実現できなかった。


 大人の都合によって離れ離れになる時、子供にとっては何かしらストレスになっている。
 もう少し「親の都合」って、大人が自覚しても良い。子供は順応性が高いけれど、それでも大人が「子供も頑張っているって、知っている」だけで良いから。それだけで子供の気持ちに寄り添えるはず。

 最近、以前の自分の日記を目にしたためか、息子の成長を振り返る機会が多い。

 せっかく書いたものなので、表に出そうと思う。

 当時は子供向けにと、ひらがなで書いたので、少し読みにくくて申し訳ないです。でもそのままで。

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「はなれても、ともだち」

ボクとあっくんは、だいのなかよし

はじめてあったのは、3さいのとき
あっくんはもう4さいで

はしるのが はやくて
たかいジャンプもできる

4さいのあいだに あっくんは、
ほじょなしのじてんしゃにのれた
てつぼうで、まえまわりもできるんだ

ボクも4さいになったけど、
すぐに5さいになったあっくんは

なつやすみにあうと、
でんぐりがえしもできるようになっていた
かおをみずにつけて、
めちゃめちゃにおよぐこともできるんだ

あっくんてスゴイんだー 
ボクのできないことがどんどんできる

でもあっくんは、
じまんしたり、ぼくをからかったり
なんかしないよ
あっくんはやさしいんだ

ボクがボタンつけをできなかったときに
てつだってくれたり
かぜをひいておやすみしていたら
なおりますようにって
じんじゃでおまいりしてくれたり
おみまいにきてくれたりするんだ

ちょっと はずかしがりやのあっくんは
ボクがふざけるとよろこぶ

でも あっくんとケンカしたこともあるんだ
ごめんていってもゆるさない
きらいっていわれちゃった

ボクはまいにち
ウチにかえってからないたんだ
ようちえんにいっても
「おはよう」「バイバイ」しか
いわなかったよ

でもまた、 
あっくんから「いっしょにあそびたい」
っていってくれた
それからまたいっぱいあそんだよ

あるひ。

あっくんの おひっこしが きまったんだ
おとうさんのおしごとのばしょが
かわるんだって

くるまにのって
でんしゃにのって
しんかんせんのって
またのりかえて

そんなとおくに
ひっこすことになったんだ

バイバイっておわかれしたとき、
あっくんは おこったようなかおをしていた
ボクは あんまりかおをみなかった
そしておてがみをくれたよ
すこしむねがギュッとした

つぎの日からも ようちえんいったけど
そんなにさびしくなかった
べつのおともだちとあそんだり
ひとりであそんだり

ときどき あっくんをおもいだして
「いたらいいのに」っておもうんだ
そんなとき、ウチかえったら
またないちゃう

ボクもおおきくなったら、
どこかへ おひっこしするのかな
おおきくなったら、どこにすむんだろう

でもあっくん。
おおきくなっても、
またあって
いっしょにあそぼうね
またボクがふざけるから、
あっくんのスゴイところ みせてね


#エッセイ #引っ越し #幼児期の別れ #絵本  

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。