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思い切ってはいてみた初めての白デニム

 着る服装やアクセサリーについて考えるのが好きな私だけど、このご時世のせいで出かける場所は田舎にしても一層減り、オシャレにかけるお金は減った。
 それでもこの春。
 思い切った買い物をした。


 上半身はまあまあ貧相なのに、下半身の太さにコンプレックスがあった。
 「あった」。
 つまり過去形。
 じゃあもうコンプレックスじゃないのかと聞かれたら、コンプレックスというよりもう諦めた。50年もこの体型と付き合っていれば、受け入れるしかない。愛おしいとはいかなくても、「まあしょうがないじゃない」くらいになって「いやだいやだ」とは思っていられなくなるもんだ。


 いや、正直に! 白状しよう!!


 「鏡をまじまじ見ないようにしている」。


 若い頃は、「太ると上半身に肉がつきやすいから、すぐ太ったってわかっていややわ」とか言っている友達が羨ましいほどだった。
 私はウエストにサイズを合わせるとジーンズは太ももで引っかかって入らない。お尻に合わせるとウエストがゆるゆるでズボンはズレて仕方ない。ズレないようベルトをギュっとしっかり締めると、お尻との対比で後ろ姿はミツバチみたい。父の映してくれたビデオを観て愕然としたものだった。

 私。こんな風に見えているのか。太い自覚はあったけれども。

 そんな下半身だからできるだけお尻と太ももの目立たない物を選ぶようにした。
 それが30歳前後から、太ももの肉が重力に負けてきた。つまり膝に太ももの肉がたまってしまう。今度は短いスカートをはいた時の写真を見て愕然としたものだった。

 それからジーンズがきつくなっていった。40代半ば辺りかなあ。体重は変わっていないのに何でと思ったら、お尻が下がってきているのだった。ウエストもどうしても厚みを増してくるし、お腹に身に覚えのない張りみたいなものが出てくる。もう少し平らだったはずなのに、寸胴鍋みたいに。前も後ろもジーンズを引っ張り、それにより股が窮屈になっているのだった。

 幸い、昔で言う「キュロット」、今はスカーチョだのワイドパンツだのいうものが流行り、私は大いにその恩恵に預かる。ありがたいー。こんな物が出てくるなんて。

 そしてこの春。太ももの太い私にはご法度と思っていた白いデニムジーンズにとうとう挑戦することになった。
 太ももは少しキツイけど、そこからのカットが自然で少し広がっているのかな。裾辺りにはスリットも入っていて、とにかくその形のおかげで太ももに注目が行き過ぎない。
 通販でそのデニムを見た時「わあ。これなら私もはける!」と思った。
 しかもそのスタイリングがオシャレで、こんな着こなしをしたいと思った。

 久しぶりに購入。

 直後、まだその服を着ないうちに久しぶりに会った某店員さんに言われた。

 「やせたんじゃありませんか?」

 あら。この年頃の人に「やせた」とか言わないでよ。ちょっと前までは確かに「太った」より「やせた」と言われる方が嬉しかったけど、更年期の今、「やせた」と言われると、深刻な病気を疑ってしまうし、そもそもそういう心配めっちゃしてるから! 気にするから言わないで―。
 イヤな気分になってしまったけど「いーえー。体重は少し増えちゃったんですよ」と正直に打ち明けた。

 そう。一年前より確実に体重は増えている。そこそこ歩く日が続けば一時的に体重は戻るし、食が細くなっているから少ない日もあるけど、少なくとも「やせた」ってほどではない。
 なのに上半身だけ見て「やせた」だなんて、じゃあその体重の肉はどこに行ってるのよ。

 ……。

 頭を抱えたい。これ以上、お腹から膝の間に肉がたまりつづけていくのか。

 その後、白いズボンをはく機会がやってきた。

 久しぶりの新しい服で、お出かけだ。

 鏡の前に立つ。

 えっ。


 しっろ!!

 こんなに白いっけ。
 上からも見下ろす。

 ……。

 まあまあまあ。
 せっかく買ったし、サイズもそれほど苦しいとかないんだしこれで外に出てみよう。

 でも気になるから歩きながら時々、下を見てしまう。
 
 白い……。

 何だか太ももが輝いてさえ見える。
 くらくらする。

 でも久しぶりに買った服なんだ。
 しかも初めての挑戦なのだから。

 言い聞かせて今度は夫と出かける時に着てみた。

 「おお!」

 夫が驚いている。

 「白い!!」

 「白いよね。やっぱりそうだよね」と言うと

 「柔道着?」


 って聞かれた。色もカットもそれを連想するそうだ。

 私は今日も新入部員みたいにまばゆいほどの白い柔道着っぽいデニムをはいて、外を歩いている。だって買っちゃったんだもん。

#エッセイ #ズボン #パンツ #白 #太もも #結局目立つ  

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。